【掌編】君に贈る火星の
「ご趣味は」の問いに、男はひとつ息を吸って「化石です」と答えた。
曰く、休みの日になれば山や海岸に赴き、土を掘り石を割り勤しんでいるとか。
お見合いなんて前時代的なイベントと思っていたが、さすがにそこまで太古の時代に思いを馳せる準備はしていなかった。
汗と泥にまみれて余暇を過ごすなど、自堕落な私の生態からはほど遠い。まるで火星人と相対しているかのようである。
「実は、今日この話をするかは迷いました」
長々と、半ば呪文のようだった男の話が、そこだけ鮮明に入ってきた。
「あまり一般的でない趣味で、驚かれたでしょう。ですが、今日わざわざ時間を割いてくださった貴女に失礼とならぬよう、こうして正直にお話している次第です」
僅かながら、声が震えている。
こちらの反応に、拒絶の色が滲んでいないか、窺う目つき。
そうか。
私もまた、この人にとっては火星の住人か。
「……あの、あなたのご趣味は」
男が問うてくる。
私もまたひとつ息を吸い、口を開いた。
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