『19番目のカルテ』で想い出す、若き日の前衛舞踊家(ネタバレ:ほぼ無し)
長く生きていると、
「オレはこのヒトが**しているところを見たことがあるぜ!」
というような自慢?がいくつかあります。
一昨日、松潤主演の日曜劇場『19番目のカルテ』を観ていて、松潤演じる徳重医師が師と仰ぐ赤池と共に海岸を歩くシーンがありました。そこで、白髪の老医師・赤池が大きな手ぶりで踊るようなポーズを演じたのです。
「おお! さすが、前衛舞踏家!」
思わず声が出ました。

映画やテレビドラマへの出演も多い俳優さんだけれど、かつての『ダンサー』の片鱗を見る機会はめったにありません。
このヒト、田中泯さん(現在80歳!)を初めて見たのは私が19歳の時、上京1年目の大学秋の学園祭でした。
キャンパス時計台前の広場に軽い人だかりがあり、近くに行くと、そこには奇妙な人影!がうごめいていました。
それは『ほぼ全裸』の男性で、全身を単色(茶色だったか、グレイだったか……そんな感じ)に塗り、頭髪はもちろん、腋毛も陰毛も ── 全ての体毛がどうやら剃られており、そしてペニスのみ真っ白な包帯が巻かれていました(おそらくはその陰にあるタマタマにも…)。その、なんとも不気味な人影!は、スローモーション動画のように、ゆったりと体を動かしていたのです。
『ゆったり』というのは、例えばかなりの時間をかけて『ブリッジ』を行い、またゆっくりとその『ブリッジ』から起き上がる、といったようなもので、『体幹』が相当強くなければできないパフォーマンスでした。
『軽い人だかり』と表現しましたが、決して人気を集めているわけではなく、ただ通りすがりの学生が好奇心からしばらく眺めて立ち去る、といった程度のイベントでした。いや、それが『イベント』なのかどうかも確とはわからず、ゲリラ的な飛び入りパフォーマンスなのかもしれない、と思ったものです。
今なら誰かがスマホで撮った動画をネットに上げるかもしれませんね ── そしたら、警察が駆けつけてわいせつ物陳列罪か何かで事情聴取されるかもしれない。
私もしばらく見ていましたが、何せダンス(という言葉さえ思いつかないほど)といっても動作があまりに緩慢で面白い見世物ではなく、その場を離れて友人バンドのライブ会場に移動しました。
『前衛舞踏家・田中泯』という名を憶えているのは、その場でビラのようなものを配っていた支持者だかがいたのでしょう、おそらく。
Wikipedia でこの人について改めて調べてみました:
1974年より従来のダンスと呼ばれるもの、またはダンス芸術界そのものに反発し、独自のダンスを開始する。個性を表現するような全身の体毛、髪の毛や眉毛に至るまでの全てを剃り落とし、ペニスには包帯を巻いて、体を土色に着色し、ほぼ裸体に近い状態で、劇場、ライブハウス、美術展覧会場、そして、即存の設えられた場所だけでなく、日常的な場所、または野外などの、ありとあらゆる場所で自身の信じるダンスとしての「ハイパーダンス」を展開した。
そうか、『ハイパーダンス』って言うんだ!
半世紀前に時計台の前でこのダンス?を一緒に観た同居人もこの時のシーンは憶えていました。
「なんか…不気味だったよね……」
80歳になっても大活躍のこのヒト、あの『体幹』の強さが支えているんだろうな……
── 梵天丸も、かくありたい!
