【AI突撃取材2】「エクスポートボタンが出ない」問題でわかったAIの部署間トラブル

いつものように、スライド資料を作っていました。
Geminiに指示を出して、内容はばっちり仕上がっています。
「よし、Googleスライドにエクスポートしよう」——そのボタンを押そうとして、気づきました。
ボタンが、ない??
コード形式で出力されたり、ドキュメント形式になったりすることは、過去にも何度かありました。みなさんも結構ありませんか?
「またか・・・」と思いながら、今回は原因を突き止めようと決めました。
1. 「Canvasエンジン」——初めて聞く名前
Geminiに「なぜボタンが出ないのか」と聞いてみると、こんな言葉が返ってきました。
「それはCanvasエンジンの挙動によるものです。LLMが出力した内容を、Canvasエンジンがスライド形式と判断できなかった場合、エクスポートボタンは表示されません」
——「Canvasエンジン」とは!?
聞き慣れない言葉でした。でも、その瞬間、第1話で書いた「AI(エンジン)」という言葉が頭をよぎりました。
「ちょっと待った。もしかして、Canvas機能も、LLMが判断しているわけではないってこと?」
改めて確認してみると、Geminiはこう説明してくれました。
「AIが料理を作るのと、料理をお皿に盛り付けてテーブルに出すのは、別のスタッフの仕事なんです」
・LLM(頭脳):指示を理解して、回答やコードを生成する
・Canvasエンジン:LLMが作ったコードを受け取り、画面に表示して、ボタンを配置する
エクスポートボタンは、Canvasエンジンが出すものです。
LLMがどんなに正しいコードを作っても、Canvasエンジンが「これはスライド形式ではない」と判断すれば、ボタンは現れません。
今回の原因は、LLMがスライド専用の形式から少しズレた形で出力してしまったことで、Canvasエンジンが対応できなかったのでした。
AIに文句を言いたかったのですが、厳密には「料理人は正しく作った。盛り付け係が対応できなかった」という話です。
いやいやいや、初耳ですけど!?
どこに怒ればいいのか、少し困りました。

2. 「AIオフィス」は、思っていたより大きかった
「Canvasエンジン」という言葉をきっかけに、疑問が広がっていきました。
「他にも、LLMとは別に動いている部署があるんじゃないか?」
Geminiに聞き出してみると、思っていたより多くの「専門スタッフ」が存在していました。
ファイルを保管するストレージ
LLMとストレージをつなぐ橋渡し役(API)
画像を生成する専属デザイナー
長時間かけてWeb調査をする調査専門員
それぞれが分業して、連携しながら動いている。
「つまり、私がいつも話しかけている『Gemini』は、巨大オフィスの受付窓口に過ぎなかったのか」
そう気づいた時、過去に経験してきた様々な「謎の挙動」が、一気に整理されていく感覚がありました。

3. トラブルは「部署と部署の境界線」で起きる
この全体像を知ってから、AIのトラブルの見え方が変わりました。
「エクスポートボタンが出ない」は、頭脳とCanvasの境界線のトラブル。
「ファイルの中身がすり替わる」は、ストレージと橋渡し役の境界線のトラブル。
「画像を認識しない」は・・・これはまた別の話なので、それは次の記事でご紹介します。
品質管理の現場でも、異物混入や品質トラブルは「工程と工程の受け渡し」で起きることが多いですよね。責任感の強い人に限って、「自分の責任は果たした!」って思って、次の工程との間でトラブルにつながるアレです。
AIも同じでした。どこで何が止まっているかを特定できれば、対処のしようが見えてくる。
「AIが壊れた」と思う前に、どの部署の間で何が起きているかを考える。
前編で書いた「パイプの確認」が、より具体的な意味を持つようになったんです。

✅ 今回の体験から得たAIの教訓
教訓① LLMとCanvasエンジンは別のスタッフ。トラブルはどちらで起きているかを分ける
AIが正しく答えているのにボタンや表示がおかしい場合、原因はLLMではなくCanvasエンジン側にある可能性があります。指示を変える前に、どちらの問題かを切り分けましょう。
教訓② AIは「巨大オフィス」。担当部署によって得意・不得意がある
一口に「Geminiに頼む」と言っても、裏では複数のスタッフが動いています。画像生成・Web調査・ファイル管理それぞれに担当がいて、担当によって得意なことも限界も違います。
教訓③ スライド出力はプロンプトで「形式」まで指定する
「スライドにして」だけでは、頭脳(LLM)やCanvasエンジンがCanvas向けの正しい形式を選ばないことがあります。「Googleスライドにエクスポートできる形式で出力して」と、出口まで明示するとスムーズです。

※本シリーズは、食品品質管理の現場でAIを使い倒している私の実体験をもとにしています。「【AIに突撃取材 第1話[起]】AIが答えないのは「やる気」のせいじゃない?プラットフォームとAIの意外な溝」と合わせてお読みいただけると、AIの全体像がより立体的に見えてきます。↓
※次のお話、第3話はこちら↓
