はじめて、自分の右腕を美しいと思えた
私は自分の身体の中なら右腕が一番好きじゃない。
こんなに沢山使っていて、活躍してくれる右腕だけど。
身体のどこが一番嫌い?って聞かれたら右腕だ。
看護師になってから、抗がん剤治療をやりたくない患者さんが点滴を切って私にかけた。
今もうっすらその痕跡が残ってる。
当時、散々いろんな人に
「どうしたの!?その腕!!」
って聞かれた。
心配してくれてるのは分かる。
でもその奥にある、
「自分じゃなくてよかった」
っていう、あの一瞬の空気もちゃんと感じてた。
私だって、気持ち悪いと思うよ。
鏡で見たとき、うわってなる。
でも仕方ないじゃん。
簡単に消えないんだから。
今はもう、だいぶ薄くなったけど。
だからずっと、
見ないようにしてきた。
できるだけ、意識の外に置いてきた。
インドに来て、カルマ解消の旅の一つに護摩行がある。
まあ、ここが今回いちばん事件感あったんだけど。
ドライバーさんもガイドさんも焦るくらいで、
「あ、これnoteのメンバーシップに書こう」って思った。
私のために、いろんな人が動いてくれた。
時間を使って、手間をかけて。
お金払ってるんだから当たり前でしょって言われたら、
じゃああなたは、この9日間、
誰かに付き添う仕事をいくらで引き受けるのか教えてほしい。
そう思うくらいに、人の気持ちと優しさをずっと感じてた。
護摩行の締めくくりに、黄色い紐が巻かれる。
ターメリックで色をつけてるから、肌も少し黄色くなる。
ただの紐なのに、
なんかちょっと特別に見えた。
この腕に、誰かが手を触れて、
願いを込めてくれた感じがして。
ふと思い出す。
「しょうこちゃんがいたから、生きようって思えた」
「最後まで笑ってくれたから、治療を頑張れた」
「パワー欲しいから、握手して」
20歳過ぎて看護師として働いてきて、
そんな言葉をもらい続けて来た。
あのときは、
「そんな大したことしてないのに」
って思ってたけど。
でもさ。
この腕で、
点滴をつないで、
背中をさすって、
手を握ってきたんだよなって。
きれいじゃないかもしれない。
でも、
ちゃんと誰かに触れてきた腕だ。
ターメリックで染まった黄色い紐が、
私の傷や痕跡を「特別なもの」に塗り替えてくれたみたいだ。
車の中で右手を見た。
太陽にかざした私の手。
黄色い紐が、光を受けて少しだけ明るく見える。

ああ、はじめてだ。
はじめて自分の右腕を、美しいって思えた。
