氾濫 【詩/現代詩】
夜もすがら
熱に浮かされていた
下水道から
潮が満ちてくる明け方
(七色の雨が 降っていた)
波立つ水面を見つめていた
僕たちの
斜めに走る銃創から
透明な血が流れている
朝日の当たる部屋から
トラクター ヘリコプター
高速鉄道の残骸が見える
(七色の雨音がひびく)
河面から覗いている眼差しは
空を見ている
ラジオからひっきりなしに聞こえる
叛逆者の叫び 独裁者のささやき
水面をながれていく
むすうの眼差し
わたしたちはあの河をただよった
いちめんは濁った水に覆われ
上がったり 下がったりしながら
櫂を動かす
通り過ぎていく町は
5年も降り続いた大雨に呑まれて
鉄道が傾いたまま浮かんでいる
高熱の譫妄のなかで
君はうわ言をいっていた
〈進軍ラッパを鳴らせ〉
〈白い家を襲撃しろ〉
傍らに擦り切れた詩集
草の葉に書かれている文字が
艫の先にぶら下がっている
まひるに近づくと
女たちの額から黒い汗が流れ
見たこともない魚が水面に映った
