すぐそこにある《逮捕》(SS;1,600文字)
「え、ボクも? 警察まで……? 名前はユウタですが……『出資法』違反の共犯? 高利を謳って広く出資を募っていた……から……?」
果たしてどうなる???
「ちょっと待ってよ! ホントに警察官なの? ……ほら、本物の警察から、こんなチラシやポスターがたくさん出回ってるよ!」

https://www.police.pref.osaka.lg.jp/ochikakunokeisatsusho/keisatsushobetsujoho/31/1/15852.html

https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/241218/09.html

「カツアゲのお兄さんも、お兄さんに融資しようと集まってくれたみなさんも、このお巡りさんがホンモノだって無防備に信じるのは危険だよ! まずは疑ってかからないと!」
おいこら、いきなり『カツアゲ』に切り替えるんじゃねえよ! 第一、なんで坊主、そんなチラシ、何枚も持ち歩いてるんだ? ……でもこのお巡りさん、ちゃんと制服着てるぜ。あ、警察手帳も出して見せたぞ。
「チッチッチッ、平和に暮らす市民を脅してカツアゲしてるわりには甘いね、お兄さん! こんな制服も精巧に偽造した警察手帳も、いくらでもネットで買える時代なんだよ!」
へえ……そうなの? あ、いや、その……いちいち『カツアゲ』って言うの、やめてくれないかな……。それに、警察詐欺って、電話かけてくるんじゃないの? こんな風に……
「最近は詐欺電話が警戒されるようになってきたじゃない、だから作戦を変えつつあるんだよ!」
そうかな……確かにこのお巡りさん……の格好してるヤツ、なんだかひょろひょろしていて強そうじゃないなあ……闇バイトで雇われた学生かもしれんなあ……
「そもそも、本物の警察官って、こんな簡単に警察手帳出して見せたりしないよ……テレビドラマじゃないんだから……まず間違いなくこのヒト、詐欺グループのニセ警官だね。『逮捕』をチラつかせて、刑務所行きたくなければ入金が必要だ、とか言うんだよ」
そうか……とんでもないヤツだな!
「……カツアゲのお兄さん、『私人逮捕』って知ってる?」
── なんだそれ?
「刑事訴訟法213条で『現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕できる』と規定されてるんだよ。現行犯に限っては、民間人でも犯人を逮捕することができるんだ」
あ、それ、動画で見たことあるぜ! 普通のオッサンたちが痴漢を現行犯逮捕してた!
「そうそう……この場合、このヒト、ニセモノ警官になりすましてこちらを騙そうとしてるわけだから……」
まさに、現行犯だな! よし……逮捕する! おとなしくしろ!
「あ! ……なんて単純な……」
いてててて……あれ、けっこう強いじゃねえか……え、公務執行妨害で逮捕? あ、手錠? これもオモチャだろ? ……じゃない……みてえだな……いてててて……ってことは、モノホンの警官……か……?
「うーん、こんなに簡単に引っかかるとは! 良かったね、お巡りさん。……え! ボクも公務執行妨害をそそのかした『教唆犯』になるって? 刑法61条?」
いてててて……そりゃそうだろう! この坊主が『私人逮捕』しろってけしかけたんじゃねえか! オレより罪が深いはずだぞ!
「冗談じゃないよ、お巡りさん! カツアゲは未遂だから面倒な取り調べが必要だったけど、公務執行妨害なら間違いなく現行犯でしょっぴれるだろうと全面協力したんじゃないか! むしろ、『感謝状』もらえるんじゃないの? そうでしょ! どう考えても署長表彰モノでしょう!」
(……ああ、危なかった……)
