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注意の貧困からの脱却「アテンション・デトックス」の時代〜集中力・判断力・関係性を低下させない技術

Z世代が、SNSから降り始めています。

正確に言えば、SNSそのものをやめたわけではありません。しかし、バズること、目立つこと、インスタ映えすることへの関心が、急速に薄れてきている。代わりに求めているのは、限られた仲間との深いつながりであり、わざとらしい演出のない、ありのままの日常です。

この変化は、単なる若者の気まぐれではありません。注意を奪い合うアテンション・エコノミーが行き過ぎた結果、集中力も判断力も関係性も削られ続けてきた。その反動として、いま「アテンション・デトックス」という流れが生まれています。

これは地域分野におけるマーケティングでも十分に配慮が必要なもので、数年前の意識のままSNSなどを活用して発信をするのは禁じ手ということにもなってきています。

まぁ私もそれなりのスマホ中毒です。笑 極力注意を妨げられないよう通知は基本こないように設定し、電話は使わず、対策を幾重にもしていてもなお、スマホは追いかけてきます。

移動中にショート動画を一本見るつもりが、気づいたら30分溶けていた、という経験は誰しもあるでしょう。「いやー仕方ないよね」では済まされないくらいアテンションを取り合う経済構造が、我々の集中力や判断力など重要なものを蝕んでいるのです。

世の中の潮流の変化と、アテンション・エコノミーの奴隷となっている状況をどう改善するか、今回は掘り下げて解説していきます。


Z世代は「映え」よりも「共感」を選び始めた

まず押さえておきたいのは、Z世代の消費行動と価値観が、ここ数年で大きく変わってきているという事実です。

少し前まで、若者といえば承認欲求の塊で、インスタ映えを追い求め、バズることに全力を注ぐ世代だと言われてきました。しかし2026年の調査を見ると、その前提はもう古い。Z世代は、広く浅く拡散することよりも、限られた仲間と深くつながることを重視し始めています。

デロイトの2025年度「国内Z世代意識・購買行動調査」によれば、Z世代の消費行動には「節約と贅沢のメリハリをつける」という特徴があります。無駄な支出は削るが、自分にとって本当に価値のあるもの、たとえば「推し活」には積極的にお金を使う。これは他の世代には見られない、明確な傾向です。

推しがいる人の割合は、Z世代女性で75.4%、Z世代男性で56.1%。推し活への消費意欲は高いものの、大半の学生は時間もお金も過度に使わず、無理のない範囲で楽しんでいるという調査結果もあります。つまり、企業が期待する「バズらせて拡散する」という行動は、実際には一部のヘビー層に限られているのです。

ここで面白いのは、「最近の若者は車も買わない、酒も飲まない、金を使わない」という、おじさんたちの定番のぼやきが、実は的外れだということです。彼らは金を使わないのではない。使う先が変わっただけです。車や酒に消えていたはずのお金が、まるごと推し活に向かっている。我々の世代がスナックや新車のローンに払っていたものを、いまの若者はライブのチケットやグッズに払っている。財布の中身が減っているのではなく、財布の口が別の方向を向いている、というだけの話なのです。

こうした変化の背景にあるのが、SNS疲れです。広く注目を集めるために、フィルターをかけた写真を投稿し、いいねの数を気にし、常に誰かの目を意識して生きる。そういう生活に、若い世代は疲れてしまった。だからこそ、フィルターが使えないSNS「BeReal」が流行り、クローズドな環境で仲間とだけつながるDiscordやLINEのグループが重視されるようになったのです。

BeRealは、1日1回ランダムな時刻に通知が届き、前後のカメラで同時に撮影した「ありのまま」の写真をシェアするアプリです。編集もフィルターも使えません。2026年時点で全世界1億2,000万ダウンロードを超え、App Storeでの評価は4.7。これは、わざとらしい演出よりも、リアルな日常を見せ合うことに価値を見出す世代の象徴と言えます。

象徴的なのが、使い捨てフィルムカメラ「写ルンです」の再ブームです。スマホなら何千枚でも撮れて、いくらでも撮り直せて、フィルターで目を大きくすることすらできる。それなのに、若い世代はわざわざ、24枚や27枚しか撮れず、撮り直しも加工もできないフィルムカメラに価値を見出している。我々の世代にとっては修学旅行の必需品でしかなかった代物が、いまや「加工できないからこそ特別」という、まったく逆の意味を帯びて復活している。便利さの極みまで行き着いた末に、あえて不便を選ぶ。ここに、いまの空気が凝縮されています。

集中力を奪うのに23分、判断力はIQ15ポイント低下する

では、このアテンション・デトックスの動きは、若者だけの話なのか。そうではありません。我々40代、50代も含めて、スマートフォンとSNSに注意を奪われ続けた結果、深刻な「注意の貧困」に陥っていることにも気づく必要があります。

カリフォルニア大学アーバイン校のグロリア・マーク教授の有名な研究結果ですが、仕事中に一度メールやスマートフォンで集中を遮断されると、元の集中力に戻るまでに平均23分15秒かかります。しかも、元の作業に戻るまでに通常2つの別の作業を挟むと言われています。

これがどれほど深刻か、計算してみてください。1日に10回、通知やメッセージで集中を遮断されたとします。それだけで230分、つまり約4時間が、集中状態に戻すための時間として失われるのです。我々は仕事をしているつもりで、実際には集中を取り戻すためだけに膨大な時間を浪費している。

さらに恐ろしいのは、判断力への影響です。キングスカレッジ・ロンドン大学のグレン・ウィルソン教授の研究では、マルチタスクを行っている際のIQは、一時的に10ポイント低下し、男性では最大15ポイントも低下することが報告されています。これは、徹夜明けや大麻使用時と同程度の認知能力の低下に相当します。シャブ中と同じくらい判断能力が低下するというのですからね、マジでヤバい。

わかりやすく言えば、スマートフォンを片手に「ながら」で会議に出ている上司は、徹夜明けでヘロヘロの新人と、判断能力という点では大差ない。本人は「俺はマルチタスクができる」と思い込んでいるかもしれませんが、実態は酒を一杯ひっかけて会議に出ているのと変わらないわけです。そして、これは他人事ではありません。自分自身も、何か重要な判断をしようとする時にスマートフォンを手元に置いていれば、同じように脳が酔っ払っている。私が会議や打ち合わせでスマホを伏せて置くようにしているのは、性格がいいからではなく、自分の判断力を信用していないからです。

そしてもう一つ、関係性への影響があります。MITのシェリー・タークル教授の研究によれば、家族や友人との会話中にスマートフォンがテーブルに置かれているだけで、会話の深さと共感性は下がるそうです

タークル教授は、子どもが10歳になるまでに一緒に食事ができる回数は、全て一緒に食べたとしても約5,000回しかないと指摘しています。そのうち何回を、テーブルに置いたスマホのせいで上の空にしていいのか。子どもが話しかけているのに「ちょっと待って」と画面を見続ける、あの瞬間が何回まで許されるのか。改めて数字で突きつけられると、これはなかなか背筋が寒くなります。残機は無限にあるつもりでいて、実は5,000回しかない。しかもその大半を、すでに使い終えている人も多いはずです。

耳が痛いですね。

時間も健康も削られている、スマホ依存の実態

集中力、判断力、関係性。この3つに加えて、時間と健康も削られています。

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