【ちび創作大賞 応募作品】あの日の選択「そういう関係になったの」
この作品は、カワムラさんのチビ創作大賞への応募作品です。
テーマは「あの日の選択」。
VOIDさんの言う「魂の叫び」とはちょっと違う気がするけど、挑戦することに意義があるということで。
この下からが本文です。
学生時代、就職活動の終盤、お互いの就職先が決まった頃から彼女と付き合い始めた。
彼女は東京の会社に就職が決まり、私は関西。
当然、社会人になると遠距離恋愛だった。
一般的に遠距離恋愛は成就しにくいと言われる。
しかし、自分達はそうはならないと決意していた。
・・・はずだった。
新入社員で右も左もわからず、仕事を覚えるのに必死だった。そして、一人暮らしも初めてで、公私共に忙しかった。
それでも、できるだけ夜は彼女と少しでも電話をしていた。月に一回以上は夜行バスで東京に向かい、彼女と会うと決めていた。実行もしていた。
そんなある金曜の夜。
彼女と電話の中で、別れを切り出される。
遠距離でコミュニケーションが減っていたことは事実だろう。しかし、決定打に心当たりはない。
理由を聞いてみる。
彼女「好きな人ができたの。もうあなたにドキドキしないの。」
寝耳に水だった。
こわごわ、どんな人か聞いてみる。
彼女「会社の先輩で結婚してるの。」
いや、意味が分からない。
他の人ならともかく、なぜ、わざわざ結婚してる人?
私「やめておいたら?望み薄でしょ??」
引き止めたいのか、相談を受けているのか、よく分からない言葉を返す。そこで返ってきた言葉は、衝撃的な一言だった。
彼女「もうすでに、そういう関係になったの。」
私「いや、まだ付き合ってるのに?」
彼女「もう別れたでしょ。」
??
理解不能だった。
時系列がおかしい。別れ話は今聞いたところだ。
そして、別れ話を切り出された時には、すでに手遅れだったのだ。
すでに、私の心は折れ、それ以上の追求をする気にはなれなかった。
その後のことはあまり覚えていない。電話を切り、このままで良いのか考えたあげく、ある決意をする。
翌朝、彼女に再度電話をかけた。
すでに終わったと思っている彼女からの一言目は、明らかに不審そうな答えだった。
彼女「どうしたの?」
私「最後にやっぱり、会って話を聞きたい。」
彼女「私は会いたくないけど。」
私「今、東京にいるんだけど。」
彼女「え!?東京に来たの??・・・分かった。東京まで来たんなら会いに行く。どこに行けば良い?」
私は声をあげて笑った。

彼女「え、何?どうしたの??」
私「え、いや、今は自宅。」
彼女「え???どういうこと?」
種明かしをした。
自宅から彼女に携帯で電話し、東京に来たと伝えたら、どういう反応をするのか、カマをかけたのだ。
ささやかな仕返しだったのだ。
申し訳ないが、私は論理的に物事を考えるタイプだ。会ってくれなさそうな相手のために、ムダなお金や時間をかけることなんてしない。
だが、会ってくれるのならば、東京に行っても良かったのかも知れない。
10年後・・・。
大阪環状線の中で元彼女を見つける。
向こうは気づいてなさそうだった。
そっと携帯の電話帳を開く。すっかり忘れていたが、まだ元彼女の連絡先は登録したままだった。
ふと、送信してみる。
「東京から戻ってきてたんだね。」
どんな反応が返ってくるのか、興味があったのだ。
まあ、十中八九返って来ないだろうけど。
その後、予想通り、何も返ってくることはなかった。
連絡先が変わったのか、無視されたのか。
その答えは知る由もない・・・。
現在、私は妻と3人の子供達と、穏やかに暮らしている。子供達と出会わない人生なんて、今では想像もできない。
あの時、東京に行ったら何かが変わっていたかどうかは分からない。
しかし、その選択は間違っていなかったと、自信をもって言える。

