見出し画像

〈読書会レポート〉第70回週末の夜の読書会:村田沙耶香『コンビニ人間』感想・レビュー

(レポートの性質上ネタバレを含みます)

このレポートは2026年5月17日に開催した読書会の記録です

初の試みで、同日の朝と夜に同じ課題本で開催してみることにしました。

特に夜の会は定員越えの超満員!2次会も大いに盛り上がり、また開催してほしいというお言葉をたくさんいただき、当会への愛を感じました♪

これまで私がやってきたことは間違っていなかったと、しみじみと味わいながらお開きに。

当会は延べ約600人の方にご参加いただき、2019年8月から7年にわたってプラトーブックスさんをお借りして開催してまいりました。

怪しいと敬遠されがちな読書会を、少しでも身近におしゃれに感じていただけるよう、何よりも楽しんでいただけるように心がけてまいりました。

様々な意見が飛び交う熱気と集中力のすごいこと!

人間ってほんと、おしゃべりが好きなんだなーと、微笑ましく思いながらふと窓の外を見やると、夜の帳が降り始めていたのでした。




参加者のご感想

  • グレーな人(ASD)

  • 適応が目的

  • 個性を大切に世代

  • 共感した!

  • 好きな作品じゃない

  • 普通じゃない人たちの異常さ

  • 枠にはまっていない人へのマウント

  • ”有能”無遅刻無欠勤

  • いかに他人は人を評価するか?

  • 多様性とは?

  • 合格点の上での多様性

  • 正常化させられる

  • 「実存は本質に先立つ」

  • マニュアルに従うことで普通になる

  • 解像度が下がると理解される

  • 細胞

  • 生命体の一部、自然現象を描いている

  • ハッピーエンドなのか?バッドエンドなのか?

  • 家族はバッドエンド

朝の会①
朝の会②
夜の会①
夜の会②
夜の会③


思いのほかコンビニのアルバイト経験をしている人が多く、経験者でも大満足のリアリティが備わっている作品との意見もありました。

まさかのリアリズム的な読み方にも驚きました。

とにもかくにも様々解釈が可能な名作で、時間を過ぎても止まらないほど盛り上がりました。



思わず、仕事人間だった父と主人公を重ねてしまった!

ここからは私の解釈を中心に書いていきます。

主人公の恵子は白羽と同棲を始めました。
そして”ちゃんとした仕事”に就くために、18年間勤めたコンビニを辞めることになります。

私は二週間前のことを思いだした。「辞めさせてください」と言ったのに、店長はとてもうれしそうだった。
「あ、ついに⁉ 白羽さんが男を見せたってこと⁉」
バイトが辞めていくのは困る、人手不足なんだから次を紹介して辞めてほしいいつも言っていた店長なのに、嬉しそうだった。いや、もう店長なんて人間はどこにもいないのかもしれない。目の前にいるのは人間のオスで、自分と同じ置物が繁殖することを望んでいる。

文春文庫 P141


と、店長はもはや野次馬根性丸出しで、”店長としての正しい振る舞い”はどこへやら、恵子と白羽の関係を露骨に聞いてくる始末です。

そんなこんなで、コンビニ店員でなくなった恵子は、生活リズムが崩れて閉じこもるようになり、自分が存在する意義を見出せなくなっていきます。

今までなら、明日の為に寝ていなければいけない時間だ。コンビニのために身体を整えようと思うとすぐ寝ることができたのに、今の私は何のために眠ればいいのかすら分からなかった。

文春文庫 P145


自分の積極的な意思ではなく、もっと安定した職に就くべきだ、という外からの圧力に屈してコンビニ店員を辞めた恵子。

その結果、存在意義を無くし抜け殻になった恵子の様子から、私は実の父親を重ねてしまいました。

要するに、年齢という理由で不本意に退職させられた世のお父さんたちが、家にひきこもる問題と、恵子の問題は、根っこは同じではなかろうかと。

もちろん、恵子と私の父親の状況は同じではありません。ただ「社会との接点を失ったとき、人は何を支えに生きるのか」という点で、私は重なりを感じました。

すべてを仕事に捧げてきた恵子や私の父親は、退職とともに社会と断絶され、急激な環境変化への戸惑いから生きる意味すら失わせてしまったのです。


そんな私の解釈を読書会で披露したところ、参加者さんから、
「それは大変! 今すぐお父さんに趣味を見つけてあげないと!!」
と”アドバイス”いただきました(笑)。

ですから仕事がない時間ですら、仕事のために身体を整えているような人間に対して、他者はその人の生き方を変えることはできるのでしょうか?

そもそも、誰かを「救う」とはどういうことなのでしょうか?

趣味を見つけてあげればいいのでしょうか?
別の、普通の仕事を見つけてあげればいいのでしょうか?



細胞・宇宙を感じるスケールの大きさ

さて、この物語は時折、人間界を逸脱して大きな宇宙の視点から観察しているような壮大な感覚に突き落とされます。

上から見たときには皆同じレイヤーに属しているように見えても、視点を移して横からみたとき、実は異なる階層であることが発覚し、だからコミュニケーションが噛み合わないのだとすると、全体的に合点がいきます。

参加者さんからも、「恵子さんはお釈迦様のようだ」とか、「白羽さんは恵子さんに寄り添ってあげる天使としての存在なんだ」といった意見も聞かれました。

一方で、「細胞」というワードも作品内に散りばめられています。

人間の営みをコンビニという巨大な生命体として捉えるならば、恵子はその細胞の一部として取り込まれることで成り立っている、ともいえます

私たちはつい「人間」を中心に物語を見てしまいますが、村田沙耶香さんは、人間社会そのものを一つの生命活動のように描いているのではないでしょうか。

それは宇宙の生命活動の一部でもあるのです。

そう考えると、「変わっている」とされる恵子の振る舞いも、彼女が組み込まれている世界の中では、とても自然な営みなのかもしれません。



必要なのは理解者ではなく、同じ世界を生きる人

ところで、この話は結局、恵子がコンビニ店員に戻っていくところで幕が引かれます。

だれよりも純粋にコンビニ店員として全うすることが、自分のあるべき姿だと信じる恵子。

これについて、ハッピーエンドかバッドエンドか質問してみましたところ、面白い意見が出てきました。

それは、恵子が本当に幸せになるには、恵子と同じ「コンビニ店長」が現れることだ、といった意見です。
これには大いに頷きました。

もし恵子が、同じ世界のルールを共有できる人を見つけたとき、初めて彼女は生き生きと生を全うすることができるのでしょう。

同じ情熱、テンションで純粋にコンビニの一部、いやそれ以上の存在が恵子の前に現れたとき、恵子は救われるのだと思います。

でもこれは、組織勤めの会社人間にとって、理解できる話なのではないでしょうか。なぜなら、組織は同じ世界のルールを共有している集団だからです。

そして、ふと自分の父親のことを考えました。
会社人間だった父親を救うにはどうしたらいいのか?と。
やはりこれまで通り生き甲斐だった”会社”に戻る以外ハッピーエンドは訪れないのかもしれないなと、考え込んでしまいました。



(2026年5月17日日曜日開催)

朝の会
夜の会


********

【本を読む→人と出会う】

場所は変わりますが、これまで培った空気はそのままに、これからも本を通じた対話の場を続けていきます。

文学を片手にワイガヤで一緒におしゃべりしませんか?

参加資格は課題本の読了のみ!
文学の素養は一切必要ありません^^

ご参加希望の方は、専用フォームより最新の開催内容をご確認の上お申し込みください。

【申し込みはこちら↓↓】

※キャンセルポリシー
キャンセル料金は発生しませんが、必ずメールにて 週末の夜の読書会 までご連絡をお願いします!!



【問い合わせ・キャンセルなどの連絡先↓】
~企画運営:週末の夜の読書会~
mail  shuumatuno46@gmail.com
公式X @shuumatuno46
公式Instagram @shuumatuno46



★当会SNSをフォローして記事の更新通知を受け取るようにすると、
読書会開催日などの確認がしやすくなります。
どうぞよろしくお願いします♪


**********


【第70回課題本】



【週末の夜の読書会とは?】
当日の流れや参加ルールについて
気になる方はこちらをご覧ください↓↓↓

#読書会
#週末の夜の読書会
#プラトーブックス
#読書コミュニティ
#読書記録
#読書会
#コンビニ人間
#村田沙耶香
#芥川賞
#文学


いいなと思ったら応援しよう!

yanagi 文学は人生を変える!色々な気付きを与えてくれる貴重な玉手箱☆自分の一部に取り入れれば、肉となり骨となり支えてくれるものです。そんな文学という世界をもっと気軽に親しんでもらおうと、読書会を開催しています。ご賛同いただけるようでしたら、ぜひサポートをお願いします!

この記事が参加している募集