掌編小説【涙橋】
好きな時間がある。六十二歳から始めた妻との散歩の時間である。散歩は休憩をはさむ一時間前後。特別な場所を歩くわけではない。でも、特別なひと時である。
何がきっかけで妻と歩くようになったのかは覚えていない。健康にいいから等のよくある理由からだろう。だが、明確に覚えていることがある。それは涙橋公園に通りかかった時の妻とのやり取りと呼び起こされた感情だ。
妻は肩を上下させながら言った。
「ちょっと休みませんか?」
私は涙橋公園での休憩に躊躇した。だが、私も疲労を感じていた。その為、小さく頷いた。
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