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【ショートストーリー】あざとさとは戦略であり武器である┃片思い文芸部

「蓮く〜ん♡ 今日の授業、めっちゃむずくなかった?ねぇ、ノート見せてぇ〜」

  放課後の教室に、甘ったるい声が響いた。
  わざとらしく髪をかきあげながら近づいてくるの        は、愛梨。
  いつも男子に囲まれてる、あざといを絵に書いたよ    うな女だ。

けど、蓮はそんな様子には、気付いてもいないみたいで、笑って軽くうなずいた。

「いいよ。ページどこ?」

 声も態度も、完璧。
 優しいし、顔もいいし、成績も悪くない。
 蓮はモテ男の代表みたいな男の子だ。

 私の席は、蓮のちょっと後ろ。
    自分で言うのもなんだけど、顔立ちはまあまあ整        ってると思う。
    黒髪ストレートで、どちらかといえば知的系って        言われることもある。
    愛梨みたいな派手さはないし、あんなわざとらし      い真似もできない。
   ……でもね、私は知ってる。

 蓮が、誰のことをいちばんよく見ているか


 愛梨は、計算高い。
 話すときに身体を傾ける角度、語尾の伸ばし方、
 スカートの丈に、上目遣い。
    まさに完璧ともいえるあざとさだ。

 蓮は、モテる割に鈍感だから、そういうのも笑っ      て受け流す。そんな所が愛おしい。

 愛梨のわざとらしいあざとさに引き換え、私の作      戦は我ながら完璧だと思う。

    たとえば、今飲んでいる飲み物。
    【たまたま同じもの選んじゃった】感を出す。

 そうすると向こうから話しかけてくる。
    今日だって……ほらね?

 昼休み、図書室で。
 彼の座る場所の、真正面じゃなくて、少し斜め後        ろに座る。
 読みかけの小説、同じものを机に置く。

 それだけで、彼は私の存在を意識する。


 愛梨がノートを借りたあと、
 蓮がふと振り返る。

ほーらきた──……
「千紘さんって、あの本好きなんだね。俺も今ちょ      うど読んでるんだ。おもしろいよね!」

 そう言って蓮が笑う。
 この時、愛梨の顔がピクリと動いたのを私は見逃      さなかった。

 ──この瞬間が、いちばん気持ちいい。



放課後の教室──
男子数人が机を囲んでしゃべっていた。

「てかさ、マジでいつの間に?お前と瑞希先輩」

 1人が椅子をユラユラさせながら、蓮に向かってニヤつく。

「あー……うん、まぁね」
蓮は軽く笑いながら頷いた。

「え、いつから? てか、瑞希先輩って近寄れない系、マジで高嶺の花って存在じゃん?」

「だよな〜。話しかけるのすら勇気いるってのに…どうやったんだよお前」

 みんなが寄ってくる中、蓮はちょっとだけ言葉を選んで、さらっと答えた。

「ほら、俺さ、瑞希先輩と委員会一緒じゃん?
      最初はさ、ただ相談してただけなんだよね」

「相談?ってどんな?」

「……同じクラスの子たちにいろいろ話しかけられることが多くなって、
 悪い気はしないけど、正直どう対応していいかわかんなくて…って」

「……それ、あざと女2人の話だろ?」

「お前の事狙ってます!!っての見え見えだったもんな〜」

「……まぁな」
 と蓮は笑った。

「それでさ、どうしたらいいかなって瑞希先輩に相談してるうちに、ちょっとずつ仲良くなって」

「で、告白されたわけ?」

「いや、それは……」
 蓮はちょっとだけ黙って、視線を落とすと、すぐに笑顔に戻った。

「まぁ、結果的に、だいぶ距離は縮まったよね!
 別に俺が何かしたわけじゃないけど、あの二人にはマジで感謝してる」

「うわ、最低。マジで最低」
「いやでも、すごい。計算高ぇ」
「てか、天然でやってたら逆に怖ぇよ」

 口々に冷やかされながら、蓮はペットボトルのキャップを指先でくるくると回した。

 そしてふと、誰にも聞こえないような声で、ぽつりと呟いた。

「……まぁ 結局俺が一番、あざといって話し」


⬆こちら参加させていただきました😺
書いてて楽しかったです(´˘`*)

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