新人ライターや編集者に教えている「“想定外”のアクシデントも“想定内”にする」
今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。
かなり前になりますが、シュッパン前夜のYouTubeチャンネルでゲストを招いての撮影を行ったとき、ゲストの方が急に「このままでは撮影できない」と訴えられたことがありました。
他者である我々からすると「気にするほどのことでもないのに……」という感じの理由だったんですが、当人としては重要なことだったのでしょう。
この日のために準備もしてきたし、関係者が一堂に集まれるようスケジュールも限られているし、「このまま中止になったら……さて、困ったな」と。
こういう状況、編集者なら結構な「あるある」だと思います。私自身、若手の時代に同じような状況に直面したら、オタオタとかなり焦りまくっていたに違いありません。
しかし、その場にいたシュッパン前夜メンバーである編集者の皆さんは、百戦錬磨のベテランばかり。
誰ひとり眉ひとつ動かすことなく(実際は超笑顔でしたが)、ゲストの懸念材料を解消するための行動を、それぞれがとりはじめたのです。
「じゃあ、こうしましょうか?」
「これはこうしておきますね」
「では、私はこれをやっておきましょうか?」
その場で起きた「想定外」の出来事だったにもかかわらず、その場にいた全員がまるで「想定内」であるかのように、システマティックに連携していたのです。
単純にスゲ〜と思いました。
感嘆と同時に、「どれだけ想定外のトラブルを経験してきたんだろう?」 と、少々の憐憫すら覚えました(笑)。そうでなければ、この場面でこういう態度や行動はとれません。
彼らはここで焦ったり、狼狽えたりしても、どうしようもないことを経験上知っているのです。
「その場でできる対応を全力で実行し、それでダメならリスケするしかない」という“正解”を即座に選択し、感情の浮き沈みのようなある意味“余計なもの”は排除できてしまえているといえるでしょう。
これって、理屈からすると簡単なようで、実は結構難しいことなんじゃないかなと思います。
人間なので、どうしても感情に引きずられてしまいがちですから。
とはいえ、編集者にとってこの「想定外を想定内にしてしまう」能力や経験はとても重要なことだと思っています。
さまざまな職業があるなかで、特に編集者は、多様な業界でそれぞれ傑出した第一人者と仕事をする機会が多い職業です。しかも、制作プロセスにおいては一芸に秀でた優秀なクリエイターに囲まれて仕事をすることになります。
編集者である自分は平凡な小市民であるのに対し、周囲は突出した個性を持った才能たちばかり。
当然、小市民の常識を突き破るような局面やアクシデントに遭遇する確率が非常(異様)に高いわけです(笑)。
そうしたなかでいろいろな場数を踏んでいると、普通に考えて想定外と思えるようなことも、ほぼほぼ想定内の枠内に入ってくるもの。このような過程で身につくのは、「焦ってもしゃあない」ということです。結局、炎上した場を収められるのは、原因に対する適切な対処しかないと悟るのです。
なので、後進たちを指導しているときにもいろいろな問題が発生しますが、対処に迷うことはあっても、焦ったり、悲観したり、「感情的になって動揺するのは意味ないよ」と教えます。
たまに「なんで平然としていられるんですか?」と逆に問われたりすることもありましたが、しばらくすると「たしかにムダだな……」と身をもって理解してもらえることが多かったですね。
編集だけでなく、ライティングの仕事においても、「それ、先に言ってよ」的な書き直しを理不尽に指示されることってありますよね?
この場合も、怒りや反発の感情を抱いたところでなにも解決しません。
相手の要求の意図を探り、双方にとってなにが利益になるのかを冷静に見極めたうえで、適切に対応するしかありません。
しかも、このことは若手の皆さんも本当はすでに経験上知っています。でも、頭ではわかっていても……という感じでしょうか?
その気持ち、わかります。皆、若かりし頃はそうでしたから。でも、本当にその感情のブレが状況を悪化させるし、着地点は同じなのに超まわり道になるということもそっと頭の片隅で覚えておいてほしいですね。
「なにをやってもうまくいかない」ときも想定内
また、長くこの仕事を続けていれば、なにをやってもうまくいかない時期があるものです。
人間関係がうまくいかない(望んでいないのにトラブルになる)。
なかなか評価されないし、むしろ評価が下がる。
企画が通らない&本が売れない。
「これが、大殺界か……」という時期は誰にでもあります。そして、そういう時期は必ず抜けて、逆になにをやってもうまくいく時期というのもまたやってきます。
そのことを信じて、想定外の不幸も想定内として受け入れ、ひたむきに努力を続けていれば、必ず周囲の人も手を貸してくれるはず。そして、やがてハッピーになっていきます(でも、また落ちますけど、その繰り返し)。
編集者なんて悲喜こもごもですから、少々の想定外のことにも狼狽えず、楽しくやっていけばそれで万事うまくいくってわけです(笑)。
出版不況だからといって、編集者という役割からすれば、やることは同じ。できることを全力でやる=読者にとって価値ある本を作り続ける、これしかないですよね?……今回は自戒でした。
文/編プロのケーハク
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Twitterシュッパン前夜
