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若さの基準

痛む腰をさすりながらぼーっと電車に乗っていると、目の前に若い男性が座りました。

綺麗めコーデに身を包み、佇まいも落ち着いていて感じの良い印象でした。とにかく腰が痛かったのでそこまで気にしていなかったにですが、目の前に座るので否が応でも情報が入ってきます。ふと彼の左薬指に輝かしい指輪がはまっていることに気がついたのです。僕はすっかり腰の痛みを忘れて背筋を伸ばしてしまいました。

こんなに若いのに、もう結婚している?

いや。僕は改めてその男性をこっそりと拝見させて頂きました。若いといっても、明らかに10代ではなく、20代中盤か後半の佇まい。今まで僕の中での「若い」は10代のことでした。しかしいつの間にか、20代のことも10代に対する「若い」と同じ文脈で若いと思っている自分がいたことを初めて認識したのです。

若さの基準が引き上がっています。それはおそらく自分自身が二十代半ばになったからそう思うのでしょうが、ではこの若さの基準は自分が歳を取るほどに大きくなっていくのでしょうか。

そういえば、80代のタレントが60代のタレントに向かってに「まだ若い、これからだ」と言っているのをテレビを観たことがあります。60代のどこが若いんだと、餓鬼の頃の僕は馬鹿にしていましたが、それはこういうことなのかもしれません。80歳になれば、60歳なんて若者に見えるのでしょうか。

ただ、自分の年齢に合わせて若さの基準が上がるのは、若さに固執しているようで惨めな気もしました。自分はまだ若いんだ、まだまだ未来があるぞ、と思って現実を直視しない人間にはなりたくはありません。しかし無情にも一年は流れ、何者にもなれないまま歳を刻むことへのやるせなさが、無意識のうちに若さの基準を引き上げる要因になっているのかもしれません。

だとしたら僕は、より努力して今を大切な一瞬にしていかなければなりません。このまま年齢の基準が上がり続けると、失ったものに取り憑かれた情けない中年になってしまう可能性があります。

若さとは、思いの外奥深いものなのかもしれません。

兎にも角にも、結婚おめでとうございます。

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