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「容赦ないドラマ」が好きだ!(第1回)

私は国内の連ドラが好きで毎日楽しく見ているのだが、「どのようなジャンルが好きか?」という問いに真剣に考えたことはなかった。
しかし今年の3月に西森路代『あらがうドラマ』を読んで、自分の好きなドラマにも一貫したテーマが潜んでいるのではないかと思うようになった。

書き終わってみると、取り上げたドラマたちは、今の現状を打破しようと「あらがっている」ドラマばかりになっていた

西森路代『あらがうドラマ』まえがきより

このまえがきに触発され、考えをめぐらせているとふと「容赦ない」という言葉が浮かんだ。

ドラマの楽しみは本当に人それぞれで
物語を楽しむ(非日常を楽しむ、スリリングな経験をする)
推しを楽しむ(推しこそすべて。物語よりは推しの一挙手一投足に注目)
映像を楽しむ(俳優や景色の”美”を堪能する)

色々あるとは思うが、私は明らかに物語を楽しみたい派で、かつ予定調和や勧善懲悪ではない作品が好きだなと改めて実感するにいたった(野木亜紀子や坂元裕二作品が好きと言ったらドラマファンには伝わるだろうか)

単純ではないうえ、救いが必ずしも用意されているわけではない容赦のなさ。でも、観た後に語らずにはいられない、誰かのために動きたいと思える作品はつまり「容赦のない作品」なのでは?と思った。そんななかで、思い当たった作品たちをこれからいくつか紹介していきたい。


①カーネーション

「あんたのずぶとさは毒や」

2011年10月〜2012年3月にかけて放送された朝の連続ドラマ小説。「朝ドラ史上最高傑作」と称される名作に、濱田マリ演じる安岡玉枝が"容赦ないキャラ"として登場する。

主人公の小原糸子(尾野真千子)は岸和田で生まれ育ち、幼い頃に出会ったミシンに感動してから洋裁の道を極め、自身で店を開業して繁盛するにまで至る。
そんな糸子の周りには強固な地域コミュニティが築かれており、髪結い店を営む「安岡のおばちゃん」との仲睦まじい描写が印象的だ。2人は親子同然の年齢差であるものの、相談に乗ったり乗られたりとフラットな関係が垣間見られる。
しかし、戦争を機に2人の関係は破綻を迎える。

NHKアーカイブより。左は安岡八重子(田丸麻紀)

安岡玉枝の次男・勘助(尾上寛之)は出征から帰還するものの「手も足も残ってるけどな。もっと…なくなったわ。心…。」と本人が語るように出征前と大きく様子が変わってしまう。それを見かねた糸子は元気づけようとかつて一目惚れしていたサエと会うよう取り計らうが、サエを見た途端、戦地での辛い思い出がフラッシュバックしその場から駆け出してしまう。その後河原で泣きわめいたり、実家の2階から飛び降り自殺を試みたりするなど正気を完全に失ってしまい、それを見た玉枝は余計なことをした糸子に激昂。大雨降る夜に、オハラ洋装店を訪ねる。

玉枝:糸ちゃんあんた勘助に何してくれたんや。
糸子:勘助がどないかしたんか?
玉枝:さっき2階から飛び降りようとしよったわ(勘助のもとに向かおうとすると糸子の腕を掴み)
玉枝:やめてくれ!糸ちゃん。あんた金輪際、勘助に会わんといてんか
糸子:何で…?
玉枝:あんなぁ糸ちゃん。世の中っちゅうのはな、み~んながあんたみたいに強いわけちゃんや。あんたみたいに勝ってばっかしおるわけちゃんや。みんなもっと弱いんや。もっと負けてんや。
うまいこといかんと悲しいて自分がみじめなんもわかってる。せやけど生きていかないけんさかい、どないかこないかやっとんねん。あんたにそんな気持ち分かるか?商売もうまいこといって、家族もみ~んな元気で。結構なこっちゃな。あんたにはな、なあんも分からへんわ!

どないか働きに出れるよになったのに。ここまでうちらがどんだけ神経すり減らしてきたか。あんたには想像もつけへんやろ。今の勘助にあんたのずぶとさは毒や!頼むさかい…もううちには近づかんといて。

カーネーション第55話

朝ドラヒロインは懸命に頑張れる何かを持っていて、夢に一直線で、底抜けの明るさと強さを兼ね備えているキャラが多い。
『あまちゃん』の天野アキ(能年玲奈)はみんなのアイドル的存在へと駆け上がるし、『あさが来た』の白岡あさ(波留)は持ち前の負けん気で日本を代表する実業家になる。

上述の玉枝の台詞は決して糸子だけでなく、「強さも明るさもあり、誰からも愛されて名を馳せる朝ドラヒロイン」というあまりにも大きいテーマへのカウンターとして機能していると思わずにはいられない。

単純な成長譚では終わらせないという容赦ない描写は、朝ドラ史上最高傑作と呼び声高い本作の骨格を成しているとも言える。

②MIU404

「手取り14万のミリオンダラー・ガール」

脚本家・野木亜紀子はいつも容赦ない。
『逃げるは恥だが役に立つ』で幸せな生活を送るみくり(新垣結衣)と平匡(星野源)には「やりがい」「愛情」というふんわりした価値観の歪さを自覚させることで2人の関係性を揺さぶるし、『アンナチュラル』では最愛の人の死の真相を解明するために中堂系(井浦新)を右へ左へ奔走させる。

2020年放送の『MIU404』もそうだ。
第4機動捜査隊の一員として職務あたる志摩一未(星野源)と伊吹藍(綾野剛)らは事件の早期収束に努めるが、間に合わないことだってある。

第4話「ミリオンダラー・ガール」では拳銃発砲の通報を皮切りに、会社員の青池透子(美村里江)が1億円を横領して逃亡を図っていることが判明する。物語中盤まで青池は1億円を奪った欲深い女として描かれるが、事件を追っていくなかで彼女の輪郭に変化が見える。

青池透子を熱演した美村里江(CINEMASより)

青池は裏カジノにハマってしまい、借金返済のために風俗や裏カジノ店で働くことになった過去が明かされる。さらに、勤め先の裏カジノ店が摘発されて起訴されてしまう(その後、執行猶予1年)
改心した彼女は真面目に働こうとするが、前科持ちの彼女はなかなか仕事にありつけず、やっとの思いで見つけた職場にもバックに暴力団がいることを後で知る。

献金をもらった政治家も、賄賂もらった役人も、起訴されないんだって。金持ちの世界どうなってんの。私なんて手取り14万円で働いてんのに草

MIU404第4話 青池透子のツイートより

「賭けてみます。今まで勝ったことないけど」と決心し、汚いお金をロンダリングして女子児童慈善団体「ガールズインターナショナル」に寄付することを決意。銃弾を浴びていた彼女は亡くなるが、1億円のルビーを身につけたうさぎの人形を航空便で運び出すことになんとか成功する。

この1話だけでも容赦なさがぎっしりだ。
まずは彼女の経歴だ。確かに、裏カジノにはまり借金を抱えた事実を全面擁護することは難しいが、その後彼女は慎ましく第2の人生を生きようと決心していた。その一方で「前科者」のレッテルはなかなか剥がれず、社会復帰に苦労する。
「起訴されない裏金議員」と「社会復帰できないいち市民」という構図はかなり鋭く厳しい。

また、結論も容赦ない。
彼女の不条理な死が覆ることはないし、懸命に届けた1億円の行方も正確にはわからない。もしかしたらどこかで差し止めされた可能性だってある。

では、この一連の流れは無駄で無意味だったのだろうか。私はそうとは思えない。
それは、この話を見て心動かされた視聴者の存在や青池と同じ世界線を生きていた志摩や伊吹の表情が何よりの証明となるだろう。


今回は『カーネーション』『MIU404』の2作品を取り上げたが、まだまだ容赦ない良作ドラマは溢れている。引き続き書き綴っていきたいと思う。

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