看護師21年目、4月1日恒例の儀式がやってきた
大好きな看護師の仕事を辞める。
私は去年、そんな選択をした。
2026年4月1日。
無職の私がいるはずだった。
副主任として就職した病院は、オープン前から働いていたから、私は初期メンバーになる。
最初は何人いたんだっけ。
40人くらいはいたと思う。
今はもう、10人もいない。
病院なのに輸血を保管する場所がなくて輸血ができなかったり。
点滴棒が足りなくて請求したら、事務方が請求稟議書を紛失していたり。
なんだこの病院、と思っていた。
仕事が終わらなくて、空いている個室に泊まって次の日に帰ることもあった。
辞めたくて辞めたくて仕方なかった。
退職代行のサイトをずっと眺めていたこともある。
問い合わせをしたこともある。
院長と部長からの推薦で、翌年主任になった。
部長には、主任はやりたくないと言った。
そうしたら、
「副主任も主任も変わらないわよ」
そう言われた。
じゃあなおさら副主任でいいじゃないかと思ってそう伝えたら、
「やってみよ」
返ってきたのは、その5文字だった。
急性期だった病棟が回復期リハビリ病棟になる。
経営の悪化でまた急性期病棟になる。
毎月方針が変わって、スタッフも疲弊していた。
不満の声も多かった。
私だって、どれだけスタッフ側でいたかったか分からない。
何百回も、何千回も思った。
だって役職がある以上、経営の方針にある程度は乗らなきゃいけない。
本当は私だって、文句だけ言っていたかった。
病棟がリハビリ病棟に変わった最初の頃は、リハビリスタッフと喧嘩みたいな毎日だった。
リハビリの方が優位という姿勢に、
なんにも患者さんのことを考えていないじゃないかと腹が立った。
でも今思えば、
お互いの当たり前が違いすぎただけだった。
何であんなにイライラしていたんだろう。
睡眠時間が足りなかったのかな。
先生も相変わらず一筋縄ではいかない人たちばかり。
布切れに木の棒で、毎日戦っている気分だった。
それでも勉強して、くらいついて。
病棟の基盤ができてきた頃、院長に言われた。
「この病棟は雰囲気が良くて、来ると楽しいよ」
私も、他の看護スタッフも、医師も、リハビリスタッフも。
向かう方向が同じになってきた頃だった。
そして、その頃からだ。
体調が悪化しはじめたのは。
私はもともと身体が強い方ではない。
周りにはあまり気づかれないけれど、かなりコントロールしないとすぐ悪化する。
22歳で発症した疾患が、急激に悪化し始めた。
主治医に言われた。
休むか、辞めるかしろ。
休んでもすぐ働くんだろ?
辞めろ。
死ぬぞ。
発症した時に一緒に働いていた医師が、今も主治医をしてくれている。
きっと私は、自覚はないけれど責任感が強いらしい。
薬の副作用で、めまいも吐き気も続いた。
食事の味は全て消えた。
麻薬まで処方された。
このままじゃ、患者さんに安全な看護が提供できなくなるかもしれない。
主任として働き続けるのは、無理かもしれない。
ずっと考えた。
考え続けて、白髪が増えた。
主任を辞めてスタッフになる?
夜勤をなくす?
いや、違う。
大好きな仕事を、好きなままでいたい。
だから一度離れよう。
そう決めて退職願を書いた。
受理されたのが去年。
知っていたのは、3人もいない。
ずっと隠し通した。スタッフたちの辞めないですよね?のセリフには、どうかなー?辞めたら寂しい?とはぐらかしてきた。
そして今年の1月。
部長に呼び出された。
「やっぱりどうしてもいて欲しい」
責任感が強すぎて、今のあなたには病棟が負担になっているのはわかっている。
場所を移動して働いてくれないか。
その場所は、あなたが適任だと思う。
求めることは3つ。
情報の整理ができること。
医師と対等に話せること。
そしてもう一つ。
医師に何を言われても、くらいつけること。
言われたとき、私はもう海外に行くしなと思っていたし。
いまやっている仕事の一部は、別の人がやった方がいいんじゃないかとも思った。
だから、伝えてみた。
正直に、全部。
意外な答えが返ってきた。
休んでいいから。
有給まだあるでしょ?
10連休とかしていいから。
この仕事も直接関わらなくていい。
ただアドバイザーの立ち位置にいてほしい。
だからお願い、残って欲しい。
それなら。
やったことないし。
やってみようかな。
なので今日から私は、違う場所に異動になります。
一度も経験したことがない部署。
地域連携室。
患者さんと医師をつないだり、
家族との橋渡しをする場所。
退院後も安心して生活できるように、切れ目のない看護を提供する仕事。
そう、ここは
ずっと私が大事にしてきた
「ひとりぼっちになんか、させてあげない」
それを、ちゃんとカタチにできる場所だと思っている。
そして、病棟も離れるわけではなく兼任というカタチとなりました。
荒れている病棟に、指導要員として入ります。
(というかもう入っています)
毎年4月1日。
ナースシューズを新しくする、私の小さな儀式。
今日で看護師21年目。
今まで一度も、看護師の仕事を天職だと思ったことはない。
それでも、この仕事が大好きです。
そして来年、言ってみたいセリフができた。
看護師の仕事?
天職です。
