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君が私にくれた手のひらの中の一番星

ベッドの上で小さく丸まったダイチ君が、窓の外の光をじっと見つめている。
「ねぇ、今日、サンタさん来るかな」

12月24日。
夕方の病棟は、普段よりほんの少しだけ静かだ。
冬の冷たい空気と、暖房の柔らかい温もりが混ざり合って、クリスマスの夜を少し特別に感じさせる。
病室の窓から街のイルミネーションを見る。
眩しすぎず、控えめに瞬く光。
あれだけで、ああ、クリスマスなんだなって思える。

酸素チューブがほっぺに沿っていて、息を吸うたびに胸がゆっくり上下するダイチ君。
その姿は、雪の粒みたいに繊細で、そっと守りたくなる。

「サンタさん?来るよ。だって、ダイチ君頑張ってるもんね」
私はそう言って、頭をそっとなでた。

ダイチ君は少し照れながら、口元だけでちょこんと笑う。

「看護師さんって、大人の人にも元気あげてるよね」

「元気?」

「うん。“がんばれ”って言葉じゃなくてさ、
“ちゃんと見てるよ”っていう、ああいうの」

胸がきゅっとした。
ああ、この子はまだ小さいのに、こんなにも人の心の温度を知ってる。

「ダイチ君もだよ」
私は言った。
「君もわたしに元気くれてる」

「え?ぼくが?」

「うん。ダイチ君が頑張ってる姿を見ると、
“わたしも負けてられないな”って思う」

ダイチ君は少し考えてから、
「じゃあ、看護師さんにもサンタさん来るね」
と、ふにゃっと笑った。

そのタイミングで、PHSからナースコールの呼び出し音が鳴る。
私は「すぐ戻るね」と病室を出た。

ふと振り返ると、ダイチ君が手を振っていた。
指先まで力の入らないその手は、イルミネーションより優しい光で揺れている。

夜。
見回りをしていたら、ダイチ君の枕元に小さな折り紙の星が一つ置いてあった。

『サンタさんへ
ぼくじゃなくて、きょうはかんごしさんに
がんばれっていってあげてください』

文字は少し震えていて、でもどの文字もちゃんとわたしを想っていた。

星をそっと手のひらで包む。
小さな紙の星なのに、ダイチ君の気持ちはまるで夜空で一番輝く星みたいに温かくて強い。

誰かからもらう“がんばれ”には、こんなにもあたたかい温度があるんだ。

廊下の灯りは控えめで、静かな夜勤の空気に、星の感触がふんわり溶けていく。
病棟の窓の外では街のクリスマスツリーがまたキラキラしているけれど、
夜空でも、ライトでもなく。

手のひらの中のこの星が、私にとって一番キラキラして明るかった。

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