ホワイトとブラックの間にある“グレーゾーン”を、自分で設計する
頑張るのがクセになっていませんか?
自分で自分に負荷をかけ、なんとか持ちこたえていたある日、私はバセドウ病を発症しました。
その後、ブルガダ症候群まで。
限界は突然やってくるのではなく、静かに近づいてくる。
だからこそ、“どこまでなら頑張れるか”を、ほんの少しだけ意識しておくこと。
キャリアを育てるというのは、自分の取扱説明書を見つける旅なのかもしれません。
明日は我が身の“燃え尽き”
──だから、ちょっとだけ自分を知っておこう
「ホワイトな職場」が正義で、「ブラックな働き方」は悪。
そういう価値観が、ここ10年くらいでずいぶん広がりました。
もちろん、違法な長時間労働やパワハラのある環境は論外です。
でもその一方で、「少しの負荷」すら避けたまま社会に出てしまうと、いざ働き始めたとき、耐性がなくて心がポキッと折れてしまう。
そんなケースも、実はとても増えています。
最近の若い世代が弱いとか、そういう話ではありません。
むしろ、学校も社会も「優しさ重視」にシフトしたからこそ、“無理をする経験”そのものが減っているのです。
私自身も、若い頃に「自分の限界」を見誤った経験があります。
医師になりたての頃、慣れない現場でがむしゃらに働いていました。
朝も夜も関係なく、責任を背負って、失敗できないプレッシャーのなかで走り続けていたら、ある日、息切れや動悸が止まらなくなったんです。
最初は「ちょっと疲れてるだけだろう」と思っていたのですが、検査の結果、バセドウ病だと診断されました。
身体は正直でした。
気力でカバーしていたつもりでも、ちゃんとSOSを出していたのだと、後になって気づきました。
その後、さらに無理を重ねてしまい、最終的にはブルガダ症候群まで発症することになります。
命にかかわる不整脈の病気です。
「大丈夫なふり」は、ほんとうに危うい橋の上に立っているのだと、心底思い知らされました。
自分の“限界”って、案外わからないものです。
だからこそ、「どこまでが頑張りどきで、どこからが無理なのか」を意識的に知っていくことが、とても大切なんです。
最近では「セルフブラック」という言葉も聞かれるようになりました。
これは、自分で自分にある程度の負荷をかけて頑張ること。
資格の勉強をしたり、副業に挑戦したり、短期間ガッと働いてみたり。
やらされるのではなく、自分で選んだ負荷は、ときに成長のきっかけにもなります。
ただし、それを無制限にやってしまうと、燃え尽きてしまう。
だからこそ、「どうやって負荷をかけるか」を、あらかじめ設計することが必要なんです。
・どれくらいの期間なら頑張れるか
・どんな支えがあれば安心か
・「このラインを超えたら一度立ち止まろう」と決めておくこと
そうやってコントロールされた“高負荷”は、キャリアの筋トレになります。
人によって、ストレスに対する耐性や反応の仕方には差があります。
心理学の「ビッグファイブ」と呼ばれる性格指標の中には、「神経症傾向」という項目があります。
これは、不安や緊張を感じやすかったり、ストレスを強く受けたりしやすいかどうかを示す指標です。
私も、この傾向が強いタイプです。
新しい環境に飛び込むのが苦手で、予定変更があるだけで内心そわそわしてしまう。
昔は、人前で話すことや、大きな責任を持つことが怖くてたまらなかった時期もありました。
でも、だからこそ、「自分はどんなときに疲れやすいのか」「何がストレスになるのか」を知っておくことが、日々を安定させるうえでとても役に立っています。
キャリアを育てていくうえで、いちばん大切なのは「自分を知ること」だと思います。
ホワイトな職場に身を置くことは安心につながります。
けれど、そこが“ぬるま湯”になって、自分の成長の機会を奪ってしまうこともあります。
一方で、がんばりすぎてしまう人ほど、「そろそろ無理かも」というサインを見逃しがちです。
だからこそ、自分にとっての「ちょうどいい負荷」と「守ってくれる支え」の両方を意識していくことが大切なんです。
「私は大丈夫」と思っていた人が、ある日突然バーンアウトしてしまう。
そんな場面を、医療の現場でも、仲間との仕事のなかでも、何度も見てきました。
そして、そのたびに思うのは——
無理をしない勇気こそが、自分を長く動かし続ける力なんだということです。
人生は長距離走。
スピードを上げる時期もあれば、立ち止まって深呼吸する時間もあっていい。
「今、自分はどんな状態か」
「どれくらいならがんばれるか」
「誰に相談できそうか」
そんなふうに、自分を少しずつ“使いこなす”感覚を持っていけたら、
もっとラクに、もっと自分らしく、前に進んでいける気がしています。
