「ダークエルフの骨董屋(アンティーク)」第一話「雷の水晶」
<あらすじ>
「裏通りにひっそりと佇む、日が沈んでいる間でしか営業しない骨董屋『下限の月停』。美人だが、性格がアレなダークエルフの店長。そして、置いてある商品はどれも胡散臭いものばかり。人を操ることのできる魔笛とか、他人の考えていることが聴こえる法螺貝、絶対に灯りが消えないランタンなどなど……」
ダークエルフのマレーネが経営する骨董屋『下限の月停』。願いを叶えるためにやってきた、自称勇者のルイス、元踊り子のリイナ、犯罪組織の幹部ロッベ、彼らはマレーネの店で購入した商品によって幸せになるのか? それとも不幸になるのか?
<第一話>
○ドルムント王国・全景
高い城壁に囲まれた中世洋風な王国。
中央には高くそびえる城。
城を取り囲むように城下町が栄えている。
○ドルムント王国城下町・広場
市民でごった返す活気がある城下町。
戦士や魔法使いといった様々な職業の人たち。
エルフやドワーフといった亜人の姿も見られる。
噴水前にボロボロの服の職業自称勇者のルイス(16)が立っている。
金髪のツンツン頭のルイス。
ルイス「うぉおお! ここが華の都、ドルムントかー!?」
ルイス、辺りをキョロキョロと見回す。
ルイス「すげえ! やっぱり、うちの田舎の村と違って、人が多い!!」
小柄なドラゴンを捕らえたパーティーが通り過ぎる。
ルイス「おおっ!? ドラゴン!! 生まれて初めて本物をみたぞ!」
パーティーの中に屈強な装備で身を固めた戦士たちが目に入る。
ルイス「俺も早くドラゴンを仕留めて、一旗揚げてえぇ! まずは武器屋
だ!!」
ルイス武器屋へと向かう。
○武器屋・店内
武器屋に入るルイス。
壁にはロングソード、グレートソード、メイスやウォーハンマーなどの協
力な武器が壁に飾られている。
ルイス、バスタードソードが目に入る。
ルイス「これが竜殺しの剣“バスタードソード”か!? でけえ!!」
値札を見る。
ルイス「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん…1億5千万ネルツ!? 豪邸
が建てられる金額だよー」
ルイス諦め、他の武器を探す。
鋼の剣、バトルアックス、モーニングスター。
ルイス「どれもこれも高すぎて買えねえ……」
武器屋の店長「おい、そこの坊主。冷やかしで来ているんだったら、さっさ
と出ていきな!」
ルイス「3万ネルツの予算で買える武器ないかな?」
武器屋の店長、指を差す。
視線の先には『特別セール』と書かれた、大量の売れ残りのブロンズソー
ドが雑に置かれている。
○武器屋・表
ルイス、店から出てくる。
ルイス「結局、こんなものしか買えなかった……」
ルイスのブロンズソードは錆びだらけで、刃もボロボロ。
ルイス「まあ、お金が貯まったら新しい武器を買えばいいや。次はギルドで
仕事を探そう」
ルイス、ギルドへ向かう。
○ギルド・内
受付で登録をしているルイス。
受付嬢「職業は何っすかぁ?」
ルイス「ゆ、勇者っす」
受付嬢「武器は?」
ルイス「これです」
ルイス、錆びだらけのブロンズソードを受付嬢に見せる。
受付嬢「魔法使える?」
ルイス「使えないっす」
受付嬢「じゃあ、『初心者』クラスすねぇ」
ルイス「はあ……。仕事あります?」
受付嬢「あるよ。たくさん」
ルイス「本当ですか!?」
受付嬢、仕事の募集が書かれた紙をルイスに差し出す。
○ドルムント王国・周辺の森(日替わり)
こん棒で襲ってくる全身緑色で身長が低い3匹のゴブリン。
ゴブリン「ギョェエエエエエ!!」
ルイス、刃がボロボロのブロンズソードをブンブン振り回し、ゴブリンを
追い払う。
ドルムントから他の町へと輸送する荷馬車を守っている。
ルイス、溜息をつく。
ルイス「俺がやりたかった仕事はこんなんじゃなかったんだけどなあ……」
ゴブリン、荷馬車を諦め、逃げて去っていく。
ルイスの隣では、バトルハンマーでゴブリン殴り倒す、戦士のアントン
(32)。
アントン「お前、この仕事初めてか?」
ルイス「そうです」
アントン「よくやったな。お前、スジあるよ」
ルイス、喜ぶ。
ルイス「本当すか?」
ルイスの目にゴブリンを次々とグレートソードで斬る剣士リッケ(19)が
目に入る。
ルイス「すげえ! グレートソードだ!!」
アントン「借金して購入したと言ってたなあ」
ルイス「ふうん……」
リッケ、グレートソードを鞘におさめる。
ルイス「なあ? いつも仕事はこんなの?」
アントン「まあ、ここら辺はゴブリンが多いかなあ……。たまに、トロルや
ワーウルフも出てくるが。そいつら相手だとブロンズソードだとキツイ
ぞ」
ルイス「ゴブリンでもキツイっすよ……」
アントン「あとな。たまにグリーンドラゴンがここの森で眠っている。間違
ってもここらで大きな音をたてるなよ。グリーンドラゴンが起きちまう」
ルイス、ビビる。
ルイス「グリーンドラゴン!?」
アントン「あと、グリーンドラゴンがピカピカ光るものを集める癖があるん
んだ。だから、金貨はちゃんと袋に入れて、ここで出すなよ。寄ってきや
がるから」
ルイス「金貨なんて全然持ってないですよ……。もし、グリーンドラゴンに
出くわしたら、どうすればいいんですか?」
アントン「後ろを振り返らないで走って逃げろ。うちらじゃとても太刀打ち
できない」
ルイス「わかりました」
アントン「それよりもどうだ? 今日、仕事の後」
アントン、酒を飲むジェスチャー。
ルイス「いいですね」
○ドルムント王国・周辺の平原(日替わり)
ドルムントへ輸送する荷馬車を守るルイス。
ブロンズソードをブンブン回し、ゴブリンを撃退する。
○ドルムント王国・周辺の山道(日替わり)
ドルムントから輸送する荷馬車を守るルイス。
ブロンズソードをブンブン回し、ゴブリンを撃退する。
○ドルムント王国・周辺の川にかかる橋(日替わり)
ドルムントへ輸送する荷馬車を守るルイス。
ブロンズソードをブンブン回し、ゴブリンを撃退する。
○安宿屋・個室
汚くて狭い部屋。
ベッドの上のルイス、頭を抱えている。
ルイス「全然、お金が貯まらねえ!!」
ベッドの上には少量の銅貨。
ルイス「何で? どうして? 毎日、毎日、汗だくになりながらゴブリンと
戦っているのに……。こんなペースじゃいくら仕事しても鋼の剣も買えや
しない」
ルイス「あっ!?」
ルイス、打ち上げ後の暴飲暴食を頭に思い浮かべる。
ルイス「あれだな……」
○ジャンの酒場・店内(夜)
客でいっぱいの店内。
仕事の打ち上げでアントンたちとテーブルを囲むルイス。
他のメンバーが骨付き肉や酒なのに対して、ルイスは水とパンのみ。
アントン「ガハハ! それで水とパンだけなのか?」
ルイス「仕方ないだろ……。節約しないといけないんだから……」
ルイス、パンを貪る。
騎士のクロス(27)が骨付き肉をかぶりつき、
クロス「肉食えよ。俺たちは身体が資本だ。パンだけじゃ、剣もふれなくな
るぞ」
ルイス「何か、金が儲かる副業とかないすかね? 金銀財宝が眠るダンジョ
ン巡りとか?」
武道家のラアム、黙々とビールを飲んでいる。
ルイス「そうだ!? 王家の墓とかどうですか? あそこ昔の王様の金の王
冠とかプラチナの杖とか、王家にまつわる財宝を一緒に埋葬されているん
でしょ?」
アントンたち顔を見合わせてゲラゲラと笑う。
ルイス「えっ!? 何かおかしいこと言った? 俺……」
アントン「お前、出身どこだ?」
ルイス「ブ、ブランデブルグ出身なんですけど……」
クロス、失笑し、
クロス「何だ、ど田舎じゃねえか」
ラアム「金の王冠みたいな価値のあるシロモノはとっくに墓泥棒から盗まれ
ているよ」
ルイス「でも、この間、先代の王が亡くなったばかりでしょ。一緒に財宝
を埋葬したんじゃないの?」
アントン「あのな。魔族との戦争が300年続いて、50年前に黒死病が流行。
5年前にはウェイザー川の氾濫による大洪水があっただろ? ぶっちゃ
け、ここの王国、金ないんだわ」
クロス「あまりにも金欠で、先代の王のときには、鉄くずと一緒に埋葬され
たんだぞ」
ラアム「今、王家の墓なんて行ってもあるのは、骨と化した墓場泥棒か、ブ
クブクと太ったドブネズミくらいだぞ」
ルイス「そうなんですか……」
アントン「そんなにワリのいい仕事が欲しければ、魔法を覚えろよ」
ルイス「魔法学校に行ったんですけど、門前払いくらいましたよ」
クロス「金持ちのボンボンか強力なコネでもない限り、魔法学校の入学なん
て無理だぜ」
ルイス「どうにかならないですかねえ?」
ラアム「魔法を使えなくても、魔法と同じ効果を持つアイテムを持っていれ
ば上級クラスの仕事もできるぞ」
アントン「だったら、『下弦の月停』ならあるんじゃね?」
クロス「いやあ……。あそこは……。確かにダークエルフの店長は美人だと思
うが、性格の方が……」
ラアム「それに、あそこに置いてある道具はどれも胡散臭いものばかり。人
を操ることのできる魔笛とか、他人の考えていることが聴こえる法螺貝、
絶対に明かりが消えないランタンとか」
ルイス「『下限の月停』? どこにあるんですか?」
アントンたちお互い顔を見合わせる。
○裏通り(夜)
入口が汚い食堂や呼び込みが立っているいかがわしい娼館が並ぶ。
メモを片手に歩くルイス。
アントンの声「裏通りに行くと、硬くてとても食えた代物じゃない二つ首ワ
ニのあばら肉のシチューを出すサイラスの食堂や、口に出すのも恥ずかし
くなるほどのいかがわしいホフマンの店が並んでいるだろ?」
さらに奥へと進むルイス。
ルイス、宿屋と棺桶屋の間にひっそりと佇む、小さな骨董屋を見つける。
アントンの声「さらに奥に行くと、ベッドがガタガタしていて、とても寝付
けたもんじゃないミッテルの安宿と、死にかけた棺桶職人のヴァルツの棺
桶屋の間に小さな骨董屋がある」
ルイス、店のドアに近づく。
ドアには下限の月の紋章。
ルイス「ドアに下限の月の紋章が刻んである、日が沈んでいる間でしか
営業しない店だ」
○骨董屋『下弦の月停』・店内(夜)
店の中に入るルイス。
埃っぽく狭い室内。
ルイス「お邪魔します……」
店内には誰にもいない様子。
棚の上には、さび付いた羅針盤、ランタン、双眼鏡、法螺貝、古びた壺な
どなど価値がとてもなさそうな骨董品が無造作に置かれてある。
ルイス「誰もいないのかな?」
ルイス、羅針盤を手に取る。
リティの声「おい、パクろうとするなよ」
ルイス、振り向くと妖精(ピクシー)のリティが空中に飛んでいる。
身長は15cmほど。13歳の少年のようなあどけない顔。
リティ「コソ泥が来たぞー! コソ泥が来たぞー!」
ルイス「ち、違うってー」
ドアが開き、ダークエルフの買い物帰りのマレーネが現れる。
高い身長。鋭くとがった耳。茶褐色の肌。腰まで届く、ウェーブがかかっ
た銀色の長い髪。
皮鎧にマント、腰にはレイピア。
20歳前後の美人に見える。
マレーネ「この泥棒!!」
マレーネ、レイピアを抜き、ルイスに向ける。
ルイス「待った!! 待った!! 違います!! 違います!!」
ルイス、汗だらけ。
× × ×
ルイスの誤解が解けたあと、
マレーネ「いやあ、すまなかったな。まさか、客だとは思わなかった」
ルイス「いえ……。大丈夫ですので……」
ルイス、辺りをキョロキョロと見渡し、
ルイス「ここに来れば、何でも揃うと聞いたんですが……」
マレーネ「ああ。ここは古今東西の秘宝が勢ぞろいだ。どういうのをお求め
なんだ」
ルイス「魔法と同等の効果を持つ道具とかないですかね?」
マレーナ「じゃあ、これならどうだ?」
マレーナ、棚から水晶を持ってくる。
マレーナ「雷の水晶だ」
ルイス、マレーナの水晶の欠片を覗き見る。
薄い青色の水晶の欠片の中に雷のような電気が放出されている。
ルイス「これは……。水晶の中に雷?」
マレーネ「ルーロ地方に、地場が雷属性の水晶鉱山がある」
○イメージ・ルーロ地方の雷属性の水晶鉱山
水晶の鉱山の内部。
中に協力な雷が走っている。
マレーネの声「雷をそのまま水晶に閉じ込めた希少な鉱物を地元のドワーフ
が採掘したものだ」
○元の骨董屋『下弦の月停』・店内(夜)
マレーネの説明が続く。
マレーネ「この水晶を天にかざすと最強レベルの雷属性魔法の効果があると
も言われているぞ」
ルイス「最強レベル……。でも、高いんじゃないですか?」
マレーネ「そうだなあ……20万ネルツと言いたいところだが、15万ネル
ツでどうだ?」
ルイス「15万? なんとか5万になりませんかね」
マレーネ「う~ん。厳しいなあ。うちらも慈善事業をやっているわけではな
いのでな」
ルイス「そうですか……。残念です」
ルイス、店を出る。
リティ「あいつ、金がないのかな?」
マレーネ「あらかた農家の三男坊で、口減らしのためにここに来たんだろ」
リティ「農家?」
マレーネ「ああ、腕の筋肉の付け方が剣を習っている連中とは明らかに違
う。あれは畑で鍬を耕した者の筋肉の付け方だ」
リティ「ふうん」
マレーネ「ここに来れば、剣の力だけで一財産稼げると思ったんだろう。実
態は金持ちに安く使い捨てられるとも知れずに……」
○ドルムント王国・周辺の森(日替わり)
死んだ目のルイスがやる気なさげにブロンズソードを振り回し、襲い掛か
るゴブリンを遠ざけている。
ルイス「あ~。こんなつまらないゴブリンをあと何匹倒さないといけないん
だろうか?」
ルイス、リッケの方を見る。
リッケ、グレートソードでゴブリンを次々と斬る。
ルイス「リッケさん、相変わらずすげえな……」
○ドルムント城下町・ギルド・表(夕)
仕事を終え、ギルドから報酬を貰うルイス。
ルイス、小袋の中身を見て、深くため息。
リッケが近づいてくる。
リッケ「よお、お金に困っているんだっけ?」
ルイス「いやあ……。そうなんですよ。何かいい仕事ないですかね?」
リッケ「なあ、実はあるんだよ……」
ルイス「本当ですか?」
リッケ、ルイスの耳元で声を小さくして話始める。
リッケ「ここだけの話。ギルドを通してない仕事なんだが、報酬は10万ネル
ツだ」
ルイス「えっ!? そんなにも!」
リッケ「あるんだよ~。誰にも言うなよ」
ルイス「わかりました。俺、口が固いんで」
リッケ「じゃあ、今度の木曜、あの森でな」
リッケ、場を去る。
○同・広場(夕)
笑顔のルイス。
ルイス「10万あれば、あの水晶も買える」
リティ「あっ、勇者(バカ)が歩いている」
買い物帰りのマレーネとリティに出くわす。
ルイス「ちょうどいいところに。あの水晶の10万ネルツ後払いでいいですか
ね?」
マレーネ「そうか。それならいいぞ。丁度いいところに。実はあの水晶を持
ち歩いていたところだ」
マレーネ、契約書を取り出す。
ルイス、契約書を読み始める
ルイス「えーと、『甲は乙に対して……』」
マレーネ「ああ、それは読まなくて大丈夫。ここにサインしてくれるだけで
OKだぞ」
ルイス「サインだけでいいんですね」
ルイス、羽根つき筆で契約書をサインする。
マレーネ「毎度あり」
ルイスの金貨と、マレーネの雷の水晶とを交換する。
○ドルムント王国・周辺の森(日替わり)
木陰に身を隠すルイスとリッケ。
リッケ、息をひそめている。
ルイス「こんな、ギルドを通さない仕事ってよくあるんすか?」
リッケ「黙ってろ……」
ルイス「すみません……」
リッケ、木陰から道を覗く
1台の馬車が通りかかる。
傭兵も2名、従えている。
ルイス「金持ち商人の引っ越しですかね?」
リッケ「行くぞ」
ルイス「へっ?」
リッケ、バンダナで顔の下半分を多い、グレートソードを鞘から抜いて、
馬車に襲い掛かる。
停まる馬車。
傭兵A「急襲だ!!」
傭兵B「夜盗か?」
リッケ、傭兵に反撃の間を与える間もなく、次々と斬りつける。
傭兵A「ぐわっ!?」
兵士B「ぐふっ……」
血を流し絶命する傭兵たち。
御者、土下座して、命乞いをしている。
御者「お願いします。妻と娘がいるんです……。命だけは……」
リッケ「うっせえんだよ」
リッケ、御者を一刀両断。
リッケの顔が返り血で赤く染まる。
血を流し絶命する御者。
その様子を木陰からただただ茫然として、眺めているだけのルイス。
リッケ「おい! 何をそこでぼうっと突っ立ているんだ?」
ルイス、足が震えている。
ルイス「金になる仕事って これのことですか……」
リッケ「そうだよ」
ルイス「こんなのただの野盗じゃないですか?」
リッケ「そうだよ」
ルイス「俺、こんなことやるためにここに来たわけじゃないですよ……」
リッケ「お前の事情なんて知るか」
リッケ、馬車の扉の前に立つ。
リッケ「おい、出ろ! 出なければ馬車に火をつけて、全員焼き殺すぞ」
馬車から肥満体型の豪商ブッフバルツ(40)とその妻(30)、娘(10)
息子(5)ら一家がぞろぞろと出てくる。
全員、良い身なり。
ブッフバルツ「お願いします。お命だけは勘弁してください」
ブッフバルツ、土下座。
リッケ「うるせえ!」
ブッフバルツ、恐怖で震えながら、宝石や高価な装飾品をリッツに差し出
す。
リッケ「最初からそうすればいいんだよ
リッケ、ブッフバルツから宝石を奪う。
ルイス、リッケの前に立つ。
ルイス「いい加減にしろよ。何でこんなことするんだ?」
リッケ「何でって? こうでもしねえと貧乏生まれの俺たちが金持ちなんて
なれねえからだろ」
ルイス「……」
リッケ「お前もわかるだろ? なんせギルドに行っても安くてキツイ仕事し
かねえからな」
リッケ、グレートソードを高くかざす。
リッケ「このグレートソードを買うために、借金してさ。ゴブリンを斬って
も、斬っても、金利だけしか返せなくて全然借金の額が減らなくてさ。
俺、何のために生きているのかわからなくなってきたわ」
ルイス「……」
リッケ「だから、一発逆転を狙ってさ。どうせ、こいつも裏で色々と悪いこ
としてんだろ?」
ブッフバルツ「そ、そんな悪いことなんて……」
リッケ、グレートソードをちらつかす。
リッケ「嘘つくな! 首をはねるぞ!」
ブッフバルツ「嘘です……。内務大臣に賄賂を贈ってました……」
リッケ、ブッフバルツを足蹴。
痛さでのたうち回るブッフバルツ。
リッケ、大笑い。
リッケ「ほら、見ろよ。どいつもこいつも悪いことやっているんだよ! 俺たちだけが責められるいわれはない!」
ルイス「でも、こんなのすぐに捕まって、ギロチンで首はねられるよ」
リッケ「逃げきりゃいいんだよ。どうせ、目撃者もいないし」
リッケ、グレートソードの刃をブッフバルツの首にあてる。
リッケ「そうだ。お前、こいつの首をはねろよ」
ルイス、リッケの顔をまじまじと見る。
ブッフバルツ「ひええええ……」
ブッフバルツ泣き出す。
リッケ、妻と子の方を値踏みする。
リッケ「嫁の方はまだまだ売り物になりそうだな。ガキどもはそういうのが
大好きな変態さん相手に高く売れるだろうな」
リッケ、気味の悪い笑み。
嫁、娘、息子、みんな泣き出す。
○点描
ルイスの子ども時代の回想。
ボロボロの小屋。
ルイスの父親から暴力を受けるルイス(7)。
ルイスの父親「おい! とっとと働けよ!」
× × ×
不毛な土地の畑。
鍬で耕す、ルイス。
× × ×
ボロボロの小屋。
兄弟たちとパンと水のみの食事を摂る、泥だらけのルイス。
○元のドルムント王国・周辺の森
ルイス、ブロンズソードを鞘から抜く。
ルイス「俺は……」
リッケ「さあ、やれよ。さっさとゴブリン狩りの貧乏暮らしからおさらばし
ようぜ」
ルイス「俺は、勇者なんだ!!」
ルイス、ブロンズソードでルイスを斬りかかる。
リッケ、グレートソードでルイスの攻撃を食い止める。
リッケ「何の真似だ?」
ルイス「例え、そこのオッサンが悪人だとしても、子どもたちは何の罪はな
いじゃないか」
リッケ「ふん、チキンな偽善者め!」
ルイスとリッケ、一進一退の剣の攻防。
ポキッとルイスのブロンズソードが根本から折れる。
ルイス「ブロンズソードが!?」
リッケ「所詮、ブロンズソードごときでグレートソードに勝てると思ったの
か?」
リッケ、勝利を確信し、ルイスを斬ろうと剣を振りかざす。
ルイス「これを使うしかないか……」
ルイス、雷の水晶を天に高く掲げる。
ピカッと巨大な雷が落ちたかと思う様な閃光。
ドォーン!!と巨大な雷が落ちたかと思う様な轟音。
リッケ「まさか、雷属性の魔法だと!?」
リッケ、身構える。
シ~ン。
しかし、何も起きない。
リッケ「えっ!?」
ルイス「あれ? 何で? どうして?」」
リッケ、高笑いしながら、
リッケ「死ねえ!!」
リッケ、剣を振りかざす。
ルイス「ここで死ぬのか? 俺は?」
ガサゴソと森の中から巨大な生物が蠢く音。
突然、体調5メートルほどのグリーンドラゴンが現れる。
たちまち、リッケを口で咥えるグリーンドラゴン。
ルイス、最初は驚くも一瞬で我に返る。
ルイス「今のうちです。走って逃げましょう!」
ルイス、ブッフバルツ一家、ドルムントの城下町に向かって全速力で走っ
て逃げる。
一方、リッケはグリーンドラゴンの口でもがいて抵抗している。
リッケ「は、離せ」
リッケ、グレートソードをブンブン振り回すも、傷一つつかない。
グリーンドラゴン、大きく口を開き、リッケをゴクリと一飲み。
リッケの最期の悲鳴がこだまする。
○ドルムント王国・城下町・広場(日替わり)
新品の鋼の鎧と兜を身にまとったルイス。
ルイス「いやあ、いいことをすると気分がいいな」
ルイス、片手に金貨袋。
ルイス「ブッフバルツさん、いい人だな。俺のことを『命の恩人だ』って、
あんなことしたにもかかわらず、こんなに謝礼金をくれるなんて」
ルイス、鞘から剣を抜き出す。
新品の鋼の剣だ。
ルイス「おかげで鋼の剣も買えたし」
ルイス、剣を高く掲げる。
ルイス「これで、モンスター狩って、狩って、狩りまくって、大金持ち
に……」
リティの声「あっ!? 勇者(バカ)がいるぞ!!」
ルイス、振り返るとマレーネとリティが立っている。
マレーネ「やあ、奇遇だなあ」
ルイス、頭に血が上る。
ルイス「ちょっと!? 酷いじゃないですか? 噓をついて」
マレーネ「嘘? 私がなにか嘘をついた?」
ルイス「どこが最強レベルの雷属性の魔法の効果があるんですか!?」
マレーネ「ああ。すまん。すまん。言い忘れてた。あれは最強レベルの雷属
性の光と音が出る水晶であったな。地元のドワーフの子どもはあれを玩具
として使うんだよな」
ルイス「玩具!?」
マレーネ「それよりも、水晶の残りの50万ネルツ。耳を揃えて払ってもらお
うか!」
ルイス「50万!? なんで、残りは10万ネルツでは……」
マレーネ「お前が払うと言ったんじゃないか」
マレーネ、ルイスのサイン付き契約書を広げる。
ルイス、契約書を読みだす。
ルイス「『なお、購入した商品についてはいかなる理由があっても返品でき
ぬものし、残りの代金は金利こみで50万ネルツを支払う』。50万ネル
ツ!?」
リティ「いやあ、でも、あんたも相手がマレーネで助かったよな。100万、
500万請求する悪徳業者がここら辺ごろごろあるからね」
マレーネ「ああ。私の店のモットーは『お客さまをニコニコ笑顔する』こと
だからな」
ルイス、呆れて声が出ない。
リティ「こいつ、新品の鋼の剣なんて持ってるぞ。これは結構高値で売れそ
うだね」
ルイス「やめて! また、ブロンズソードの暮らしに戻りたくない!」
鋼の剣を奪おうとするリティに抵抗するルイス。
その様子を見てほほ笑むマレーネ。
マレーネM「こいつ本当に勇者(バカ)だな」
○ドルムント王国・周辺の森(日替わり)
死んだ目でブロンズソードを振り回し、ゴブリンを撃退するルイス。
N「こうしてマレーネから鬼のような取り立てを受けたルイスは、翌日以降、ブロンズソードでゴブリンを狩る貧乏生活に戻ることになったのだ」
(第一話 完)
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