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分断されるスライドを、ひとつの物語へ。私の頭脳をダンプアウトする育成の挑戦

お客様の要件や課題に耳を傾け、話を様々に伺いながらディスカッションを重ねる。そして、お客様が心から納得のいくITアーキテクチャを提示する。それが私の仕事であり、日々の主な業務でもあります。

このような仕事の成果を報告するとき、私たちは当たり前のようにプレゼンテーションスライドを使っていることでしょう。特にこのITの界隈においては、イベントでも業務の会議でも、プレゼンテーションスライドを使いながら説明をするケースがほぼ100%に近いのではないでしょうか。一部のエンジニアが動画を見せたり、コードやドキュメントをそのまま画面に表示して話したりするケースもあるかもしれませんが、一般的にはスライドを使って会議でお話しすることがほとんどだと感じています。

特に、実態化されていない、見ることのできない抽象化された構造物を、モデリングされたITアーキテクチャとしてお客様に対して理由と共に説明するために、スライドというものは非常に効果の高いツールです。

しかし私は、このスライドを作る前に、必ず実行していることがあります。それが、「文章としてアウトプットを作成する」というステップを挟むことです。

スライドだけを作る働き方ではなく、文章も一緒に残す。いきなりスライドを作る手順に比べれば、一見すると手間がかかっているように見えるかもしれません。それでも私がこの方法にこだわって実践し続けているのには、スライドという表現技法が持つ避けて通れない課題と、私なりのIT哲学があるからです。


ページで分断される思考、ドキュメントが紡ぐ連続性

スライドの表現技法を使って、グラフィックデザインとして配置された文様、モデリングされた構造と、一部の文章の表記だけで全てを語るというのは、実は非常に難しいことです。元々は、プレゼンテーションとして人間が口頭だけで説明することの難しい内容を補足するためのスライドであることからも、その難しさは理解できるでしょう。

しかし、この方法のまま「横展開」をしようと考えたとき、私たちは大きな問題に直面します。その場にいない人に資料が渡ったとき、そのページの意図や目的、コンテンツの正確な内容をどのように説明するかといったことが、正しく共有できない可能性が非常に高いのです。

それならば、スライドごとにスクリプトを書く場所があるのだから、そこに記述していけば良いではないか、と思われるかもしれません。しかし、分かりやすいプレゼンテーションコンテンツが目の前にあれば、見る側はそちらの方をメインにするでしょう。スライドの画面とトークスクリプトを一緒に見ながら理解するというのは、コンテンツを見る側としては実はとても難しいことだと、私は自身の経験から実感しています。

画面のサイズ感の問題もありますし、そもそもトークスクリプトの欄に、きちんと正しく文章を書いているケース自体が少ないという現状があります。なぜなら、多くの現場ではそうした思考プロセスまで網羅して記録できるようなテンプレートが用意されていないからです。もしそういった正確なテンプレートがあれば、スライド1枚を正確に説明することは問題ないのかもしれません。

ですが、もう一つ根本的な課題があります。それは、スライドというメディアが「1ページ、1ページで分割されてしまう」という点です。

スライドは1枚単位で完結するように仕上がるケースが多いため、全体を統合したときの構造の連続性や整合性を表現しきることが、どうしても難しくなってしまいます。そのページを説明するための断片的なトークスクリプトになってしまい、スライド全体が「一つのコンテンツ」として通じるように書かれないケースが多いのです。

私はこのケースを打破するために、一つのドキュメント化されたものの方が構造の連続性を正確に表現できると考え、文章を主体にしたドキュメントも一緒に作ることを良しとしました。

特に昨今は、後輩の育成という横展開を考えたときに、私がどのような考えでその結論に至ったかという「思考のプロセス」をきちんと文章化して伝えられるドキュメントといったものが重要だと考えています。

もちろん、文章主体のドキュメントは、パッと見てすぐにわからない、難しいといった意味で、横展開しても最初はきちんと読んでくれないことが多いかもしれません。それでも、本当にその内容を理解したい、きちんと正しく把握したいというごく一部の熱意あるメンバーがいたとき、その文章を読んでもらえれば、理解度を確実に高めさせることが可能です。スライドを見て「それなりに分かった気持ち」になるだけで終わらせず、より正確性の高い情報を組織に届けるために、この連続性のある文章が必要です。

人が思考し、コンピューターが文書化する

いちいちそんなドキュメントを作っていたら面倒くさいだろうと思われるかもしれません。確かに、何十ページもの詳細な文書を毎回ゼロから書き起こすのは容易ではありません。

しかし今は、文章をうまく生成してくれる生成AIが、そのあたりを助けてくれます。

ここで私は、人とコンピューターの役割分担についての哲学を大切にしています。人間がやるべきことは、頭をひねって思考すること、そしてお客様や仲間と深く対話することです。思考をどのようにして文書化するのか、その人間の頭の中にあるものをすくい上げ、正しい形へと構造化して文書化する手助けをすることこそが、現代のコンピューターが担うべき役割であり、正しい使い方だと考えています。

私は、報告書を作成するためにGemini用の「報告書生成Gem」を作りました。顧客とのディスカッションを行って、そのディスカッションした結果をもとに、私がAIを活用してドキュメントを生成していくという流れをとっています。全てのコンテンツを埋めるためのやり取りを、音声やテキストの入力で行い、AIとの対話を通してドキュメントを仕上げていく手法です。

この方法の素晴らしいところは、作成済みのスライドであったり、他の資料なども組み込んで再利用できる点です。様々な場所で作ったコンテンツをAIに放り込みつつ、言葉でも説明を補って伝えることで、ある程度それなりにきちんとした文章に仕上がります。

私の報告書では「PREP法」と「パラグラフライティング」を重要視しているので、そのような書き方になるようにGemを設定しています。これにより、きちんと表に出しても恥くなくない構造でドキュメント化させることができるようになります。

さらに、Geminiが必要なコンテンツの内容を自ら聞いてくれるようなGemを作っているので、「書き損じ」や「忘れていた観点」などもなくなります。おかげで、非常に質の高い、網羅性のある文書を再現できるようになってきました。

特に、アーキテクチャ意思決定テンプレートを、自動的にいくつも埋めて作ってくれることはとてもありがたいと感じています。粒度も適切にあわせて作成してくれるので、ブレも少なく、適切な意思決定を表現できるようになりました。

もちろん、AIが生成したものをそのまま再利用することはできませんから、自分でレビューをしながら直していくという人間の手は必要です。それでも、1から何十ページにもなるドキュメントを作成するよりかは非常に楽になりました。道具に使われるのではなく、人間の思考を手助けする仕組みとして、コンピューターの本来の力を借りている実感があります。

ドキュメントからスライドを生み出す、確かな品質への循環

こうして完成したドキュメントをもとにして、私は次のステップであるスライド作成へと移ります。私の手順は、まず先にドキュメントを作り、次にスライドを作るという流れです。

文章を先に作成した後に、ドキュメントからスライドを作成するような手順をとっているため、完成されたドキュメントをベースにしてスライドのコンテンツの順番や構成を準備していくことができます。ここは本当に楽です。

最初からスライドの枠組みに向き合うよりも、文章の段階で全体のストーリーと論理構造が完璧に整っているため、やはりこちらも網羅性が高く、抜け漏れの少ないプレゼンテーションスライドができあがるという仕組みになっています。

まずはじめに、このドキュメントを作成することで、いきなりスライドを作るよりかは手間がかかっている部分はありますが、その代わり、より品質の高いスライドを作成する、より価値の高いコンテンツを作成するということができるようになっています。

この仕組みは、作って終わりではありません。このGem自体ももちろん他のメンバーへ横展開できますし、この生成されたドキュメント自体も横展開ができますから、より正確性の高い情報を組織全体で共有できる仕組みの構築にも寄与できます。これからも、この方法を使ってドキュメントを生成していきながら、後輩の育成につなげられたらと考えています。

自分の頭脳をダンプアウトする。これからのエンジニア育成への挑戦

なぜ、そこまでしてドキュメント化と仕組み作りにこだわるのか。

それは、年齢を重ねるにつれて、自分の中に「後進の育成」というテーマがとても自然に、そして大きく浮かび上がってきたからです。

ありがたいことに、現在の私はインフラのレイヤーからアプリケーションの開発まで、かなり幅広い領域でお客様と会話をし、納得のいくソリューションやアーキテクチャを提示できるようになりました。過去の経験だけに頼るのではなく、常に最新の技術情報をインプットして自分自身をアップデートし続けてきたという自負もあります。会社からの期待に対しても、それなりの貢献ができているのではないかと、自分の足元を客観的に見られる年齢にもなりました。

しかし、このまま私一人が現場でオールラウンダーとして走り続けることには、どこかで限界が来ます。私と同じように動けるメンバーが増えていかなければ、組織の成長は私という「ユニークキャラクタ」のスペックで頭打ちになり、そこで停滞してしまうからです。

定型的な業務をプログラムに任せて自動化するのは、コンピューター本来の優れた使い方です。それと同じように、私の頭の中にある「課題をどう解釈し、どう解決策を導き出しているのか」というプロセスをダンプアウトし、形式知化して組織に組み込む。これこそが、今の私が取り組むべき最も重要な仕組み作りだと考えています。

今年の裏の目標は、プレイヤーとしての実務を極力減らすことでした。しかし現実は甘くなく、相変わらず日々の活動量は驚くほど多いままです。お客様との商談はもちろんのこと、自分の思考を言葉に起こし、トレーニングの材料へと落とし込む準備作業に、予想以上の時間を割いているからです。

それでも、このダンプアウトが洗練された教育プログラムとなり、メンバーの成長を支える資産になれば、私は本来の役割に専念できるようになります。その未来を信じて、今は粘り強くスキルトランスファーの準備を進めています。

もちろん、人を育てるというのは一筋縄ではいきません。これまでにも多くの教材を作り、研修を行ってきましたが、いつも直面する壁があります。

本当に学んでほしいメンバーほど、目前の商談や日々の業務に追われ、新しいチャレンジへのモチベーションを見出す余裕がなくなってしまうのです。どれほど優れたカリキュラムを強制的に受けさせたとしても、本人に「やってみよう」という意志がなければ、学習効果は生まれません。

「知っていること」と「できること」の間には、果てしなく深い溝があります。知識を得るだけで満足してしまう人は多いですが、それを実際の現場で体現できる人はほんの一握りです。

教育のコースを準備しただけで満足し、「やらないエンジニアが悪い」と切り捨てるのは簡単かもしれません。企業としては、その一歩先にある「どうすれば自発的に学んでもらえるか」まで踏んで考えていく必要があります。

ただ、私はひとまず、そこまでの大役は背負い込まないことにしています。まずは「学ぶための環境とコンテンツ」が目の前になければ、何も始まらないからです。どれほど時間を削られることになったとしても、まずはこのトレーニングプログラムを完成させることを、今年の第一の挑戦として実直に進めていきます。

今、私が形にしようとしている実務のノウハウは、かなり抽象度が上がっています。そのため、現在の会社の中だけに留まらず、他の現場でも広く役に立つユニークな内容になっているはずです。

今は一企業に身を置く立場ですから、すぐに横展開をするのは難しいかもしれません。けれど、この取り組みから得られた変化や知見は、いずれ社外の同じような悩みを抱える人たちにも届けていきたいと考えています。

興味を持ってくれる人に向けて講演をしたり、音声コンテンツや書籍といった形で、いつか外の世界へ還元していく。それが、これからの私が果たすべき役割なのかもしれません。

#創作大賞2026 #ビジネス部門

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