神の子とダンジョン・第2話 − 175
勇者と別れて部屋を出た。
城の広場では、バカルが衛士達に稽古をつけていた。
バカルは容赦なく打ち込み、ものの数分で七、八名の衛士が広場に倒れ込むことになった。
何人かは声を上げて呻いている。
改めて、彼の剣の腕前はナカナカなものだと思うけれど、厳し過ぎでは… とも思う。
オイラに気づいたバカルが、木剣を肩に担いだまま笑う。
「どうだい。
憧れの戦乙女様に、頼りにされる気分は?」
「四番隊の隊長って、鬼なんだね。」
そう言うと、バカルは鼻で笑った。
「それにさ、“ 乙女 ” は、そろそろダメじゃないの?」
本心を口にすると、バカルは声を出して笑った。
今だに城下では、バカルと会うのを避けている。
だから一人で城を出た。
別れ際に、あの剣 −−−
ええと、ハンニバルだったか。
貰っていいのか、と聞かれたから、
「持っとけ、持っとけ。」と答えた。
目立ちたくないので北門から出ると、ラビがいた。
「アンタ、なんでお城から出てくるのよ!」
いつものご挨拶。
「バカル様が羨ましいね。」そう返したら、
「モテないガキが偉そうになったわね。
弁当くらい奇跡でなんとかすればっ。」と、今日も手厳しい。
オイラは神の子ではないし、精霊王様は皆を等しく愛してるはずだよ、とは言ってみたが −−−−−
バカルの姿を見つけると、ラビは一瞬で乙女モードに切り替わった。
ツマンネェ。
「ジャック様。
お昼を、ウチで食べて下さい。」
用心棒さんの娘だ。
待っていたようだった。
用心棒さん −−−−
いや、今はトールと呼ばないといけないのか。
娘もトールと同じく控えめで、目立つことを嫌がる。
ラビも見習って欲しい。
トールも、トールの奥さんも大陸南部の生まれで、奥さんの料理は美味い。
ダンジョン前の、ささやかな楽しみになっている。
リュネ姫より小さいトールの娘の手を引いて、オイラは歩き出した。
トールの息子は十五歳。
オイラの一歳下で、ひょろっとした頼りない見た目だが、頭がイイ上に、よく気が回る。
「武具屋の仕事は、できる範囲で済ませてあります。
残りを片付けたら、旧市街前の生け簀に来て下さい。」とジュニア君。
トールもジュニア君も名前は同じ。
オダネル=ニケア=トール
だから、正式にはジュニア君は、オダネル=ニケア=トール・2世 ちょっと面倒に感じるけれど、仕方ない。
「はい。」とジュニア君に答える。
モグモグ
「生け簀の水ですが、沢の水を引き込むのはやめて、井戸にしたいです。」
「またオイラがやるの?
……あ、そう。」
モグモグ
「それから、イノシシの注文がありますので、見かけたら倒して下さい。」
簡単に言うよね。
やるけどさ。
モグモグ
「借金は、今朝の仕事で、
三百十七万バリイと少し減りました。」
ゴフっ!
「二世。 借金の額は、聞かれた時だけにしなさい。」
トールが、そう言ってくれた。
奥様が洗濯物を渡してくれる。
彼女は、洗濯も上手だ。
「ジャック様。
勇者に嫁ぐといっても、
アルス姫は二十歳までは、お浄いままだろうと、言われてます。」
…うーん。
気の遣い方だけは、ちょっと残念なところだ。
続きます
******************
優音先生様、作画以外もいろいろ…
本当にありがとうごさいます(−人−)
