「6月を巣食うもの」:【シロクマ文芸部】六月は
六月は祝日がない――これは周知の事実である。
だが、なぜ六月だけ祝日が存在しないのか、考えたことがあるだろうか。
今回は、この「六月に祝日が存在しない問題」について調査していきたい。
まずは祝日の目的と制定の経緯をおさらいしておこう。
「国民の祝日」は、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)により、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために定められた「国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日」です。
現代において、これらの目的が本当に果たされているかどうかはひとまず置くとして、法律上の祝日が制定されたのは昭和23年(1948年)であり、すでに80年近くが経過している。にもかかわらず、六月だけ祝日が存在しないのは、なぜなのか。
結論から言うと、六月に祝日を「入れない」のではなく、「入れられない」のである。
政府はこれまで何度も六月に祝日を設けようと試みてきた。
「雨季の日」「あじさいの日」「てるてる坊主の日」、果ては「なんとなく休みたい日」と称してまで制定を試みたが、いずれも失敗に終わっている。
法案が条文に盛り込まれても、なぜかいつの間にか消えてしまう。
印刷業者に通達を出し、翌年のカレンダーに赤丸をつけさせても、気づけば消えている。
まるで“何か”が六月の祝日だけを消し去っているようなのだ。
ここまで来ると、人為的なものではなく、何らかの超常的な力が働いていると考えるのも不自然ではない。
政府はオカルトへの関与を避けるのが常だが、業務そのものへの妨害を見過ごすことはできず、密かに特命チームを結成し調査を開始した。
それから、数年に及ぶ調査の末、ある一つの事実が判明した。
六月の祝日を食べる“蟲”が存在していたのである。
その姿は、削られて丸くなった消しゴムに足が六本生えたようなもので、頭(と思しき部分)を擦りつけるようにして、祝日の痕跡を食べていくという。
その様子から、暫定的に「ケシゴムシ」と名付けられた。
政府は著名な昆虫学者を招聘し、ケシゴムシの研究に着手した。
だが、その生態はあまりにも謎に包まれていた。
昼夜問わず気まぐれに出現し、解剖しても内臓らしきものはなく、体は市販の消しゴムと同じ塩化ビニル樹脂で構成されている。
出現源も、繁殖方法も不明。
なぜ六月の祝日だけを好むのか、その理由すらわからない。
困り果てた学者たちは、最後に「物理的な殲滅」を提案した。
しかし、出現場所すらわからない生物をどうやって殲滅すればよいのか。
議論は紛糾し、一部の議員は「国家総動員法」の適用を提案したが、あまりにも費用対効果が悪すぎる。
半年以上に及ぶ議論の末、政府は「何もしない」という方針を採ることを決定した。
六月に祝日がないという理由だけで、国民を巻き込むのは適切でないと判断したのである。
こうして「六月に祝日が存在しない問題」は、誰にも知られることなく、静かに幕を閉じた。
――追記。
これはあくまで私個人の意見だが、やはり「国家総動員法」を適用すべきだったのではないかと思う。
六月に祝日が1日あるかないか、それは今を生きる日本の社会人にとって、きわめて重要な問題だからである。

