安青錦の左肩の色素沈着
令和7年11月場所は、中日を終えて横綱・大の里関が全勝(ストレート勝ち越し)で単独トップに立ち、1敗で新関脇・安青錦関があとを追う。
新三役の先場所あたりから安青錦関への注目度が急激に増したようで(前相撲からずっと取組スタイルは潜水艇だったんですが!)、左肩の色素沈着がさまざまな憶測を呼んでいるようだ。
本来こういうデリケートな話題は関取本人の口から語られるべき内容だと思うが、報道等から察するに、黙して語らぬ漢キャラに徹しているようなので、拙noteで客観的なソースから推察できる内容を伝えたい。
1.結論「タトゥー除去後の傷跡ではなく、『扁平母斑』に類する痣だと思われる」
結論から言えば、関取の左肩の色素沈着は「生まれつき、もしくは思春期にあらわれる扁平母斑」だと思われる。
※ メラニン色素に関係する疾患のため、他者に感染はしないとのこと。
2022年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻、あるいはその他の影響で左肩に入れたのではと憶測を呼んでいる「タトゥー・刺青を除去した跡などでは決してない」ということを断固主張したい。
以下に、このような結論に至った経緯を述べる。
2. 2021年4月時点
初めに、2021年4月22日にYoutubeに公開された動画を紹介する。 ↓
Триденний чемпіонат України з сумо провели в Мелітополі |Новини|Суспільне Запоріжжя
3日間のウクライナ相撲選手権がメリトポリで開催された | ニュース |
ススピーリネ・ザポリージャ
(概要欄より)
Збірна Запорізької області виграла командну першість чемпіонату України з сумо серед юніорів та юнаків, котрий 19 квітня завершився у Мелітополі. Понад шістсот спортсменів з 12 областей України протягом трьох днів змагались не лише за нагороди національного ґатунку, а й право потрапляння на чемпіонат Європи, котрий заплановано провести влітку у Польщі.
(2021年)4月19日にメリトポリで終了したウクライナ相撲選手権(ジュニアおよびユースの部)において、ザポリージャ州代表が団体戦を制覇した。
3日間にわたり、ウクライナ国内の12州から600名以上の選手が参加した。国内の賞のみならず、今夏ポーランドで開催予定のヨーロッパ相撲選手権の出場権をかけて戦った。






動画の詳細については、以下の記事を参照されたい。
※ 目次の「2021年 ウクライナ相撲ジュニア選手権(ヨーロッパ選手権の選抜大会)」から動画の詳細にジャンプ。
2021年4月17~19日、ウクライナ相撲選手権がメリトポリ※ で開催された。
(※ メリトポリは獅司関の故郷。獅司関は2021年当時、すでに幕下)
この時のダニーロ・ヤヴグシシン(安青錦関の本名)選手の動画(試合およびインタビュー)において、すでに左肩の痣をはっきりと確認できる。

出典:Суспільне Запоріжжя(2021年4月22日付)

出典:Суспільне Запоріжжя(2021年4月22日付)

出典:Суспільне Запоріжжя(2021年4月22日付)
ロシアによるウクライナ全面侵攻(2022年2月24日)の10か月前(2021年4月22日)の動画で左肩の痣を確認できることから、この痣は今般の戦争には無関係であると見做して良いだろう。
3. 2019年10月時点
さらに、2021年の動画ほど鮮明ではないが、2019年の世界ジュニア相撲選手権3位決定戦の動画でも、薄っすらと左肩の痣を確認できる。
第16回世界ジュニア相撲選手権大会
3位決定戦 ダニーロ・ヤヴグシシン(ウクライナ、現・関脇安青錦関)
- アルタンゲレル・ソソルフー(モンゴル、現・城勝雄さん、湊川部屋 ー 2026年7月20日追記)
sumo archives(2019年10月13日、大阪府堺市)
上記の3位決定戦の動画ほどではないが、以下の三田関との対戦でも若干の色素沈着を視認できる。
第16回世界ジュニア相撲選手権大会
準決勝 三田大生(現・十両三田関、二子山部屋) - ダニーロ・ヤヴグシシン(ウクライナ、現・関脇安青錦関)
sumo archives(2019年10月13日、大阪府堺市)
(関連記事・動画)
4. 2014年時点
では、この痣は生まれつきのものなのか。
これについては断言できない。
公平を期すために、少年時代の写真を紹介したい。
以下は、2024年11月12日(令和6年11月場所3日目)にNHKの大相撲中継で放送された、安青錦関の新十両インタビューで紹介された少年時代の写真である。
テロップに「10歳のころ」と記載されている。

画像が不鮮明なので、同じ写真が紹介されているウクライナの報道記事を以下に紹介する。


出典:Vinbazar.com(2025年8月1日付)
2004年3月23日生まれの安青錦関が10歳の頃であるから、2014年の写真だと思われる。
この写真を見ると、10歳当時の安青錦関の左肩には痣は無かった、もしくは非常に薄い色素沈着の状態(写真の陰影の可能性あり)であったと推察される。
5.「扁平母斑(茶あざ)」、とくに「ベッカー母斑」ではないか
では、2014年時点で明確に確認できなかった痣が、なぜ2021年には確認できるのか。
空白の7年の間に何があったのか。
ここからは推測になるが、おそらく安青錦関のケースは(1)日本形成外科学会および(2)日本皮膚科学会の資料に書かれている「扁平母斑(茶あざ)」、とくに、肩に出来た発毛性の遅発性扁平母斑である「ベッカー母斑」ではないかと推測する。
(1)日本形成外科学会の資料

扁平母斑(茶あざ)とは、茶色のあざが皮膚に出来る病気です。茶アザは、皮膚の色をつくるメラニンが皮膚の浅いところに増えて出来ます。(・・・)盛り上がりの無いあざと言う意味で扁平母斑と呼ばれています。また、コーヒーの様な黒さでなく、ミルクコーヒーに似た色のあざでカフェオレ班とも呼ばれます。(・・・)
ほとんど、生まれつきに存在しますが、思春期になって発生する場合もあります(遅発性扁平母斑)。思春期になって発生する場合には毛が同時に生えてくる場合が多くあります。肩に出来た発毛性の遅発性扁平母斑はベッカー母斑と呼ばれています。(・・・)
(2)日本皮膚科学会の資料
※ 患部の写真が掲載されているので、自己責任で閲覧されたい。
(・・・)ベッカー母斑は遅発性扁平母斑とも呼ばれるように、思春期に生ずる大きな(平均125cm2程度)褐色の色素斑です(・・・)。表面はややざらざらし、境界はぎざぎざしていることが多いようです。肩甲部から前胸部にかけて生ずることが多いのですが、おなかや、四肢に生ずることもあります。約半数の患者では色素斑に多毛がみられます。
筆者は皮膚科医でも形成外科医でも無いので、軽々には判断できない。
しかし、現在の安青錦関の左肩に見られる痣が、発毛を伴う薄茶色の痣のように見えることから、上記に説明されている「ベッカー母斑」に該当するのではないかと推察する。


6. ウクライナの相撲界について
これまで報道その他で公開されているウクライナ相撲代表チーム、安青錦関が幼少期から指導を受けてきたヴィンニツャの相撲クラブ(指導者:ヴァジャコーチ)の写真・動画・練習風景・他の選手たちの様子を見ても、極めて真面目な雰囲気で、タトゥーを入れるような文化や風潮を読み取ることは困難であった(※あくまでも「ウクライナの相撲界」の印象)。
(安青錦関の故郷ヴィンニツャの相撲クラブの練習風景など)

そのため、安青錦関の左肩の色素沈着は、上に推測したように「ベッカー母斑」、あるいはそれに類する何らかの皮膚の疾患ではないかと考える。
本来このような推測は無関係の外野がなすべきことではないと考えるが、遠くない将来に大関昇進がかかる関取に対して、本人の責の無いところで疑義が生じないように、本記事を書くことにした。
出過ぎた行為・推測であることは、あらためてお詫び申し上げます。
※ ヘッダー写真はСуспільне Запоріжжя(2021年4月22日付)より引用した。
