レイ・ダリオが『世界秩序はステージ6に入った』と宣言した。次の覇権国はどこで、日本はどう関係するのか?
【レイ・ダリオが警告】世界秩序はビッグサイクルの「ステージ6」へ。次の覇権国はどこで、私たちのビジネスはどう変わるのか?
🗞 ニュース概要
2025年2月、ミュンヘン安全保障会議でドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領、米国のルビオ国務長官らが相次いで「戦後秩序の終焉」「新しい地政学時代の到来」に言及しました。
これを受け、著名投資家レイ・ダリオ氏が自身のX(旧Twitter)に一つの見解を投稿しました。
ダリオ氏はヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエーツ」の創業者で、運用資産規模では長年世界最大級とされてきた人物です。
ウォーレン・バフェット氏と並び「投資の神様」と称されることも多く、歴史・経済・地政学を組み合わせた長期的な視点での発言は、世界の投資家や政策立案者から広く注目を集めているとされています。
その氏が2026年2月18日、ミュンヘン安全保障会議の直後に投稿したのが、以下の一文です。
It’s official: The current world order has broken down.
— Ray Dalio (@RayDalio) February 18, 2026
In my parlance, we are in the Stage 6 part of the Big Cycle in which there is great disorder arising from being in a period in which there are no rules, might is right, and there is a clash of great powers.
How Stage 6… pic.twitter.com/vriEiDZIob
It’s official: The current world order has broken down. In my parlance, we are in the Stage 6 part of the Big Cycle in which there is great disorder arising from being in a period in which there are no rules, might is right, and there is a clash of great powers. How Stage 6 works is explained in detail in Chapter 6, “The Big Cycle of External Order and Disorder,” in my book Principles for Dealing with the Changing World Order. If you can, I think it would be worth your time to read.
正式な発表です:現在の世界秩序は崩壊しました。 私の言葉遣いでは、私たちはビッグ・サイクルのステージ6部分にあり、そこではルールがない時期に突入し、力こそ正義となり、大国同士の衝突が生じることで大きな混乱が起きています。 ステージ6の仕組みは、私の著書『Principles for Dealing with the Changing World Order』の第6章「The Big Cycle of External Order and Disorder」で詳しく説明されています。 可能であれば、読む価値があると思います。
「世界は今、ビッグサイクルの最終ステージ——ステージ6に達している」
ダリオ氏がこの概念を提唱し始めたのは4〜5年前のことですが、現在の国際情勢が理論の内容と重なりを見せるようになったとして、改めて注目を集めているとされています。
そもそも「ビッグサイクル」とは何か。
「ステージ6」とはどういう状態を指すのか。
そして、次の覇権国はどこになるのか——ダリオ理論が示す答えと、現実との間にある「ズレ」を調べてみました。
詳しく調べてみました。
🌍 そもそも「ビッグサイクル」とは何か
レイ・ダリオ氏は著書『Changing World Order(変わりゆく世界秩序)』の中で、国家や帝国には一定の興亡サイクルがあると論じています。
このサイクルは6つのステージで構成されているとされています。
ステージ1:新しい秩序の開始(新しいリーダーが権力を統合する)
ステージ2:システムの構築(資源配分や官僚機構が整備される)
ステージ3:平和と繁栄(国が安定し、経済的な発展を享受する)
ステージ4:過剰と格差(過剰債務・過剰支出が積み重なり、貧富の差が拡大する)
ステージ5:財政悪化と対立(財政状況が悪化し、内部の激しい対立が生じる)
ステージ6:内戦・革命(秩序が崩壊する最終ステージ)
ダリオ氏の見立てでは、現在の世界はこのステージ6に差し掛かっているとのことです。
出典 It's official: The current world order has broken down.(Ray Dalio on X)
⚔️ 軍事戦争の前に起きる「4つの前哨戦」
ダリオ理論では、国際間の紛争には段階があるとされています。
軍事的な衝突が起きる前に、以下の4つの「前哨戦」が展開されるとみられています。
①貿易・経済戦争(関税や輸出入規制による打撃)
②技術戦争(AIや半導体など、安全保障に関わる技術を巡る争い)
③地政学的戦争(領土・同盟・勢力圏を巡る交渉や威嚇)
④資本戦争(経済制裁、資産凍結、資本市場へのアクセス制限)
そして⑤として、これらが積み重なった末に軍事戦争が起きる——という構造です。
歴史的に見ると、第二次世界大戦も1939年・41年の開戦より10年ほど前から、貿易・技術・地政学・資本の各面で前哨戦が始まっていたとされています。
1930年のスムート・ホーリー関税法(貿易)、重要物資の供給遮断(技術)、資産凍結や石油禁輸(資本)——これらが積み重なった末に、軍事衝突へと至ったとされています。
現在の米中関係に当てはめると、この「前哨戦」の段階が既に進行中とみるのが自然ではないでしょうか。
出典 It's official: The current world order has broken down.(Ray Dalio on X)
📉 順当にいけば「次の覇権国は中国」のはずだった
ダリオ理論のビッグサイクルでは、過去の覇権国の移行を次のように整理しています。
大英帝国 → アメリカという移行が20世紀に起きたように、次はアメリカから別の国へ覇権が移るとされています。
ダリオ氏が主に注目してきたのは中国です。
経済規模・製造業・軍事力・国際的な影響力のいずれにおいても、中国はアメリカに迫る水準まで成長してきたとされています。
しかし、現実の中国の状況を見ると、「順当に次の覇権国へ」という道筋には、いくつかの疑問符がつきます。
不動産市場の長期低迷が続いています。
大和総研の分析によると、2026年の中国の実質GDP成長率は4.4%程度に減速する見通しとされています。不動産不況の継続と内需の低迷が主因とされており、デフレからの脱却も困難とみられています。
さらに長期的には、人口減少・少子高齢化の進展、過剰債務問題、投資効率の低下により、2026〜2030年の平均成長率は3.8%程度、2031〜2035年は2.7%程度に落ち込むとの予測も出ています。
外需の環境も厳しさを増しています。
欧州連合(EU)は中国への依存を減らす「デリスキング」を明確に政策の柱に据えており、2026年初めには重要原材料の「欧州重要原材料センター」を新設すると発表しています。
完全な切り離しではないものの、重要分野での依存度を引き下げる方向は変わらないとみられます。
軍事・外交の面でも、「中国は国際社会において侵略的な意図を持って接触してくる」という認識が、主要国の間で広がりつつあるとされています。
内需はさらに深刻とされています。
消費が伸び悩み、雇用不安・住宅価格の下落が家計マインドを冷やし続けているとみられます。かつて日本が経験した「失われた30年」との類似を指摘する声も出ています。
出典 中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し(大和総研) 中国:2025年と今後10年の長期経済見通し(大和総研) EU、レアアース確保へ新組織(時事ドットコム)
🌀 「800年周期説」が示す、もう一つの視点
ここで、ダリオ理論とは別の、日本人研究者が提唱する歴史的な枠組みを紹介したいと思います。
歴史学者・村山節(むらやま みさお)氏は、著書『文明の研究』および浅井隆氏との共著『文明と経済の衝突』(1999年、第二海援隊)の中で、一つの法則を提唱しています。
「東洋文明と西洋文明は、800年周期で交互に時代をリードしてきた」
村山氏は膨大な世界史の年表を等間隔に並べ直すことで、このパターンを発見したとされています。
ここで、ダリオ理論と村山理論の違いを整理しておきたいと思います。
ダリオ氏の「ビッグサイクル」は、覇権国の移り変わりを軸にした理論です。軍事力・経済力・通貨の信用を持つ国がどのように興り、どのように衰退し、次の覇権国へ移行するかを、過去500年の歴史から導き出しています。
一方、村山氏の「800年周期説」は、文明のピークの移り変わりを軸にした理論です。どの国が強いかではなく、「東洋的な価値観」と「西洋的な価値観」のどちらが時代を主導するか、という文明の重心の移動を示しているとされています。
異なる視点から導かれた二つの理論ですが、どちらも「次はアジアの時代が来る」という方向性を指し示している点は、注目に値するのではないでしょうか。
約800年前に欧州でルネサンスが始まり、大航海時代・産業革命・二度の世界大戦を経てアメリカが覇権国となった——この「西洋が時代をリードした800年」が今、終わりに向かっているとみることができます。
つまりこの説に従えば、次の800年は東洋が時代をリードする局面に入るとされています。
もちろんいずれも一つの仮説に過ぎませんが、異なるアプローチが同じ方向を示している事実は、軽く流せないものがあるとも思われます。
出典 文明と経済の衝突(村山節・浅井隆著、第二海援隊、1999年)
🤔 「覇権国」の定義そのものが変わるのではないか
ここで少し立ち止まりたいのですが、これまでの「覇権国」とはどういう意味で使われてきたのかを確認しておきたいと思います。
軍事力、経済規模、技術力、通貨の信用——これらを持つ国が「覇権国」とされてきました。
大英帝国はインフラと海軍力で世界を支配し、アメリカはドル基軸通貨と核抑止力で世界秩序を維持してきたとされています。
しかし、次の時代の「覇権」が同じ形をとるとは限らないのではないでしょうか。
なぜかというと次の事が考えられるからです。
情報・文化の伝播コストがゼロに近づいた 従来の覇権は「物理的な支配力」が前提でしたが、インターネットとSNSの普及により、軍事・経済力を持たなくても「影響力」を世界規模で持てる時代になっているとみられます。
「信頼」が戦略資産になっている 米中いずれも国際的な信頼が揺らいでいる現在、「嘘をつかない」「約束を守る」「安全である」という評判それ自体が、外交・貿易・投資の誘引力になっているとされています。
村山氏の「東洋的価値観」との接続 共生・感性・精神的な豊かさを重視する東洋的な価値観が台頭するとすれば、「力で支配する覇権」ではなく「質と信頼で引きつける覇権」という形が浮かび上がってくるとみられます。
村山氏の800年周期説が示す「東洋の時代」とは、物質・征服・経済成長を中心とした西洋的な価値観に代わり、共生・感性・精神的な豊かさを重視する価値観が時代をリードする局面だとされています。
もしそうであれば、次の「覇権国」は従来型の軍事・経済大国ではなく、世界から信頼され、人・資本・知恵が自然と集まってくる国になるのかもしれません。
🗾 では、日本は次の覇権国になり得るのか
このような視点から日本を見ると、あながち的外れとは言えない要素が浮かんできます。
日本は軍事力では突出していませんが、世界から高い信頼を受けている国のひとつとされています。
「安全」「清潔」「誠実」「品質への誠実さ」——これらは日本に対するイメージとして、世界各地で共通して挙げられることが多いとされています。
訪日外国人数は近年急増しており、文化・食・デザイン・ものづくりへの関心は、特定の地域に偏ることなく世界規模で広がっているとみられます。
また、従来型の覇権国が「力で支配する」構造であったのに対し、日本が示してきたのは「質で引きつける」モデルとも言えるかもしれません。
いずれも断定できるものではありませんが、「これまでとは異なる形の覇権国の候補として日本を見る視点」は、あながち無根拠ではないと思われます。
出典 It's official: The current world order has broken down.(Ray Dalio on X)
🧭 理論上は、日本とも言いづらい
ただし、冷静に見れば、日本が従来型の「覇権国」の定義に当てはまるかといえば、それも難しいと言わざるを得ません。
軍事力はGDP比1〜2%水準にとどまり、核抑止力もなく、外交上の独立性にも制約があるとされています。
経済規模は依然として世界3位ですが、30年以上にわたる低成長、少子高齢化、財政問題は解消されていません。
また、ダリオ理論が定義する覇権国——世界の基軸通貨を持ち、軍事的に世界秩序を維持できる国——という意味においては、日本は現状、その条件を満たしていないとみるのが正直なところではないでしょうか。
出典 It's official: The current world order has broken down.(Ray Dalio on X)
🌐 だが、このままアメリカとも言えないし、中国とも言えない
一方で、では現状の有力候補であるアメリカと中国はどうかといえば、こちらも単純ではありません。
アメリカは財政赤字の拡大・社会の分断・同盟国との摩擦という内部的な課題を抱えており、「世界秩序の担い手」としての求心力が低下しているとみられています。
中国は前述のとおり、経済の長期低迷・国際的な信頼の喪失・人口減少という構造問題を抱えており、「次の覇権国」として台頭できる状態にあるかどうかは、疑問符が残ります。
アメリカでも中国でもない——これが現時点での率直な見方ではないでしょうか。
世界が「ステージ6」に入りつつあるとすれば、次の秩序がどのような形をとるのかは、まだ誰にも分からないのかもしれません。
出典 中国:2025年と今後10年の長期経済見通し(大和総研)
👑 覇権国となった国には、何が起きるのか
最後に、歴史が示すもう一つの側面に触れておきたいと思います。
ダリオ理論が示す過去の覇権国の移行を振り返ると、覇権を握った国は必ずしも「幸福な時代」を過ごしてきたわけではないという点が浮かんできます。
大英帝国は二度の世界大戦の主役を担い、多大な犠牲を払いながら覇権を手放しました。
アメリカは覇権国としての地位を維持するために、朝鮮・ベトナム・湾岸・イラク・アフガニスタンと、長期にわたる戦争を繰り返してきました。
「覇権国」とは、世界秩序を維持するコストを引き受ける国でもあるとされています。
もし日本が「次の覇権国」に近い存在になるとすれば、それは単に「世界から人気がある国」というだけでは済まない場面が出てくるかもしれません。
防衛・外交・経済のあり方を含め、「覇権に伴う責任」をどう引き受けるのかという問いが、遠くない将来に浮上してくる可能性があるのではないでしょうか。
出典 It's official: The current world order has broken down.(Ray Dalio on X)
📚️ 参考資料一覧
It's official: The current world order has broken down.(Ray Dalio on X) 中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し(大和総研) 中国:2025年と今後10年の長期経済見通し(大和総研) 習政権の新5カ年計画から読み解く中国経済の展望(三菱総合研究所) EU、レアアース確保へ新組織(時事ドットコム) 800年に1度の転換期(note・yoshida印) 文明と経済の衝突(村山節・浅井隆著、第二海援隊、1999年)
いいなと思ったら応援しよう!
サポートエリアは全世界です。
基本的に最初に攻めるべき重要なエリアがあります。
オンラインMTGであれば場所はいといません。
実は日本の商品にはかなりのニーズがあります。
物によってはその商品の素材を全くの別分野に転用されるケースもあります。
ぜひ、一度お問い合わせください。