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姥捨山のデジタルぽろりん ーおじいさんとおばあさんは、今日も回転寿司に行けませんー 【日本現代ばなし】

ちょいと、そこのお前さん、
これは本当のお話じゃ。
まあ、そこさ座って、
ちょっと聞いておくんなさい。

昔々じゃなくて、令和の今のお話じゃ。

〈姥捨山のデジタルぽろりん〉


あるところに、
おじいさんとおばあさんが、おったそうじゃ。

二人の住むとある村にな、
新しくごはん処ができたんだとよ。
回転寿司とかいうたかの。
おじいおばあは、そりゃたいそう喜んだ。

なんやら近ごろの回転寿司は、
寿司が回らんらしい。
好みのものを頼むと、
できたてがヒュンと届くそうな。

しかもお代はお手頃だとか。
銀の銭1枚で1皿食べれるそうな。
そりゃあ行ってみたい、行ってみたいと
皆が口をそろえて言うとった。

ところがどうしたことじゃろうか。
おじいおばあは、いつまでたっても
ごはん処に現れん。

ちょいと町からやってきた小娘が、
不思議に思うて尋ねたんじゃと。

そしたら、驚きの返事が
おじいおばあから返ってきたそうな。


さて、お前さん覚悟はできとるかのう。
今から話すのは、地方の高齢者の現実なんじゃよ。
まあ、耳の穴かっぽじって、よう聞いとくれ。


「わてらは、あないなとこ、よう行けん。
あの四角いやつを触らんと、注文できんのやろ。
(タッチパネルのことじゃ)
触ったことがないから、どうすればいいか分からん。
間違えて違うの押してしもうたら、もう直せん。
かといって、間違えたの食べるのも苦しいじゃろ。」

そんなの聞いたらええがいね、という小娘に、
おじいおばあは、言うたそうじゃ。

「店員さんに、こんなのも知らないと思われるのが、恥ずかしゅうて、恥ずかしゅうて。
失敗するのも、恥ずかしゅうて。
この年になって、若いもんにバカにされるのは、
辛いもんじゃよ。
誰か、よう分かる人に連れてってもろうて、
代わりに注文してもらわんと、
とても怖くていけんのじゃ」

そうは言うても、分かるもんはそないにおらん。
おじいおばあの仲間たちも、みんな怖くて尻込みする。

そんなわけで、
おじいおばあはごはん処に近づけん。
遠くから指をくわえて見てるだけなんじゃとさ。


おしまい。


ちょいとお待ちよ、お前さん。
このお話には続きがあってな。

おじいおばあは、なんちゅうたかの、
そうそう、セルフレジの店にもよう行けんらしい。
後ろで見張っとる、店のもんが怖いんじゃと。(万引き監視係じゃ)

もたもたしたり、うまくできんと、
すぐに店のもんがやってくる。
急かされてるようで、情けのうて、
それも辛いんじゃとよ。

そんなわけで、おじいおばあは、
高うても、遠くても、
セルフレジのない店まで行くそうな。

今度こそほんとにおしまい。
とっぴんぱらりのぷう。


さて、お前さん。
このお話、どう思うたかな。

これは、わしが実家で聞いた、
地方の高齢者の本当のお話なんじゃ。
(おじいおばあは、わしの親ではないけんど)

高齢者がデジタルに対応できないのは、
努力が足りないからでしょうか。
勇気が足りないからでしょうか。

新しい技術に対応できない、
高齢者が悪いのでしょうか。

一度も触ったことのないものを、
ぶっつけ本番で使わされ、
失敗すれば、呆れられたり迷惑がられたりする。

その心細さを、
私たちは想像したことがあるでしょうか。

どんな対策が出来るんでしょうか。

タッチパネルの練習会を開くとか、
困ってそうな時、周りが助けてあげるとか。

もっともっと、心が軽くなる何か。


おじいおばあに、腹いっぱいマグロを食わせてやりたいのお。
そう思わんか、お前さんや。


姥捨山のデジタルぽろりん
作・語り しろうみがめ

【日本現代ばなし】





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