【小利木町PJ】二拠点居住の可能性を探る。京都で出会ったSymTurnsという仕組み
「白鷺ニット 観光事業室」のミッションは、「観光を起点に、姫路を世界に誇れるワクワクするまちにする」
現在進めている小利木町プロジェクトでは、「姫路城のとなりで、余白を遊ぶ」をコンセプトに、1階には飲食店、2階には新たな滞在の場づくりを検討しています。
姫路城をはじめ、城下町の情緒や豊かな自然、文化施設が身近にあるこの場所で、観光では見えてこない姫路の暮らしの奥行きを感じられる。そんな「暮らすように過ごす」滞在のあり方を模索しています。
観光でもなく、移住でもない。
姫路に何度も通いながら、このまちとの関わりを深めていく。そんな可能性を探るなかで出会ったのが、株式会社八清から生まれたセカンドハウスシェアサービス「SymTurns(シムターンズ)」です。
今回は、八清代表の西村直己さんにお話を伺い、実際の施設も見学させていただきました。
1.京町家再生の先に生まれた、新しい活用のかたち
今回お話を伺ったのは、京都で京町家や中古住宅の再生・活用を手がける株式会社八清の代表、西村直己さんです。
株式会社八清は、京都で京町家や中古住宅の再生・活用を手がける不動産会社です。2001年ごろに建売や注文住宅の販売から、京町家を中心とした中古住宅の再生販売へ大きく舵を切ります。
今でこそ町家再生という言葉をよく耳にしますが、当時は京町家の価値が十分に評価されていたとは言えず、解体される建物も少なくありませんでした。そうした時代から京町家の魅力や価値に着目し、再生・流通・活用に取り組んできた、まさに草分け的な存在です。

八清の企業メッセージは、「京都の文化と魅力的な町並みを未来へとつなげ、新たな創造へ」。
リノベーションを通じて古き良き京町家の魅力を活かしながら、新たな住まい手や使い手へとつないでいく。単に建物を再生するだけでなく、その建物が地域の中で使われ続けることを大切にしてきました。
代表の西村さんは2005年に八清へ入社。京町家のリノベーション企画販売型事業をはじめ、様々な不動産の利活用に取り組まれてきました。
住宅として販売するだけでなく、一棟貸しの宿やシェアハウス、コワーキングスペース、レンタルスペースなど、時代に合わせた新しい活用方法にも挑戦されています。
そうした取り組みのなかで見えてきたのが、「所有」と「移住」の間にある新しい暮らし方の可能性です。
そのひとつの答えとして生まれたのが、関連会社である株式会社SuiTTeが運営するセカンドハウスシェアサービス「SymTurns」です。
建物を再生し、新たな使い手へつなぐ。その先にある新しい暮らし方や地域との関係性まで考え続けてきた八清だからこそ、生まれたサービスなのだと感じました。

2.観光でも移住でもない。「SymTurns」という選択肢
SymTurnsは、一言でいうと「セカンドハウスシェア」のプラットフォームです。
従来の別荘は、購入費用や維持管理費の負担が大きく、多くの人にとって気軽な選択肢ではありません。一方で、移住するほどではないものの、特定の地域と継続的に関わりたいというニーズは年々高まっています。
SymTurnsは、ひとつの住宅を複数人で利用することで、別荘所有と移住の間にある新しい選択肢を提供しています。

利用者にとっては、住宅を購入することなく、比較的手軽に二拠点生活を始めることができる。
オーナーにとっては、宿泊施設と比べて運営負荷を抑えながら遊休不動産を活用できる。
そして地域にとっては、一度きりの観光客ではなく、何度も足を運ぶ関係人口の創出につながる。
利用者、オーナー、地域。それぞれに価値を生み出す仕組みとして、大きな可能性を感じました。

今回見学させていただいたのは、「洛縁(raku-en)六条表」と「洛縁(raku-en)六条裏」。
どちらも京都駅と四条烏丸の中間ほどに位置する五条エリアにあり、交通利便性が高い一方で、夜になると落ち着いた空気が流れる人気のエリアです。
建物の外観は、まさに京町家そのもの。周囲の町並みに自然に溶け込み、この場所で暮らすように滞在できること自体が大きな魅力だと感じました。
一方で内部は、京町家らしい意匠や空間構成を残しながらも、水回りや断熱性など生活に必要な機能はしっかりとアップデートされています。
キッチンや洗濯機、生活家電も充実しており、数日ではなく数週間単位の滞在を前提に設計されていることが伝わってきます。
特に印象的だったのが、利用者ごとに用意された鍵付きの収納スペースです。荷物を置いたまま帰ることができるため、毎回大きな荷物を持ち運ぶ必要がありません。
また、施設には折りたたみ自転車も用意されており、京都市内を気軽に散策することができます。
実際に周辺を歩いてみると、近所には昔ながらの銭湯や蕎麦屋もありました。観光地としての京都だけではなく、地域の日常が今も息づいていることを感じられる環境です。
実際に施設を見学して感じたのは、「泊まる」というより「暮らす」という感覚です。
ホテルのような非日常を楽しむのではなく、その土地の日常に少しずつ馴染んでいく。SymTurnsは、そんな滞在のあり方を実現する仕組みなのだと感じました。


3.SymTurnsを利用する人たち
西村さんから伺った利用者の話で印象的だったのは、利用者ごとに京都を楽しむ理由がまったく異なることでした。
ある利用者は、北海道や軽井沢、沖縄、海外など様々な場所に滞在したうえで、最終的に京都を二拠点目として選ばれたそうです。仏像や建築、庭園が好き。美術館やギャラリーも多い。自ら絵を描くこともあり、京都には何度訪れても新しい発見がある。コンパクトな都市なので徒歩や自転車で移動しやすく、散歩をしているだけでも楽しい。
魚屋や八百屋を探して歩いたり、銭湯へ立ち寄ったり、おいしそうなお店を見つけたり。近所でお気に入りのお香を買い、自分なりに空間を整えながら過ごす。ホテル滞在ではなく、町の中で暮らすように過ごせることに魅力を感じているそうです。
また別の利用者は、会社員を退職後、リモートワークをしながら隔月で京都へ通っています。京都の路地を歩き、茶筒屋や鉄器屋を見つける。四季を通じて同じ場所を訪れることで、その土地の感覚が少しずつ自分の中に蓄積されていく。京都特有の東西南北の感覚が身体に馴染んでいくことさえ楽しいと話されていたそうです。
さらに、京都の大学で教鞭をとることになった利用者もいます。もともとはワーケーションを通じて京都の魅力に惹かれ、シムターンズの利用を開始。友人を招いてお茶会や勉強会を開いたり、起業家イベントやセミナーに参加したりするなかで、新たな仕事や活動にもつながっていったそうです。
こうした利用者の話を伺うなかで見えてきたのは、SymTurnsの利用者には一定の共通点があるということです。
都市部に暮らし、仕事や子育てが一段落し、自分のために使える時間が増えてきた人たち。経済的な余裕だけでなく、これからの人生をどのように楽しむかを考え始めた人たちです。その選択肢として選ばれているのが、二拠点居住というライフスタイルです。ただ、利用者の関心は二拠点居住そのものにはありません。
京都の文化に触れたい。
美術館や博物館に通いたい。
路地を歩き、お気に入りの店を見つけたい。
友人を招いて語り合う場をつくりたい。
それぞれの興味や価値観に合わせて京都を楽しむための手段として、二拠点居住を選んでいるように感じました。
こうした話を聞いていると、利用者が求めているのは単なる宿泊施設ではないことが分かります。京都という土地が持つ文化や歴史、日常の暮らしを、それぞれの興味や価値観に合わせて楽しむための拠点。SymTurnsは、そのための器として機能しているように感じました。


4.小利木町に通う理由をつくる
SymTurnsの利用者の話を聞きながら考えていたのは、小利木町にはどんな楽しみ方があるだろうか、ということでした。利用者が京都に惹かれている理由は、人それぞれです。
建築や庭園が好きな人もいれば、美術館や博物館を巡る人もいる。路地を歩き、個人商店を訪ねることを楽しむ人もいる。共通しているのは、その土地ならではの文化や日常に魅力を感じていることでした。
小利木町にも、そうした可能性があります。世界遺産姫路城を中心に、この周辺には船場川やシロトピア公園の豊かな自然があります。兵庫県立歴史博物館や姫路文学館、姫路市立美術館など文化施設も身近にあり、城下町として育まれてきた歴史や暮らしが今も残っています。
朝は姫路城を眺めながら散歩をする。
船場川沿いを歩き、公園で季節の移ろいを感じる。
美術館や文学館に立ち寄り、地域の店で食事を楽しむ。
観光で数時間滞在するだけでは気づかない、このエリアならではの魅力が数多くあります。
私たちが小利木町2階で検討しているのも、そうした時間を楽しむための滞在のあり方です。ターゲットとして想定しているのは、都市部に暮らしながら播磨との関わりを持ち続けたい人や、姫路出身で地元とのつながりを求める人、歴史や文化に価値を感じる人たちです。
二拠点居住そのものを目的にするのではなく、姫路や播磨で過ごす時間をより豊かにする手段として、小利木町を活用してもらいたい。何度も訪れるうちに、お気に入りの店ができる。季節ごとの楽しみが増える。地域のことをもっと知りたくなる。そんな人が少しずつ増えていくことは、地域にとっても大きな価値になるはずです。
「姫路城のとなりで、余白を遊ぶ」。
今回の視察を通じて、そのコンセプトを実現するためのヒントを数多く得ることができました。小利木町2階が、姫路の暮らしの奥行きを体験できる場所となるよう、これからも検討を進めていきたいと思います。
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