(25)心惹かれるものには〜とろけそうになる…ほんとに溶けちゃう「かき氷」
この前のお話はこちらを見ていただけたら幸いです
子供の頃
お盆入りの日は
祖母に手を引かれ
ご先祖供養のため
お寺へ行った
そのお寺へ
行き着くには
何か所かの急カーブがある上り坂を
上がる
私は
子供だったから
元気に駆け上がっていったものだ
きっと
祖母の手を振り払って
走ったことだろう
お寺の入り口には
まずは
閻魔様の像があり
そのお顔は真っ赤で
その目は
ギッと睨みつけていて
本当に
怖かった
でも
そこを通らないと
本堂には行けない
半分目をつぶりながら
目が合わないように
そっと
そーっと
そこにいる
タジタジしていると
ゆっくり上がってきた祖母が
寄り添ってくれる

怖がっている私の耳元に
「嘘ついたら
閻魔様から
舌を抜かれるんだからね」と
祖母の
低い音声の囁きが聞こえてくる
「こわーい」
でも
子供はそうやって
「嘘をついてはいけない」
…ということを
学ぶのだろう
本堂のお参りを済ませ
お食事をいただき
帰り道は
楽ちんな下り坂
その坂を下り
少し歩くと
アーケード街
そして
閻魔様が怖くても
毎回
祖母のお供をするわけは…
アーケード街の中の
かき氷屋さんに
必ず
連れて行ってくれるから

その当時のかき氷は
水色のガラスの器に
山のように
かき氷が
盛ってある
練乳もたっぷり
器には
スプーンが刺さっていて
かき氷を崩さずに
そのスプーンを
はずすのは
至難の技だ
必ずポロリとこぼれる
それは
私だけではなく
祖母も
隣のテーブルの人も
ポロリ
ピシャっとこぼしている
だから
テーブルの上には
ピンクや
オレンジの
小さなかたまりが
ポツンポツン…とできている
お花が咲いたようだ
家にも
かき氷器はあったが
この店のかき氷は
家で作るものとは
全然違う
本当に美味しくて
最後まで全部
食べたいのに
少しずつ
頭がキーンとなって
おなかもいっぱいになって
結局残してしまうことになる
未練がましく
スプーンをかき回していると
はたして
もうそれはかき氷とは言えず
いちご水だ
そのかき氷屋さんも
もう
数年前に閉店された
もう一度
一度でいいから
あのかき氷を
食べてみたい…そう思う


