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『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』 読書共有【第93弾】

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はじめに

今回はアダム・グラント『THINK AGAIN  発想を変える、思い込みを手放す』(楠木健訳、三笠書房、2022年)からの共有です。

本書のテーマは「考え直す、学びほぐす(知識をリセットし、学び直す)」能力についてであり、これは「変化の激しい時代を生きるために、考えること・学ぶこと以上に貴重な認知スキル」であるとされています。つまり、「既存の考え方を新たな観点から見つめ直すことがいかに大事であるか、それを伝えるのが本書の目的」です。

日常において学習の大切さは常々説かれるところですが、意外と見落とされがちなのがそうした学習内容を「THINK AGAIN」(考え直す)ことにより、「メンタル・フレキシビリティ(思考柔軟性)」を保持する姿勢です。

こうした「THINK AGAIN」をめぐって本書では様々な観点から議論が展開されていますが、その中でも今回共有したいのは「過ちから学べる組織」のつくり方についてです。私たちが属している各々の組織について振り返る上でも貴重な思考材料を提供してくれることでしょう。


学びの文化を形成する心理的安全性

「過ちから学べる組織」づくりにおいても、本書のテーマである「考え直す、学びほぐす(知識をリセットし、学び直す)」能力が欠かせません。

ここで大切なのは、過ちを犯さない組織づくりではなく、過ちから学べる組織づくりだという点です。人間である以上、個人レベルでも組織レベルでも過ちは不可避であり、そうした数々の過ちの上に成功が成り立っていると言えます。

もちろん、避けられる過ちは回避するに越したことはないでしょうし、同じような過ちは繰り返されるべきではないでしょう。ただ、「覆水盆に返らず」という言葉もあるように、一度してしまったことや起きたことは取り消しがきかない事実を考えると、いつでもそこから再びスタートして「考え直す、学びほぐす(知識をリセットし、学び直す)」ことが大切になります。

こうしたことを組織レベルで考える際には、「心理的安全性」が欠かせない要素になります。著者によれば、「心理的安全性を醸成するのは、人が互いを尊敬し信頼し、オープンでいられる環境」で、「そのような環境下では、人々は報復を恐れることなく懸念や意見を述べることができ」るのであり、「それが学びの文化になる」とされています。

「過ちから学べる組織」になるためには、上記のような「心理的安全性」を大前提とした「学びの文化」が何としてでも必要です。幸いにも、著者が指摘している通り、「ここ数年で、心理的安全性は多くのビジネスシーンで語られるようになり、企業のリーダーたちはその有意性を理解するようになった」と言えます。

一方で、日本においてはまだまだ心理的安全性は浸透し切っていないとも思われます。おそらく氷山の一角でしかない、ニュースなどで報道されている事件だけを見ても、そう感じざるを得ないことがたびたびあるからです。

心理的安全性を理解するにあたっては、それが脅かされる環境がどういうものかを知っておくことも大切であるように見えます。そこで、以下では心理的安全性が脅かされる環境についても触れておくことにします。


心理的安全性が脅かされる環境

心理的安全性を脅かす環境について、著者は次のような極めて示唆に富んだ指摘をしています。

「成果重視の風土では、成果に最も重点が置かれるため、心理的安全性が欠如することが多い。他者が失敗や過ちを咎められるのを見て、力量を発揮することを躊躇し、自分の立場を守ろうと必死になる。自分の言動を制限することを覚え、口を閉ざし、疑問や懸念の声を発しない」

このように見れば、成果重視に力点が置かれた場合には容易に心理的安全性が脆くなってしまう可能性が考えられます。成果重視が極端な職場だと、ミスすることは致命的であるがゆえにミスの隠蔽に繋がりやすく、結果的にそれが取り返しのつかないミスにまで発展してしまうようなケースです。

また、たとえ成果重視とまでは言えない環境下でも、心理的安全性の欠如からは多くの問題が生じる危険性があります。過去にニュースとなった大事件の背景には、こうした心理的安全性の問題が隠されていることも多いと言えます。

現に、航空、原子力、石油パイプラインといった多くの分野で発生した歴史的な大事故において、心理的安全性の欠如が背景要因として指摘されています。例えばチェルノブイリ原発事故(1986年)やボーイング737 MAX墜落事故(2018年・2019年)、さらに米国サンペドロ湾パイプライン事故(2021年)といった事例は、心理的安全性が欠落すると命に関わる重大事故につながり得ることを明確に示しています。

問題の大小を問わず、心理的安全性の欠如は現代においても重要なテーマの一つとなっていることは疑い得ないでしょう。また、成果重視で競争を主眼とする組織の在り方の限界もが浮き彫りになってきていると思われます。


自分を改善しようとする意欲や向上心が大切

恐らくどの企業も、企業であるからにはそれ相応の成果を重視する一方で、成果重視の風土と心理的安全性の確保との両立に苦心しているように思われます。こうした背景の中、著者は心理的安全性の向上について非常に興味深い実験例を紹介しています。

その実験例によると、ある団体のリーダーである「彼ら自身がフィードバックを受けた時の経験や、自分の将来の目標について部下に語ってもらった。彼らが建設的な批判から学び得たこと、そして彼らの自己改善の努力について、率直に話すように」との助言があった。

こうして「リーダーたちは自分が完璧でないと認めることで、批判を受け入れる寛容さや、新たなフィードバックを歓迎する姿勢を示した。誰にでも欠点や弱さがある。これが当たり前だと思える環境をつくったことで、自分たちの奮闘に関してオープンに話せるチームがつくられていった」。

以上を総括すれば、リーダーは「自分の有能さを誇示するよりも、自分を改善しようとする意欲や向上心が大切」で、「このマインドセットが組織内に浸透すれば、人々は率直に、勇気を持って意見を述べるようになるだろう」というのが著者の結論です。

このように、まずはリーダーが率先して「自分を改善しようとする意欲や向上心」を持ち、周囲に対してオープンに接することが心理的安全性の醸成に必要なのです。他人に求める前に、まずは自分から与えるという主体的な精神がここに見て取られ、また与える人が与えられるという成功哲学の観点も見出すことができるでしょう。


職場の心理的安全性~特にパーソナルジムをめぐって

この読書共有にも、心理的安全性について考える上で少しでも寄与するところがあればと願っています。今振り返ってみると、そもそもこの読書共有自体が心理的安全性という土壌から生まれていると言えます。

読書共有スタートの経緯については下記リンクをご参照いただきたいのですが、私の自発性を尊重してくださった歴代の上司たちにおいても、心理的安全性を推進する傾向が顕著であったように思います。

この点、私が属している会社においては全体として心理的安全性の配慮がなされていると感じられ、それは店舗内でのスタッフ間といった個別的なレベルから、従業員アンケートや全従業員面談、全スタッフ研修といった全体的なレベルまで、様々な段階でのフォローがなされているように思われます。

また、心理的安全性はセッションやカウンセリング等におけるお客様との信頼関係構築の際にも重要な要素であり、もっと広い視点で見れば、人間関係全般において不可欠な要素と言ってもいいかもしれません。

本書で述べられている通り、心理的安全性を確保するには「人が互いを尊敬し信頼し、オープンでいられる環境」が必要です。ここでは「人々は報復を恐れることなく懸念や意見を述べること」ができ、過ちからも学習するという「学びの文化」があります。

こうした環境をスタッフ間のみならずお客様との間にも整えていくことが、パーソナルジムにおいても必要であると思われます。私のテーマが「ボディメイクを通した心身の健康、幸福、自己実現」である以上、独りよがりであってはならず、スタッフやお客様との協力関係が何としてでも大切です。

自分自身のアイデアに固執することなく、常に他のスタッフやお客様のアイデアにも開かれた態度がパーソナルトレーナーにも必要です。心理的安全性のもとであれば真に充実したコミュニケーションも可能でしょうし、また素晴らしいアイデアが息の根を止められることなく生かされる可能性も高まることでしょう。

今の私自身があるのも、多くのお客様やスタッフから忌憚のない意見を受け取ってきたからであり、また読書を通じて自分にはない思考法や体験談などを自分のものとしてきたからです。

心理的安全性という自由な空気がなければ、おそらく私はあまりの息苦しさに悶え窒息していたことでしょう。

また、心理的安全性という安全基地がなければ、おそらく私は自分を危険にさらすような冒険をすることもなく、成長し続けることもなかったでしょう。

本書で述べられていたように、これからの時代は「自分の有能さを誇示するよりも、自分を改善しようとする意欲や向上心が大切」になってくると言えます。「自分の有能さを誇示する」競争社会ではなく、互いに協力し合うことによる共創社会の実現が今後ますます重要になってくると考えられます。


おわりに

今回も最後までお読みいただきまして誠にありがとうございます。
日々少しずつ閲覧数やリアクション数、フォロワー数も増えてきて嬉しい限りです。今後も最低週1回の更新を目指して頑張ってまいります。

あえて本の要約といったことはメインとせず、私なりの観点から面白いと思った箇所の共有という限定的な内容にしております。それが少しでも皆様の記憶に残り、日々の読書体験の深まりや具体的な行動・実践に繋がるのであれば幸いでございます。

今後とも宜しくお願い致します。


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