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<受験に挑む方々へ>

たかが勉強、されど勉強。勉強は自らが暮らす世界線を変えるための営みです。大学に行ったからといって何かが保証されるわけではありません。そもそも人生に保証などありません。とはいえ、社会をジャングルに例えるなら、そこで暮らすには装備が多いに越したことはありません。教育機関は、それが高次になればなるほど、ハイグレードな装備を与えてくれる有難い場所です。もし、将来何かやりたいことがあったとして、それと進学との関りが浅かったとしても、学び場に行けるチャンスがあるなら、そちらを選ぶ方が人生のチャンスを広げることになるのは間違いありません。私たちのやりたいことというのは移り変わる性質があるからです。装備が多ければ自分の心変わりに対応できるチャンスも広がります。

学び場の選択次第では、自分の能力の限界に挑戦しなければならない場合もあります。受験が戦争に例えられる所以はそこにありますが、それは自分の努力が最も解り易い形で報われるイベントです。とはいえ、目いっぱいの努力が報われて大学受験に成功してしまうと、入学後は優秀な同輩たちとの間でさらなる刻苦勉励を強いられることになります。その一方、失敗した先での生活は余裕があって楽なものになります。故に、勝利の美酒に浸れるのは誰にとっても束の間で、ユートピアがそこに待ってくれているわけではありません。五月病を回避するためにも、受験戦争とはその程度のものであることを承知しておいて損はないでしょう。

受験に向けてやった方が良いことの一番を挙げるなら、それは、これまでに受けた模擬試験の総復習です。特に解けなかった問題のみに焦点をあてることです。受験は効率が物を言います。既に解ける問題に時間を割いている暇はありません。できなかったことをできるようにしておくことが肝要です。その一方、正答率が著しく低い超難問はスルーで構いません。凡人にとって満点を目指す勉強は効率が悪いからです。暗記科目の問題集なら最低5回通りやり込む必要があるでしょう。最初の二、三回には時間がかかっても、4回目から高速に情報を処理できるようになるものです。この際、解ける問題と解けない問題のチェックを怠らず、解けなかった問題のみを繰り返すことが重要です。

また、勉強は朝方に切り替えた方が良いでしょう。早起きは三文の得。朝は金の脳、昼は銀の脳、夕は銅の脳。睡眠によって脳内情報の取捨選択を終えた朝が新しいことを学ぶには最も適しています。故に眠らなければ物を憶えられません。昼食後に短い睡眠をとって記憶のプチリセットをするのも効果的で、夕方から夜にかけては、その日に勉強した内容の復習にあてがうと良いでしょう。脳の活性化には適度な運動と水分摂取と塩分摂取が大切です。カフェイン類など利尿作用のある飲み物の過剰摂取による慢性的な脱水は筋肉内の脱水を招き、肩こり腰痛の元となる他、便秘や脳脊髄液の減少、脳内血流量の減少をもたらします。体重1キロあたり30mlの水分摂取が目安です。塩分摂取も重要で、塩抜きになると気力と活力が奪われるので、ミネラルが豊富な海塩を摂りましょう。

さて、脳の高次機能を生かすには瞑想が効果的であることが知られていますが、瞑想は朝4時から7時か夕方4時から7時が最適です。とはいえ受験は時間との勝負です。瞑想は30分以内にとどめておいた方が良いかも知れません。神だのみを厭わぬなら、最後は普段お参りしている地元の神社に祈願にいくことです。日ごろのご加護に対するお礼とともに祈りましょう。そして、願いがかなった暁にはお礼参りも忘れないように。もっとも、「天は自ら助くる者を助く」です。努力なくして祈るだけでは願いはかないません。

一方、やらない方が良いことの一番は、直前対策と称した新しい問題集に手を出すことです。見たこともない問題に遭遇するほどに焦って前に進みませんし、時間がかかるばかりです。既に使い古した馴染みの深い問題集を繰り返すのがお勧めです。習得がおぼつかない知識だけをまとめた自分だけのノートがあれば、就寝直前と起床直後の数分間、毎日見返しましょう。そうしておくと、受験会場でもそれを見返すだけで落ち着きます。但し、美しいノートをつくり上げることにばかり専心するのはいただけません。芸術的に完成度の高いノートが出来上がったとしても、それが頭に入っていなければ意味がありません。知識は、頭の中に入っていてこそ知識です。書いたものを何かで隠して自分を試験してみるのが最も効率の良い記憶方法です。

受験前は誰もが人と会話したくなくなりますが、わからない問題は人とコミュニケーションをとりながらやった方が記憶に残り易いので、完全な独り学習はお勧めできません。一日のうちに環境を変えて、一人で勉強する時間と境遇を同じくする誰かと過ごす時間の両方が必要です。仮に仲間と雑談に花が咲くようなことになっても、勉強しようと思っていた時間を勉強せずに過ごす時間が15分を超えないようにしましょう。15分刻みで時間を捉えるようにして、15分でできることを積み重ねる習慣をつけることです。そうすれば、乗り物に乗っている短い時間ですら有効に活用できるようになり、勉強量を増やせます。

受験には思考を継続する体力も必要ですが、血糖値を維持する目的でチョコレートを試験の合間に食べるのは逆効果です。砂糖は急激に血糖値を上昇させると、その後は急激にこれを下降させてしまうのでお勧めしません。理屈は省きますが血糖維持にはバナナがお勧めです。また、長時間の勉強に向けて頭寒足熱の環境を整えましょう。足元が寒いと風邪をひくことが多くなるものだからです。せっかく実力をつけても体調管理が杜撰では本番に十分な力を発揮できないことがあります。

受験生諸君におかれましては、上記を参考にしていただくとともに、挑戦者として自らの世界線を変える営みに没頭する喜びを堪能していただきたいと存じます。同時に、皆さんはとても恵まれた方々であることを自覚しましょう。家庭の事情などで誰もがこのチャンスを得られるわけではないからです。周囲に対する感謝の気持ちを忘れることなく心行くまで頑張ってください。結果がどうあれ、その頑張りが長い目で見た人生において報われないことは決してありません。

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