外国人技能実習制度改正に向けた最終報告書を読む【2】
外国人技能実習生が増加している。2024/1/26には、外国人技能実習生を含む外国人労働者が200万人を超えたと報道されている。
記事によれば、外国人技能実習生は20%程度増加しており、「専門的・技術的分野の在留資格」の増加率24%に匹敵するほどの増加が生じている現状が見て取れる。
200万人というと、日本全国民の1.6%程度に相当する。つまり今や100人に1人程度は外国人と言える。それ程までに多いのかと驚く人々もいると思われるが、実際問題として外国人技能実習生が全住民の1%程度に至っている自治体はそう珍しくなくなってきている。
それだけ外国人技能実習生、外国人労働者は当たり前に見られる存在になっている。なればこそ、外国人技能実習生を取り巻く法制度がどうなっていくか、その趨勢には意識を向けておくに越したことはない。
本noteでは、「外国人技能実習生制度改正に向けた最終報告書を読む」と題して、何回かに分けて外国人技能実習生に関する法制度改正がどういった方向で進められるのか、その趨勢を占う最終報告書を読む企画を始めている。今回は、その第2回である。
前回は、第1章と第2章について読み、その内容を簡単に読んだ。今回から提言内容となる第3章を読み進める。まずは、提言全体のポイントとなる序章と言うべき内容について読みたいと思う。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001407013.pdf
第3章 提言:提言のポイント
提言のポイントは、以下6点で構成されている。
制度の枠組み
外国人の人材確保の仕組み
外国人の人材育成の仕組み
外国人の人権保護・労働者としての権利性の向上
制度の適正化・実効性確保
その他
今回の提言においては、主に①制度それ自体の枠組み、②人材確保、③人材育成、④人権保護、⑤制度の適正さ・実効性に何らかの課題感が存在していた点が見える。ここからは、それぞれについて見ていこう。
制度の枠組み
現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消する
人手不足分野の人材確保を目指す新たな制度の創設
基本的に3年間の就労を通じた育成期間で特定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指す新たな制度の創設
適正化方策を講じた特定技能制度との連続性
制度の枠組みとして、上記の点を大切にしていることが読み取れる。なお、現行の制度すべてを否定する意思がない旨が、上記に関する言及の後に加えられている。
つまり、現行の企業単独型技能実習の中で、新たな制度とは趣旨・目的が違っていても、引き続き実施する意義のあるものは新制度とは異なる枠組みで
の受入れを検討するそうである。
良いものは残す。冒頭に記載した、「現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消する」の中で、発展的に解消する点に力を入れたい強い想いが感じられる。とはいえ、最終的にどれだけの現行制度が残るかは未知数である。
外国人の人材確保の仕組み
新たな制度の受入れ対象分野は新たに設定する(特定技能制度における「特定産業分野」に限る)
受入れ対象分野ごとに受入れ見込数を設定して受入れ上限数とする
受入れ見込数や受入れ対象分野は適時・適切に変更できるにして、特定技能評価試験の評価は有識者・労使団体の意見を踏まえて政府が判断する
新たな制度及び特定技能制度は、業務所管省庁だけでなく自治体も積極的に参画する
人材確保の仕組みとして、上記内容を意識する旨が書かれている。無尽蔵な受け入れを行わない点や最終的な判断は政府がするとしても、制度の運用にあっては自治体も積極的に参加させる国と地域が協働で運営する制度が意識されているように見える。
ある種、翻ってこれまでのような監理団体・登録支援機関・受入れ機関が実質的に主体を担い、不正の温床が生まれるような形を取るべきでないと言いたいようにも見えるが、穿ち過ぎかもしれない。
外国人の人材育成の仕組み
新制度では、外国人が従事できる業務範囲を幅広くして、習得すべき主たる技能を定めて計画的に育成と評価をする
新制度では、就労開始前までに日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格するか相当の日本語講習を受講することを要件する。受入れ機関は、受け入れ後1年以内にそれらの試験を受験させる
新制度から、特定技能1号に移行する時には、技能検定試験3級等又は特
定技能1号評価試験と日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)の合格を要件にする。受入れ機関は、それらの試験を受験させる特定技能1号から特定技能2号に移行する時には、従前の特定技能2号評価
試験等の合格に加えて、日本語能力B1相当以上の試験(日本語能力試験N3等)の合格を要件とする特定技能外国人に対する支援の内容にキャリア形成の支援を加える。併せて業所管省庁は育成・キャリア形成プログラムを策定する
人材育成の仕組みというよりは、日本国内で就労するための条件を定めている内容に見える。一方で、受入れ機関に対して受験させること明示的に命じており、また国に対してもキャリア形成プログラムの策定を要求している。
見方によれば、外国人を定住させるための道筋を明確にし、そのための支援を要求しているように見える。もちろん、外国人に強制しているわけでない。試験の受験を半ば義務化することで、定住を目指す外国人がその門戸を開きやすくなるような支援整備を要求しているだけに感じられる。
外国人の人権保護・労働者としての権利性の向上
転籍の範囲を拡大・明確化し、手続を柔軟化する
外国人本人の意向による転籍は、以下の要件のすべてを満たす場合に
業務区分が同じであるものについてのみ認める同一の受入れ機関における就労期間が1年を超えている
技能検定試験基礎級等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語能
力試験N5等)の合格転籍先となる受入れ機関が、転籍先として適切であると認められるための要件を満たしている
外国人技能実習機構を新たな組織に変える。新制度の対象になる外国人に対する支援・保護機能を強化し、特定技能外国人への相談援助業務も行わせる
各自治体は、受入れ環境の整備、外国人相談窓口の整備、外国人の生活環境等を整備するための取組を推進する
受入れ機関に関する情報の透明性を高める。外国人が送出機関に支払う手数料等を受入れ機関と外国人が適切に分担する仕組みを導入する
今回の外国人技能実習制度改革の目玉とされる、転籍の許可が書かれている。また、相談体制の整備や自治体による環境整備を要望する内容が書かれている。つまり、外国人が安心して日本で働けるようにするための内容が盛り込まれている。
従前の外国人技能実習制度は、粗悪な実態が数多く見られており、外国人の人権が守られていると言えなかった。本提言では、そうした外国人技能実習制度が抱えていた問題を二度と起こさないための提言がなされている。
企業や自治体から反発の多い提言であるが、反発が生じるのが不思議なほど真っ当な提言である。本提言への反発は、従来の人権侵害もかくやな状況を今後も続けたいと言っているようなものであり、企業・自治体ともに真っ当なコンプライアンス意識と思考を持って欲しいと言わざるを得ない。
制度の適正化・実効性確保
新たな機構の監督指導機能や支援・保護機能を強化する。労働基準監督署、地方出入国在留管理局等との連携を強化する
監理団体、登録支援機関、受入れ機関及び送出機関の要件を厳格化する。機能を十分に確保しない監理団体は許可しない
優良な監理団体、登録支援機関及び受入れ機関に対しては優遇措置を講じる
制度所管省庁が制度全体の適正化の中心的役割を果たす
従前の外国人技能実習制度が適切に運用されていなかった原因の多くは、監理団体、登録支援機関、受入れ機関などにあると見られている。そのため、各団体・機関への締めつけ強化が提言されている。
同時に、国の機関による、それらの団体・機関に関する監視機能の強化及び適正化の推進が求められている。率直に言って、監理団体、登録支援機関、受入れ機関などに対する不信感の強さが伺える提言である。
一方で、本提言が外国人技能実習制度の適正化にとって重要であるのは言わずもがなである。本提言を踏まえて行われる法制度の改正が、十分に本提言を汲み取った内容になることを願ってやまない。
その他
政府は、人権侵害行為に対しては現行制度下でも可能な対処を迅速に行う
政府は、移行期間の十分な確保と丁寧な事前広報を行い、現行制度を利用している外国人や受入れ機関等に不当な不利益を生じさせない。新制度への移行には必要な経過措置の設定を検討する
政府は、新制度と特定技能制度について関係者の理解を促進する
政府は、新制度施行後、運用状況について検証と必要な見直しを行う
主に政府への要求が書かれている。主には新制度移行に関する要求である。その中で異彩を放つのは、やはり人権侵害行為への対処項目であろう。何せ、本項目については、今すぐにやれと書かれている。
当然と言えば当然の話であるが、現時点で発生している人権侵害については、制度の変更有無は関係ない。何せ今まさに被害を受けているのである。その対処に制度の変更は関係ない。現存する法制度下においても守られる対象であり、処罰できる話である。
何より、人権侵害行為には生命を脅かす行為も含まれる。そうした被害に遭っている人間の保護は、一刻一秒を争う。だから直ちに対処しろという指摘はもっともである。また、このような提言がなされるのは、今まさに人権侵害行為が行われていると認められているからである。
それだけ、現行の外国人技能実習制度には大きな問題があり、だからこそ本提言がなされていると言える。完全に善であり、正しい提言といったものは、恐らく世の中に存在しない。法制度も同様である。しかしながら、本最終報告書にて行われている提言は、非常に真っ当であると感じられる。
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