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「ダークエルフの骨董屋(アンティーク)」第三話「デザートカメレオンの透明丸薬」

<第三話>

○骨董屋『下弦の月停』・表(夜)

○同・店内(夜)
 客が来ずに暇そうにしているリティ。
 マレーネは読書中。
リティ「今日も暇だねえ……」
 ドアが開き、全身ローブのロッベ(45)が現れる。
 スキンヘッドで謎のオーラを出している。
リティ「いらっしゃい……」
 ロッベ、店内の骨董品を物色し、マレーネの前に立つ。
ロッベ「お前が店長か?」
マレーネ「そうだが……。何かお探しか?」
ロッベ「気配を完全に消せる道具はないのか?」
 マレーネ、ロッベの手の甲にヒュドラの入れ墨に気づく。
ロッベ「ないのか? ならばいい」
マレーネ「気配を消せるかどうかはわからないが、見えなくなる道具ならあ
 るぞ」
 マレーネ、棚から白の丸薬と赤の丸薬を取り出す。
マレーネ「デザートカメレオンの透明丸薬だ」
ロッベ「デザートカメレオンと言うと、あの姿を消すという……」
マレーネ「ほう、物知りだな。お前」

○イメージ・ゲネブ砂漠
 壮大な砂漠が広がる。
 全長2メートルほどのカメレオンが歩いている。
 次第に透明になり、見えなくなるカメレオン。
マレーネの声「ゲネブ砂漠に生息するデザートカメレオンは天敵から身を守
 るため、全身を透明化する性質を持つんだ」

○元の骨董屋『下弦の月停』・店内
 マレーネ、ロッベに説明を続ける。
マレーネ「デザートカメレオンは、血液中の透明になる色素を調整すること
 で姿を見えなくしたり、逆に姿を現わしたするんだ。この丸薬は透明にな
 る色素と、姿を現す色素を凝縮して丸薬にしたものだ」
マレーネ「この白の丸薬を飲めばたちまち姿が消え、この赤の丸薬を飲め
 ば、姿を現せるようになる」
ロッベ「時間制限はないのか?」
マレーネ「ない。逆に言うと赤の丸薬を飲まない限り、見えないままだ」
ロッベ「見えなくなるときに攻撃を受けたらどうなる?」
マレーネ「普通にダメージを受ける。ただ見えなくなっているだけだから
 な。あ、もちろん服は透明にならないから、真っ裸じゃないと意味がない
 ぞ」
ロッベ「裸にならないよいけないのか!?」
マレーネ「当たり前だろ? 何を驚いているんだ?」
ロッベ「……」
マレーネ「どうだ。買うか?」

○ジャンの酒場・店内(夜)
 飲んだくれでいっぱいの店内。
 カウンター席でビールを飲んでいるロッベ。
 ひょっろッとしたズーラ(39)がロッベに近づく。
 ガラガラヘビのような眼。
 手の甲にヒュドラの入れ墨。
ズーラ「いやあ、調子はどうだ? ロッベ」
ロッベ「最近、騎士団の監視が厳しくてな、商売あがったりだ……」
ズーラ「俺もだよ」

○骨董屋『下弦の月停』・店内(夜)
 リティ、マレーネから話を聞いて驚く。
リティ「『ヒュドラの首』の幹部!?」
マレーネ「ああ、間違いない。手の甲にヒュドラの入れ墨があったからな」リティ「そう言えば……」
マレーネ「犯罪組織『ヒュドラの首』。窃盗、誘拐、放火、要人暗殺、密
 輸、ヤバいクスリや娼館、ギャンブル、高利貸しなどなど、合法、非合法
 問わずありとあらゆるビジネスに手を染めている」
リティ「うげえ……」
マレーネ「『ヒュドラの首』が他の犯罪組織と大きく異なる特徴は9人の幹
 部による合議制で物事を決めていることだ」
リティ「そもそも、何でそんなやべえ組織を放置したままなのさ」
マレーネ「魔族との戦争での戦力として使えるからな。名前の由来は創設時
 のメンバー9人でヒュドラを仕留めた逸話からだ」
リティ「強いんだな」
マレーネ「昔は9人の幹部の多くは武闘派で占められていたんだがな。10年
 前に武闘派の幹部の一人が内相を誘拐、殺人をした事件をきっかけに、武
 闘派幹部への締め付けが厳しくなったのだよ。最近では高利貸や詐欺など
 で儲けを重視する経済派の勢力が逆転されている」
リティ「へえ」
マレーネ「まあ、その密告も経済派の仕業だという噂だがな」
リティ「そんなやべえ奴が何でこの店に何で来てるんだ?」
マレーネ「近いうちに何か動きがあるんじゃないか。武闘派と経済派の戦争
 とか。大荒れに荒れるぞ」
 マレーネ、不敵な笑み。
リティ「マレーネ、何だか楽しそう」

○ジャンの酒場・店内(夜)
 小声で相談しあうロッベとズーラ。
ズーラ「経済派の連中がデカい面をするようになってから、ろくなことがな
 い。『血の祝祭日事件』で組織に貢献したロッベがこんな扱いだもんな
 あ……」
ロッベ「今度の日曜、ハーマンを殺る」
ズーラ「!?」
ロッベ「経済派も武闘派も関係ねえ。そんなことよりもあいつは10年前、シ
 ュミットを売った」
 ズーラ、ロッベの肩をポンと叩く。
ズーラ「そうかあ……。遂に決断したな。俺も協力するよ」
 ロッベ、ビールをぐいっと飲み干す。

○ロッベの隠れ家・寝室
 姿見の前に立つローブを羽織ったままのロッベ。
 ロッベ、白い丸薬を飲む。
 ロッベの姿が消え去り、ローブのみが宙に浮いているように見える。
ロッベ「本当に見えなくなったぞ」

○ドルムント王国城下町・裏通り
 透明となったロッベが歩く。
ロッベ「しかし、裸で外を歩くのというのは変な気分だな」
 通行人とぶつかるロッベ。
 通行人、辺りを見回すもロッベは透明なので見えない。
通行人「あれ? おかしいなあ?」
ロッベ「透明だから気づかないんだな……」

○『ヒュドラの首』アジト・前
 部下を率いて外へ出るズーラ。
 透明化しているロッベがズーラの後を追う。

○ドルムント王国城下町・歓楽街
 部下を率いてどんどん進むズーラ。
 透明化したロッベが追う。
ロッベ「どこへ向かうんだ?」
 カジノに入るズーラたち。
ロッベ「あれは、ハーマンの経営するカジノ?」

○カジノ・内
 カードゲームやルーレットに興じる客たち。
 ズーラ、事務所に向かって歩く。

○同・事務所
 ドアが開き、中に入るズーラたち。
 小太りのハーマンが出迎える。
 手の甲にはヒュドラの入れ墨。
ハーマン「よお、兄弟」
 ハーマンとズーラ、軽くハグ。
 お互い、ソファーに向かい合いながら座る。
ズーラ「かなり儲けているようだな」
ハーマン「言うほどじゃねえよ。で、話とは?」
ズーラ「今度の日曜、ロッベがお前を殺りに行く。俺が連れて行くから、二
 人でロッベを殺ろう」
 ハーマン、ゲラゲラと笑い、
ハーマン「あいつ、まさか、俺とズーラが繋がっているとは思いもしていな
 いんだろうな」
ズーラ「今の時代、あいつのような暴力だけの単細胞ではやっていけん。金
 儲けの才能もないとな」
ハーマン「10年前を思い出すな」
ズーマ「ああ。あの時、最期のシュミットの間抜け顔。思い出しただけでも
 笑えるわ」
 ズーラ、ニヤニヤと笑う。

○ロッベの隠れ家・寝室
 赤の丸薬を飲むロッベ。
 途端に裸のロッベが現れる。
ロッベ「ズーマ、あいつハーマンと裏で繋がっていたとはな」
 怒りのロッベ、拳を固く握りながら、
ロッベ「あの卑劣なゲス野郎め~! 絶対に生かしてはやらん!」

○ドルムント王国城下町・広場(日替わり)
 日曜市が開催され、多くの人でごった返している。
 子分を連れアジトに向かって歩くズーラ。

○「ヒュドラの首」アジト・幹部室
 部屋に入るズーラ。
ズーラ「入るぞ。ロッベ」
 誰もいない部屋。
ズーラ「何だ、誰もいないのか? 誰かいた気配がしたんだがな……」
 透明化したロッベがナイフでズーラの心臓を一突き。
ズーラ「ぐははっ!?」
 ズーラの返り血がロッベにかかる。
 絶命するズーラ。
 血が宙に浮いているように見える。
子分A「おい、誰かいるぞ!」
 ロッベ「しまった! 返り血が……」
 ロッベ、部屋から逃げようとする。
 子分が剣を抜いて切りつける。
 背中を深く切りつける。
ロッベ「くっ」
子分B「おい! みんな追え!」
 部屋から出る返り血を追う子分たち。

○ドルムント王国城下町・大通り
 返り血を浴びた透明化したロッベが逃げる。
 ロッベ、次々と通行人とぶつかる。
ロッベ「くそっ! どけよっ! 邪魔だ!」
 ロッベ、振り返る。
 子分たちが追いかける。
ロッベ「背中が痛い……。傷が深いのか……」
 ロッベ、背中の傷跡に手を当て、血を確認する。
 しかし、ロッベの血も透明で見えない。
ロッベ「血も透明なのか……」
 足がふらつき始める、ロッベ。
ロッベ「身体が寒い……。意識が朦朧としてきた……」
 ふらふらとなったロッべ、馬車専用の道路に飛び出す。
 ロッベに向かってスピードを出して向かう馬車。
 馬車に轢かれるロッベ。
 倒れたまま。
 停車する馬車。
 御者が降りて、あたりを見まわす。
御者「おかしいな? 何か轢いた感触があったのだが?」
ロッベ「た、助けて……」
御者「気のせいだったか」
 御者、馬車に乗り、再発進。
ロッベ「い、行かないでくれ……」
 追ってきた子分たちが到着。
 子分、辺りを見回し。
子分A「どこに行った?」
子分B「俺は向こうを探す! お前はあっちを探せ!」
 子分二手に別れて探しに向かう。
 買い物帰りのマレーネとリティが歩いてくる。
リティ「なあ、もし、透明化したまま死んだらどうなるんだ?」
マレーネ「そりゃあ、透明化したままだ」
リティ「ふうん……」
マレーネ「言い忘れていたけど、あいつはかなりのやり手だし、そんなこと
 にならんだろ」
ロッベ「いま、死にかけなんだよ」
 マレーネとリティ、ロッベの事故現場を通り過ぎる。
ロッベ「誰か助けてくれ……」
 通行人、誰一人として反応しない。
    ×    ×    ×
 1週間後の事故現場。
 透明化したままのロッベの死体の腐敗が進んでいる。
 死臭を放ち、蝿や野良犬たちが集まる。
通行人A「変な臭いがする……」
通行人B「何もないところに野良犬やカラスが集まってくる」
 傍を歩くマレーネ。
マレーネ「見えないことで不都合なことがあるんだな」
 ムニュウとロッベの死体を踏んだ音。
マレーネ「あっ!? 何か踏んだ 」
(第三話 完)



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