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第5話 『Tシャツが乾くまで』 感想&考察|別の「大切な人」になっていた(ネタバレ)

妻を亡くした樹生と、失踪したとはいえ、夫が生きている咲子とでは、喪失感も立ち位置も違う。

ただ、リアルだなと思ったのは、その先の心の揺れだった。

逃げられても嫌いになれない。好きだからとしか説明できない。咲子は、ずっとそう思っていた。けれど、実際に充と話したら、何かが違うと感じたのだ。気づかないうちに、別の気持ちが芽生えていた。それを受け止めていく姿が、人間らしかった。

その変化がいちばん強く出た場面がある。

咲子が、初めて充を責めた

どんな理由があろうと、あの日、一緒にいたあずさは亡くなった。それを知りながら、姿を消したままの人に。

このドラマで、いちばん胸がすく場面だったかもしれない。抑えていた咲子が、ようやく口にできた。


ただの古書店主ではなさそう

樹生の家に、あずさが育った児童養護施設の職員が訪ねてきた。

あのあずさちゃんが、結婚したいって思える人と出会えたってことが嬉しくて

第5話 光江

この言いぶりから、あずさの生い立ちの過酷さが窺えた。結婚なんて、とても考える気になれない環境だったのだろう。

そして今回、その職員と宮内が旧知の仲だと分かった。あずさを昔から知っていて、施設にも縁のある人だったのかもしれない。

失礼で意地悪なおじさんだと思ってきたが、あずさの話になると、目尻に優しさが滲む。あれは、親心が先立っていたのか。

リリーさん、憎たらしい役が本当に上手い。


喪服姿の直人

事故現場に立つ樹生の前に、直人がいた。喪服姿で、あずさに花を手向けていた。

充と電話で話したあとに、心配で来たような感じだった。その「別件」の葬式も、充と関係のある人のものなのかもしれない。

そば屋で、樹生が探りを入れる。
直人にあずさのことを伝えたのは、充ではなく、あずさ本人だった。喫茶店を訪ねてきたあずさは、充が休みだと知って残念そうにした。関係を尋ねた直人に、毎月第3金曜日にコインランドリーで話す仲だと答えた。

しかし、一度会っただけの相手に、わざわざ花まで手向けにいくだろうか。充に頼まれたのか。


年下くんが、気の毒

千鶴の不倫相手が「奥さんと別れようと思ってる」と切り出す。返ってきたのは「じゃあ、私達もお別れだね」だった。

人様に迷惑をかけたくない。
みんなが幸せな形だから付き合っていたのだ、と。

いやいや、これはエグいだろう。
自業自得とはいえ、年下くんが気の毒だ。
正論を口にしているようで、一番人の気持ちを振り回しているのは千鶴さんでは……と思ってしまった。

ただ、この「誰にも迷惑をかけない」という基準は、今回あちこちで顔を出す。第5話のサブタイトルも「誰にも迷惑かけないなら」。登場人物たちが、代わる代わるこの言葉を口にした。

なのに、当の充が、いちばん人に迷惑をかけている。

いったい、どう回収してくれるのか(笑)


だが、樹生。まだ早い

樹生のマンションの更新が近い、という話が出る。こういう手続きものがあると、感情より先に、ケジメをつけたくなるのは分かる。

だが、樹生。
そこで、それを言うのは早い。

僕と翔が 瀬尾さんのお宅へ引っ越すのは、ありですか?

なしです。
そういうこと、今はまだ考えられないです
ごめんなさい

第5話 樹生と咲子

そりゃあ、粉チーズどばーっと噴出案件にもなる。

この時点の咲子には、まだ充がいる。少なくとも、本人はそう思っている。失踪しているとはいえ生きているわけで、この事実は大きい。


とうとう、充と話せた


その日、直人は混んでもいないのに咲子を店に呼び、こう言った。

電話あったら 出てもらっていいですか

第5話 直人

これで、咲子はすべてを察した。
そして、電話が鳴る。

さっちゃん?
うん、充? 久しぶりだね
元気?
元気

第5話 充と咲子

ここが、蒼井優の真骨頂だ。
必死に堪えても、涙はあふれてしまう。それを悟られないように答える。声だけは、明るいまま。

咲子は、結婚したときの二人の約束——嘘はダメ、言いたくないことは言わなくていい——を、精一杯守ろうとする。

それでも。
やっぱり、ごめんと謝り、一つだけ聞きたいと切り出す。夫婦だけの問題じゃないことがあるから、と。

何で あずささんも一緒だったの?

事故あったんだよ
死んじゃったんだよ 分かってる?

何で あずささんも連れてったの?

そのこと分かんないと
ちゃんと分かんないと
ずっとつらいままの人、いるんだよ

ずっとそのこと、答えが出ないこと
考え続けなきゃいけない人がいるんだよ

2人で
私達に内緒で出かけて、もう…
どういう関係かなんて、
もう、大体想像つくけどさ
でも 説明してほしい

園田さんのこと考えてみてよ
知ってるでしょ?子供いるんだよ
6歳の男の子。来年。小学校

その子 残して
大好きだった奥さん、
充のせいで死んじゃったんだよ

何で一緒だったの?

第5話 咲子

咲子の、静かな怒りを感じた。
子どもに言い聞かせるような口調でもあった。

このあと、充は。

元気そうでよかった。元気でいて

第5話 充

……いや、それだけ?
さすがに、それはないなー、充。
理由はあるのだろうが、言葉にしないと伝わらないよ。


自分の気持ちに気づくとき

充との電話を切ったあと、咲子のモノローグが全てを語っていた。

次、充からの電話に出れたら
自分の何が悪かったのか
どうしたら、また夫婦に戻れるのか
そんなことを
冷静に聞くつもりだったのに

出てくる言葉は、
全部、別の人を想っていた

第5話 咲子<モノローグ>

一年という月日は、本人の気づかないところで、こうやって心を動かしていくのだ。ここが、本当にリアルだった。


別の「大切な人」になってるんだなって

咲子は、樹生に電話のことを打ち明けた。

声を聞いたら
完全に気持ちを持っていかれると
思っていたのに、
園田さんのことばかり言っていた

この人とはまた違う
別の大切な人になってるんだなって

この一年、
園田さんがいてくれて本当によかった
それに気づけました
ただ 我々、くしくも男女なので

男女2人だと、そういう関係が、
ありか、なしかってことになりがちですけど
はっきりした関係じゃなくても、
一緒にいていいじゃないですか

お互いに心地よくて
誰に迷惑かけるでもないなら

第5話 咲子

これが、ひとつの答えかなと感じた。

第4話の花火の夜、咲子は「大切な人」という言葉を、充に向けて使っていた。同じ言葉が、一年後、樹生に向けられている。

咲子は吹っ切れた様子で、明るく言う。
充のもの、捨てるところから始めます、と。

ここでスピッツが流れた。
今日のスピッツは、穏やかに聴けていいなぁと思っていたら。


ピンポーン 「ただいま」

なんで、このタイミングで帰ってくるんだ(笑)
しかも、「ただいま」じゃないよね。


次週予告では、あずさとの関係を問いただされていた。ようやく分かるのかな。いずれにしても、1年も経って充が帰ってきて、モヤモヤはするが、おもしろくはなってきた。

何も言わずに消えた人が、玄関の前に立っている。



充の事情は、全く分からない。
けれど、このドラマを見ていて、あらためて「言葉」って大切だなと思った。何も言わずに失踪されたら、残された人はつらいよ。

すべてを家族に話す必要はない。
でも、大切な人を悲しませないだけの言葉は、持っていたい。



TBS金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』毎週金曜よる10時。脚本・生方美久、演出・土井裕泰。主題歌はスピッツ「見知らぬ糸」、音楽は haruka nakamura。



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