動きの一瞬と光の陰影を捉えた孤高の観察者【エドガー・ドガ】
【この記事の目的】
1.美術検定の合格に向けて、西洋美術史の流れをまとめた記事を作る
2.時代ごとに活躍した芸術家を別の記事で作成しリンク付けする
1. 基本情報

名前:エドガー・ドガ (Edgar Degas)
生没年:1834年7月19日~1917年9月27日
出身地:フランス、パリ
活躍した時代:19世紀後半
主な活動分野:油絵、パステル、素描、版画、彫刻
パステルとは顔料を固めただけのチョークのような画材。スチームで柔らかくしたり、ペースト状にしたりして使用する。
2. 芸術様式と技法
所属した流派・運動
所属した流派・運動 印象派の一員として活動しましたが、他の印象派の画家たちとは異なり、人物描写と室内に強い関心を持ち、独自の視点で近代生活を描きました。
代表的な技法・表現
卓越したデッサン力:古典的な素描の訓練に基づいた、正確で力強いデッサン力で人物の動きや骨格を捉えました。
革新的な構図:画面を大胆に切り取るような、斬新で非対称な構図を多用し、動きや視線の流れを強調しました。
多様な画材の活用:油絵だけでなく、パステル、ガッシュ、版画、そして晩年には彫刻と、多様な画材を駆使して表現の可能性を追求しました。
光と影の演出:舞台照明や室内の人工的な光の効果を鋭敏に捉え、人物や空間に独特の陰影と雰囲気を与えました。
画風の特徴
バレエの世界:舞台上の華やかな光景だけでなく、舞台裏の練習風景や踊り子たちの日常の姿を、鋭い観察眼で描き出しました。
競馬場の情景:競馬のレースや騎手、観客の様子を、動きのある瞬間を捉えた構図で表現しました。
都会の生活:洗濯女、帽子屋、カフェの客など、パリの都市生活における人々の姿を、さりげない日常の一コマとして描きました。
内面の探求:肖像画においては、モデルの内面的な感情や個性を、表情や姿勢を通して深く掘り下げました。
画風の変遷
初期(1850年代~1860年代)
ルーヴル美術館での模写やイタリア留学を通して古典絵画を研究し、歴史画や肖像画など、伝統的な主題に取り組みました。
印象派との交流期(1870年代~1880年代)
印象派展に積極的に参加し、モネやルノワールらと交流しますが、戸外制作よりも室内での人物描写に重点を置きました。パステルを多用するようになります。
晩年(1890年代~)
視力低下が進むにつれて、より色彩豊かで大胆な表現へと変化しました。彫刻にも取り組み、触覚的な表現を追求しました。
3. 代表作品
「ベレッリ家の肖像」 (1858-1867年)

初期の肖像画の傑作。ギクシャクした家族の個性と内面を、抑制された色彩と堅牢なデッサンで描き出しています。
「競馬場にて」 (1866-1868年頃)

競馬場の活気と、レース前の緊張感を捉えた作品。動きのある構図と、光の表現が印象的です。
「バレエの授業」 (1874年)

バレエの練習風景を斜めからの大胆な構図で捉えた作品。踊り子たちの動きや、光の当たり方が繊細に描かれています。
「エトワール、または舞台の踊り子」 (1876-1877年)

舞台上でスポットライトを浴びるバレリーナの姿を描いた作品。衣装の質感や、一瞬のポーズの美しさが際立っています。
「アブサン」 (1876年)

カフェの一隅で物憂げな表情を浮かべる男女を描いた作品。近代都市の孤独や倦怠感を象徴的に表現しています。
「アイロンをかける女たち」 (1884年頃)

労働者である洗濯女たちの日常を描いた作品。肉体労働の様子や、疲労感が伝わってくるような描写が特徴です。
「浴槽の女」 (1886年頃)

女性が身支度をするプライベートな瞬間を、鍵穴から覗き見るようなユニークな視点で描いた連作。
4. 生涯と人間性
生い立ちと教育
パリの裕福な銀行家の家庭に生まれる。幼少期から絵画に興味を持ち、ルーヴル美術館で古典絵画を模写しました。当初は法律を学びましたが、画家を志し、アングルの弟子ルイ・ラモットに師事しました。その後、エコール・デ・ボザール(国立美術学校)に入学し、イタリアへの留学も経験しています。
重要な出来事・転機
サロンへの出品と印象派展への参加
1865年に「中世の戦争の場面」でサロンに初入選しますが、その後はマネの紹介で印象派の画家たちと交流を深め、1874年の第一回印象派展から積極的に参加しました。
視力の低下と晩年の制作
1870年代後半から徐々に視力が低下し始め、晩年にはほとんど視力を失ってしまいます。しかし、その中でもパステル画や彫刻など、触覚を頼りに制作を続けました。
生涯独身
生涯独身であり、私生活は謎に包まれている部分が多いです。内向的で辛辣な性格だったとも伝えられています。
経済状況と社会との関わり
裕福な家庭の出身であったため、経済的な苦労は比較的少なかったと言えます。印象派展の企画や運営にも関わり、新しい芸術の普及に貢献しました。
個性・逸話
鋭い観察眼と卓越したデッサン力を持ち、人物の動きや内面を深く捉えることを得意としました。伝統的な美術教育を受けながらも、新しい視点や構図を積極的に取り入れ、独自の芸術表現を追求しました。辛口な批評家としても知られていました。
5. 他の芸術家とのつながり・影響
交流があった画家・芸術家
師と弟子
正式な師はルイ・ラモットですが、アングルの影響を強く受けています。特定の弟子はいませんが、彼の革新的な視点や技法は、多くの後進の画家に影響を与えました。
交流があった画家・芸術家
エドゥアール・マネ
初期から親交があり、互いに影響を与え合いました。
クロード・モネ
ピエール=オーギュスト・ルノワール
カミーユ・ピサロ
アルフレッド・シスレー
印象派の主要な画家たちと交流し、共に展覧会を開催しました。
メアリー・カサット
アメリカ出身の女性画家で、親密な友人であり、版画の制作などで協力しました。
後世への影響
動きの表現
人物の動きの一瞬を捉える彼の表現は、後のバレエやスポーツをテーマとする芸術家たちに大きな影響を与えました。
写真的な視点
大胆な切り取りや斜めからの構図は、写真術の影響を受けたとも言われ、その斬新な視点は後世の芸術表現に新たな可能性を示唆しました。
パステルの可能性
パステルを油絵と並ぶ重要な表現手段として確立し、その豊かな色彩と繊細な質感を最大限に引き出しました。
6. 評価と影響
当時の評価
印象派展ではその斬新な構図や主題が賛否両論を呼びましたが、卓越したデッサン力は高く評価されました。保守的なサロンからも一定の評価を得ていました。
現在の評価
エドガー・ドガは、印象派を代表する画家の一人として、その革新的な視点と卓越した描写力が高く評価されています。「バレエの画家」として広く知られ、彼の作品は今も多くの人々に愛されています。
7. 主な収蔵美術館
フランス
オルセー美術館
アメリカ
メトロポリタン美術館
ナショナル・ギャラリー (ワシントンD.C.)
ボストン美術館
シカゴ美術館
イギリス
ナショナル・ギャラリー (ロンドン)
コートールド美術館
日本
国立西洋美術館
ポーラ美術館
ブリヂストン美術館(アーティゾン美術館)
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