木之本の記憶を活かす 定住者受け入れのカギは「木之本でなければならない」理由

2026年1月1日現在 木之本と長浜市の人口、世帯数推移から見えてくるもの

2026年1月1日時点の長浜市の総人口は111,156人、総世帯数は47,996世帯。
この数字を基準とし、10年前の2016年1月1日と比較すると人口-9839人(120,995人)▲8.1%、+3256世帯(44,740)+7.3%。周辺6町が長浜市へ編入合併した16年前の2010年1月1日と比較すると人口-15280人(126,436人)▲12%、+3823世帯(44,173世帯)+8.7%。
世帯数が増え、人口減少がすすんでいることから核家族化が進行していると推測できる。さらに、上記で引用した16年前の2010年と10年前の2016年の6年間での世帯数増加をみてみると+567世帯、+1.3%でそこまでの伸びていない。つまり直近10年間で世帯数の増加は加速している。

木之本の人口、世帯数はどうか

ここでいう木之本は木之本町木之本のことを指す。
2026年1月1日時点の木之本町木之本の総人口は1,573人、総世帯数は748世帯。ここを基準として10年前比でみると-421人(1,994人)▲21%、-43世帯(791世帯)▲5.4%。16年前比でみると-705人(2,278人)▲30.9%、-108(856世帯)▲12.6%。
長浜市全域と同様に16年前の2010年と10年前の2016年の6年間での世帯数増加をみてみると-65世帯、▲7.6%となる。
長浜市全域では直近10年での世帯数増が加速しているが、木之本では一貫して世帯数が減っている様にみえるが実際はどうか。直近8年の数字を後述する。

長浜市全域の世帯数は2015年より増加を継続、木之本は近年微増の年もあるが減少がつづく

世帯数増減への考察

長浜市全体で世帯数が増えている一方、木之本では世帯数が一貫して減ってきている。日本全国で核家族化が進んでいることを考えると、移住転入するとしても単身、もしくは夫婦とその子といったことが想定される。しかし、人口は継続して減少し、その一方で世帯数が顕著に増えていることを考えると単身世帯が増えていると考えるのが妥当だろう。
世帯数増に関しては地元出身者が実家から独立し新たに居をかまえるケース。また、働く場所を求め転入してくるというケースが想起される。後者に関し、長浜市は1次産業も盛んであるため一部農山間地の転入もあるだろう。しかし木之本が継続的に世帯数を減らしていることから農山間というよりは市街地を中心とした世帯数増であると推測される。つまり、一次産業就労者が増えている訳ではないのだろう。

木之本の利便性、育児学習、生活安全はどうか?

どこに住むかということは職場の立地にも大きく依存し、通勤時間との検討も重要な指標だ。一方、車移動の利便性が高い長浜市において定住先の選択はかなり広範囲で検討可能とも考える。そうでれば日常生活の利便性以外にも育児学習、生活安全の点も定住先として大切な指標になる。結論を先に述べると、長浜市の中でも定住先として住みよい地域であることが見て取れた。

長浜の中でも公共交通アクセスは優秀

まず公共交通機関としてはJR北陸本線木之本駅が活用できる。支線ではなく本線であることから地方鉄道の中でも割と本数が多く、新快速に乗れば京都、大阪、神戸と関西都市圏の移動も乗り換えなしで可能だ。
敦賀での北陸新幹線接続、米原での東海道新幹線接続と新幹線両方づかいも可能だが、長浜市内のJR駅がある地域であれば同じ利便性となる。
道路交通網においては北陸自動車道木之本インターが至近にあり、国道8号線、365号線、303号線と木之本を起点とし各方面へのアクセスが良い。一方、バスは本数の観点から利便性が高いと言えないが、これは他地域と大きく変わらないといえる。

スーパー、ドラッグストアも豊富で徒歩圏内

日用品の購入先としてスーパーの平和堂が徒歩圏内に、2キロ先には異なる3店舗のスーパーがある。ドラッグストアも徒歩圏内に2店舗ある。コンビニも1~2キロほどの距離にある。平和堂には生活館も併設されておりテナントとして百均ショップも入っている。ホームセンターも徒歩圏内にある。

全て徒歩圏内にあり網羅的な文教施設

育児学習環境においては木之本の中にこども園、小学校、中学校、高校とまとまって立地している。また滋賀県最古の図書館である江北図書館、長浜図書館分室木之本まちづくりセンター図書室やコンサートも可能なスティックホール、運動施設の湖北THGツインアリーナなど全て徒歩圏内にあり、子供たちだけでの訪問でも全く支障がない。

生活安全では地域機関組織が最寄に立地

地域機関病院の湖北病院、木之本警察署、伊香消防署と生活安全においてのセーフティーネットも充実している。田舎でよくある救急車が到着するまで15分以上といったことはない。警察、消防、救急もすぐに駆け付けてくれる。更には地域機関病院が至近であることから病院へ救急患者を届けるのもはやい。
ここまでまとめてみると、長浜市の中でも定住先として選ぶべきアドバンテージのある地域であるといえ、これは日本全国他の田舎をみてもここまでの生活環境を保有している地域はかなり希少であると言えるのではないか。

木之本の世帯・人数増減、直近8年の推移

以下のグラフは木之本の世帯、人口の総数をまとめたものだ。参考値として世帯、人口それぞれの自治体加入数を入れてある。総数と自治体加入数の増減は差異あれど相関性があることが読み取れる。
しかし、8年間減少の一途をたどると考えていた世帯数は2022年を底として2023年からは増加に転じ2025年まで伸長しており、自治体加入世帯も同じ期間で増加に転じていた。人口に関しても同じ期間に減少数を下げており2024年は減少を一桁としたが翌年からは減少増に転じている。そして世帯数、人口ともに2026年に入ると再び減少増へと転じており、下げ止まったと思った数値は再び減少へと進んでいる。

2023年からの3年間は世帯数が増え人口減少は緩やかになっている

世帯における自治体加入に関して、世帯が増えている年には自治体加入も増えており、これまで未加入であった世帯の加入のみならず新規移住者の加入もなされていると推測できる。さらに2026年1月1日時点での加入率をみてみると人口比96.3%、世帯比94.8%が自治体に加入しておりほぼカバーしているといえる。

人口減率が顕著に高い木之本

長浜全域における人口、世帯数推移とその比較をしてきた。
どの地方都市も課題としている人口減、これに関しては長浜市全域、木之本双方で進行している。特に木之本における人口減は長浜市全域と比較し減少率でみると10年前と比較して長浜市全域が▲8.1%に対し木之本は▲21%、16年前比では長浜市全域が▲12%に対し木之本が▲30.9%と木之本の人口減少はより急速にすすんでいる。世帯数増減に関しては長浜市全域が増加しており、特にここ10年は顕著に増加しているのに対し、木之本は2023年からの2025年までは増加に転じたが2026年には再び減少となっている。同時期に人口減少が緩やかになっていることを考えると人口の自然減をある程度カバーしうるだけの新規移住者の存在があったと考えられる。しかしながら、長浜市全域における世帯数増の実態との乖離を踏まえると木之本においては新規移住者の事例が少ないといえる。

木之本は移住者受け入れ態勢が整っていない?

木之本に移住者が少ない、またはほとんどいないかといえばその限りではない。滋賀県内のみならず県外、大都市圏からの移住者が一定数おり、かくいう私もその一人で、妻も該当する。芸術系の生業をもつ方も一定数おり他地域と比較してもユニークな移住者がいる地域といえるだろう。
一定数移住者を受け入れ、定住している地域であることから木之本は移住者の受け入れ態勢が整っていないとまでは言えない。いや、むしろ一定数移住者もいることから移住を検討している人からも選択肢として選ばれやすいとすら考えられる。

木之本で住む場所を見つけることこそが課題

20代の移住希望者の多くが長く居を構えたいと考えている一方で、将来の予測不可能変数を踏まえ、まずは賃貸での移住先を希望するケースが多い。
賃貸可能な物件が少ない点が移住者増へのボトルネックといえる。
また、年齢に限らず作陶、木工、染色、文筆、食品加工、飲食業等何かしらの生業をもっている移住検討者が一定数存在している。住居兼用店舗としての活用、イベントやワークショップの実施も可能な場所などを想定しており、立地も大切になってくる。北國街道・地蔵坂沿いを中心に物件を探す人が多いが、先祖代々の一等地、本家があったところなどの理由から空き家があったとしても売買・賃貸問わず物件が出てくるケースが稀だ。所有者の意向もあるため仕方がないが、木之本活性化のためには地域で借り上げる、買い上げるなど抜本的なてこ入れが必要といえる。

木之本にある重層的な記憶を活用する

北國街道・地蔵坂沿い以外の地域活用に関しても検討してみよう。木之本では一つ入った裏路地にも旧映画館、旧豆腐屋、旧洋品店、旧文具屋、旧茶屋等、興味深い建物が存在する。
表通りには旅籠、料理屋が立ち並び、一筋裏に入れば置屋や茶屋があった。銭湯もあった。養蚕の歴史と琴糸、一説には東の富岡(富岡製糸場を指す)、西の木之本と言われた生糸の繁栄もあり、江北図書館前の広場には紡績工場があった。撚糸技術を活かしたテグス工場など、一見地域の埋もれた生活の歴史、風土的なもの、この重層的な記憶、その物語を紐解き移住希望者へ伝えていくことで移住希望者のニーズを広範囲で発掘することが可能と考える。

木之本らしい移住者受け入れをめざして

長浜市全域で人口減少が進んでいる一方、世帯数は増えており、労働者の流入といった点で人口の自然減を少しマイルドにしていることが数値から見て取れた。一方、木之本の人口減少においては長浜市全域と比較し、さらに高い減少率であり、世帯数も減少している。
世帯数増要因として想定される「実家から独立した世帯の新たな定住先」、「他地域から転入した労働者の定住先」、いずれにも選ばれにくい地域であるといえる。
一方で、長浜市内でも生活におけるアドバンテージはかなり上位にあることもまとめた通りである。
よって、選ばれにくい理由の一つに物件の供給不足、物件探しの難易度が浮かび上がった。つまり、定住希望者が「木之本でなければいけない」という強い理由がない層であれば他地域に定住先をみつけ、そちらに定住するといった代替定住地があるといえる。

裏路地の魅力となる木之本の記憶

木之本の物件供給が急激に潤沢になることは考えにくい。また、北國街道・地蔵坂の物件が賃貸、売買に出てくるケースは極めてまれであるのが現状である。そうであれば、ある程度の期間を要しても物件を探しつづけ、なんとしても木之本に住みたいと考える人にリーチしていく必要がある。住みよい、「利便性が高いといった論点」だけではない層であり、実際に探し続けている潜在定住希望者がいることは上述の通りである。
この層が探し求める表通りの物件利活用が進みにくい現状から、裏路地の物件活用こそが現状の木之本における定住先候補の最善と考える。前提として店舗・イベント活用可能性などの機能面は担保する必要はある。
一方で、付加価値施策として建屋、土地の記憶をまとめ、可能な限りその記憶に由来する古民具の提供をしていく。当該物件の所有者が整理整頓時に廃棄しないように働きかける。こういった記憶の付加価値を提供していくことで、そこに魅力を感じる層の定住者を増やす。
この裏路地の活性が表通りである北國街道、地蔵坂の空き家活用の動きにつながり、木之本全体がさらなる魅力ある地域になっていくのではないか。

出所:人口、世帯数の数値は全て長浜市がウェブ上で公開しているデータを参照した。閲覧日2026年5月31日。https://www.city.nagahama.lg.jp/category/5-16-6-0-0-0-0-0-0-0.html

いいなと思ったら応援しよう!