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キュビスム:視点の多様性と形態の再構築

【この記事の目的】

1.美術検定の合格に向けて、西洋美術史の流れをまとめた記事を作る
2.時代ごとに活躍した芸術家を別の記事で作成しリンク付けする

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キュビスム:視点の多様性と形態の再構築

キュビスム(Cubism)は、20世紀初頭にフランスで誕生した革新的な芸術運動です。画家パブロ・ピカソジョルジュ・ブラックによって創始され、従来の絵画における単一の視点や写実的な表現を根本から覆しました。

その名は、対象を幾何学的な「立方体(キューブ)」に分解して描いたことに由来すると言われています。キュビスムは、西洋美術の伝統を打ち破り、その後の抽象絵画や現代美術に絶大な影響を与えました。

キュビスムの誕生と発展

キュビスムの萌芽は、ポール・セザンヌが自然の背後にある幾何学的な構造を探求した作品にさかのぼります。セザンヌは「自然を円筒、球、円錐によって扱いなさい」と述べ、対象を基本的な形に分解する重要性を示しました。

ピカソとブラックは、この考えをさらに推し進め、複数の視点から見た対象を一つの画面に同時に表現する試みを始めました。

キュビスムは、主に以下の2つの段階を経て発展しました。

分析的キュビスム(1907年頃〜1912年頃)

この初期の段階では、画家たちは対象を細かく分解し、再構成することに重点を置きました。

  • 複数の視点: 対象を一点から見るのではなく、様々な角度から見た断片を一つの画面に同時に描きました。これにより、時間と空間の要素が絵画に取り込まれました。

  • 幾何学的な形態への分解: 物体は円筒、円錐、立方体などの基本的な幾何学形態に分解され、複雑な形が単純化されました。

  • モノクロームに近い色彩: 対象の形態や構造の探求に集中するため、色彩は抑制され、主に灰色、茶色、緑がかった色といった地味な色が用いられました。これにより、絵画はより抽象的な様相を呈しました。

総合的キュビスム(1912年頃〜1914年頃)

分析的キュビスムの抽象化が進みすぎた反動として、画家たちは作品に現実世界との繋がりを取り戻そうとしました。

  • 色彩の復活: 再び鮮やかな色彩が導入されるようになりました。

  • コラージュの導入: 新聞の切り抜きや壁紙、木目紙などの実物を画面に貼り付けるコラージュ(パピエ・コレ)の技法が導入されました。これにより、絵画の平面性が強調され、現実の断片が作品に取り込まれることで、抽象化されすぎた画面に再び具体的な要素が加わりました。

  • 形態の再構築: 分析的キュビスムのように細かく分解するのではなく、より大きな、再構築された形態で表現されるようになりました。

キュビスムを代表する芸術家と作品

パブロ・ピカソ

キュビスムの共同創始者であり、20世紀を代表する巨匠です。キュビスムの各段階を通じて、その様式を発展させました。

アビニヨンの娘たち』(1907年)は、キュビスムの先駆的(プロト・キュビスム)な作品とされ、伝統的な裸婦像を大胆にデフォルメし、複数の視点から見た顔や体を平面に再構成しています。アフリカ彫刻の影響も顕著です。

アンプルとバイオリン』(1912年)は、分析的キュビスムの典型的な作品で、対象が細かく分解され、モノクロームに近い色彩で描かれています。

ジョルジュ・ブラック

ピカソと共にキュビスムを創始し、その理論的・実践的な発展に大きく貢献しました。特にコラージュ技法の導入において重要な役割を果たしました。

バイオリンと水差し』(1910年)は、分析的キュビスムの代表作で、対象が複雑な幾何学的断片に分解され、絵具の質感が強調されています。

果物入れ、クラブのエース』(1913年)は、総合的キュビスムの作品で、パピエ・コレ(コラージュ)の技法が効果的に用いられ、画面に現実の要素が取り入れられています。

フアン・グリス

キュビスムの重要な推進者の一人で、ピカソやブラックの後に続きました。彼は、より色彩豊かで明快な構成のキュビスムを展開しました。特に総合的キュビスムにおいて、その才能を発揮しました。

ピカソの肖像』(1912年)は、分析的キュビスムの特徴を持ちつつも、明確な構成が見られる作品です。

フェルナン・レジェ

キュビスムに影響を受けつつも、独自の機械的で力強い表現を追求しました。「チューブの時代」とも呼ばれる彼の作品は、人物や物体を円筒形や円錐形といった単純な形態で表現し、産業化された社会のダイナミズムを表現しました。

読書する女』(1918年)は、機械的な要素と人物像が融合した作品で、彼の特徴的なスタイルを示しています。

結婚』(1911年)は、キュビスムの要素を持ちつつ、後のレジェの作風を予感させる、単純化された人物と色彩で描かれた作品です。

ロベール・ドローネー

ロベール・ドローネーは、キュビスムから派生して「オルフィスム」(Orphism)と呼ばれる独自のスタイルを確立しました。彼は、対象の形態分解よりも、色彩の同時対比や純粋な色彩そのものが生み出す光や動きに焦点を当てました。

エッフェル塔』連作は、エッフェル塔を様々な角度から捉え、色彩の断片で再構成し、光の動きや都市のダイナミズムを表現しました。

ジャック・ヴィヨン

ジャック・ヴィヨン(本名ガストン・デュシャン)は、デュシャン兄弟の長兄で、キュビスムの潮流の中で、より幾何学的で秩序だったスタイルを発展させました。彼は、色彩と形の関係を数学的に探求し、独自の抽象的なキュビスムを追求しました。

マルセル・デュシャン

マルセル・デュシャンは、キュビスムの影響を受けつつも、その枠に収まらない革新的な作品を生み出しました。特に、時間の流れや動きを絵画に表現しようと試みました。彼は後に「レディ・メイド」によって、芸術の概念そのものに問いを投げかけ、20世紀美術に多大な影響を与えました。

階段を降りる裸体No.2』(1912年)は、静止した絵画で連続する動きを表現しようとした革新的な作品で、未来派にも通じる要素を持ちます。

レイモン・デュシャン=ヴィヨン

レイモン・デュシャン=ヴィヨンは、マルセル・デュシャンの弟であり、キュビスム彫刻の主要な担い手の一人です。彼は、彫刻においても対象を幾何学的な形態に分解・再構成し、動きや力学的な要素を表現しました。

フランシス・ピカビア

フランシス・ピカビアは、キュビスムの初期から活動し、後にダダイズムへと移行した画家です。キュビスム時代には、色彩豊かで流動的な形態を特徴とする作品を制作し、オルフィスムや未来派とも交流しました。


キュビスムは、単なる絵画の様式に留まらず、彫刻や建築、デザインなど他の芸術分野にも大きな影響を与え、20世紀の美術における抽象化の道を切り開きました。

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