#004 《朝の影、JR六甲道》

9月11日、7時51分。
JR六甲道駅のホームに立つと、朝の光と影がはっきりと線を引いていた。
秋の空気は澄んでいて、夏の湿気が抜けた風が少し心地よく感じる朝だった。
手には、もう手放してしまったFUJIFILM X100VI。
ファインダー越しに見る景色は、いつもより透明で、どこか優しかった。
通勤電車を待つ人々の影が点字ブロックの黄色い線にかかり、列車の窓ガラスに反射した光が揺れる。
仕事へ向かう朝は、いつも同じようで少しずつ違う。
Teamsには、メンバーからの顧客訪問前の情報がいくつも届き、今日もまた、息を整える間もなく一日が始まるのだと思った。
だけど、この朝のわずかな数分だけは、自分だけの時間だった。
ホームの屋根の影がくっきりと落ち、光の当たる場所と影の場所を分けている。
その線の境界に立ち、列車の影を見つめながらシャッターを切った。
「カシャ」という小さな音が耳に残る。
列車がホームに滑り込む音と重なり、黄色い線が振動するように揺れた気がした。
これからまた、四半期の案件進捗確認と顧客へ説明が続く一日が始まる。
だけど、この一枚を撮ったことで、今日の自分がここから始まったことを忘れずにいられる気がした。
電車のドアが開き、人々が吸い込まれるように乗り込んでいく。
私は最後にもう一度ホームを振り返り、カメラをバッグに戻して電車に乗り込んだ。
その瞬間、六甲道の朝の線が、自分の背中を静かに押した。
