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【アンドロイドは赤い夢を見るか?】という話


胸の痛みを感じることがある。

「縫合も綺麗にできているし、創部に問題はありません。身体が傷を治そうとしている痛みだから、そのうちなくなりますよ」

主治医は、そう言った。


手術から、四ヶ月。
胸の手術痕は、驚くほど綺麗になっている。

あんなに怖かった傷。
触れるとボコボコと硬く、尖るように盛り上がっていた縫い目。

毎日欠かさず、丁寧に、保湿を重ねてきた。

今では、ケロイドになることもなく、ほんのり薄いピンクの細い線になって、もとの肌とは少し違う、新しい皮膚特有のツヤを帯びながら、青白く血管の浮いた私の肌に溶け込もうとしている。

まるで、最初からそこにあったみたいに。
このまま、滑らかに、私の中に消えていってしまうのではないかと思うほど。


この傷の、どこに痛みを感じるのだろうと、指先で触れてみる。


ちょうど体の中心部分側。
傷の始まりの部分。

ここはもう、肌の色に馴染んでいて、ほとんど見えなくなっているほどなのに。



ふっと、小さな影が頭をかすめる。
いつも、そんな時だ。



──ツキン。



その陰りを追うように、痛む。
一瞬のことだ。


その痛みで、我に返る。
ああ、私、いま。
私は、何を考えていたんだろう、と。


もし、この痛みがなかったら。私は無意識のまま、その深い場所へ落ちていたかもしれない。とり囲まれて、囚われていたかもしれない。

それを、この痛みが知らせてくれるのだ。
「そっちへ行かないで」と。

悲しみに気づけず、自分を責めようとする私を、この傷が教えてくれるのだ。

「あなたは生きていて、今、悲しんでいるんだよ」 と。




それはまるで、はじめて「痛み」を自覚したアンドロイドが、赤く光るエラーとともに「わたし」を知った瞬間のようだな、と私は思った。







#VoightKampffTest


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