どんな働き方をしてても、看護師は最高だぞ
30代前半で、10年以上勤めた大学病院を退職した。
1年目の時に100人程いた同期は10年目には10人を切っていた。
今なら、
「あの病院で働いていたなら、どこ行ったって大抵のことはできるぞ」
って当時の私に言いに行きたい。
辞めると知った時、他部署の上司や先輩たちは
辞めてどうするの?
ここじゃなかったらどこにも行けないし、働けないよ
そう言われていた。
今ならわかる。
拗らせ女の引き止め方だ。
自分がずっと同じ場所にいて抜け出せないジレンマをぶつけられていただけ。
辞めるのも続けるのも本人の意思だけでいいのに。
唯一、私を育て上げたと言っても過言ではない師長だけは
「誰が育てたと思ってんの。どこに行っても恥ずかしくないように育てた。知識も技術も、看護師としても人間としても。どこでだって平気だよ。それが看護の世界じゃなくても」
泣いた顔なんて見せたことない私が、師長の前で泣いた日だった。
父が亡くなった関係もあり、しばらく実家に帰っていた。
のんびりしていたかというと、そうでもない。
父が亡くなった日に、ショックで記憶喪失になった母のそばにずっといた。
そろそろ働こうかな。
そうなった時に、気がかかりになったのはやっぱり母だった。
何かあった時、夜勤だと途中で帰ることもしにくいし。
そうして私は派遣の仕事をすることにした。
派遣に対して人はどんな印象を持つんだろう。
私を担当してくださった方は、本当に素敵だった。
正規雇用と違って期間限定で働ける。
それは今まで経験したことない分野にチャレンジできるということ。
私のキャリアならどこもすぐに採用される。
そう言ってくれた。
10年以上大学病院に勤めていたことがキャリアと表現されることに驚いた。
病棟経験しかないと思っていたことが、何よりの強みとなると言ってくれる人が目の前にいた。
最初は有料老人ホームで働いた。
病院とは全く違う環境。
患者確認をするリストバンドもしていなければ、処置をする資材も最低限。
褥瘡(床ずれのこと)が発生した時の初期対応が病院とはまるで違う。
違いに戸惑うこともたくさんあったけど、新しい価値観を教えてもらった。
派遣の担当さんからは、施設長や師長がとても褒めているとメールをくれた。
正規雇用で働かないかと、ほとんどの派遣先で言っていただけたのはこのシゴデキの派遣担当の方のおかげだ。
人に恵まれすぎてる私は、何をしたら相手に対して返せるか本気で考えた。
だってたくさんたくさん支え続けてもらった。
1年ほどで派遣は辞めようと思っていたら約5年続けていた。
老人ホーム
地域の病院
訪問看護
透析室
コロナ病棟
訪問診療
派遣じゃなくちゃ、こんなに経験はできなかったと思う。
肩書きや勤務先じゃなくて、自分がどう生きたいかを軸にしてもいいし。
いわゆる“安定”じゃなく“納得”を選んだっていい。
キャリアって、上に積みあげるだけじゃなくて、横に広げたって構わない。
約5年の派遣を終えて、私は今の病院に正規雇用として就職した。
看護部長から、それだけのキャリアがあるなら役職で働かないかと言われた。
派遣の経歴もキャリアだと言い切ってくれた人がいた。
大学病院時代からずっと断り続けてきた役職のポジション。
背中を押してくれた人たちや支え続けてくれた人たちの顔が浮かんだら、やってみようかなと思った。
はじめて思った。
派遣は楽しかった。
でも物足りないと思う時もあった。
だって、やっぱり責任のある分野は担えない。
リーダーはできなかったり、ここぞという大事な時。
派遣さんだから頼んではダメ。
それはどこの場所でもあった。
そこまで配慮されていたことに感謝するべきだとも分かってる。
でもやっぱり物足りなくて、看護の可能性を広げるために役職を選んだ。
どんな働き方をしてても、
「看護師は最高だぞ」って言える。
それが今の、私のキャリアです。
