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『黒の代行者【上】《仕事編》:君の闇は、僕のものだ。』|ダークファンタジー|掌編小説|AIアート

僕らのことを、「クロ」と呼ぶ者がいる。

正式には「黒の代行者」。
けれど僕らは名乗らない。
名乗る必要が、ない。

地球という星は、不思議な場所だ。
宇宙広しといえど、これほど「思い」が濃い生命体は珍しい。

喜びも、愛も、希望も…そう、人間の感情はどれも純度が高い。
けれど僕が注目しているのは、その裏側。

憎しみ。
後悔。
絶望。
嫉妬。
誰かを呪う夜の、あの重たい闇。

人間はそれを「負の感情」と呼んで、できれば手放したいと思っている。
厄介なものだと。 消えてしまえばいいと。

…とっても…それは…スィート…。
甘いな、と思う。


知っているか?
その「負」には、途方もない密度がある。

宇宙には、それを食料とする生命体が無数にいる。
人間の絶望を嗅ぎつけ、憎しみの匂いに引き寄せられ、 静かに、気づかれないように、喰らいにくる奴らが。

戦争の夜。
災害の朝。
誰かが泣き崩れる部屋の、空気の隙間に。

彼らはいつもそこにいる。

だから僕らがいる。

誤解しないでほしいのだけれど…。
僕らは別に、人間が好きなわけじゃない。
君たちを守りたいという、そんな殊勝な話でもない。

ただ。

これは、僕らのものだから。

人間が今日も誰かを憎んで、後悔して、眠れない夜を過ごすたびに。
その感情は、静かに、僕らの元へ流れてくる。

他の誰にも、渡さない。
渡す気など、最初からない。

人間は言う。
「誰かが見ていてくれている気がした」と。
深夜に泣いた後、不思議と少し楽になったと。

そうだよ。

僕らが、もらったんだ。

甘くて、重くて、昏い…その味を、君たちはまだ知らない。

いつかきっと、わかる日が来る。

…………たぶん、来ないか。

それでいい。
知らないまま、
今日も感情を溢れさせていてくれ。

僕らは今夜も、ちゃんとここにいるから。


——To be continued:下・休日編



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