未来のとある内戦の日──Uber Eatsは両陣営に配達する
未来のとある内戦の日──Uber Eatsは両陣営に配達する
未来の歴史書には、革命の勃発と鎮圧、政府軍と革命軍の戦闘が克明に記されるだろう。だが、その頁にはきっと載らないだろう風景がある。
革命の日、Uber Eatsの配達員は街を走っていた。
銃声が響く朝、SNSには「Uberまだ動いてる?」という投稿が並ぶ。
政府軍の装甲車が封鎖した大通りを、青いバッグを背負ったバイクがすり抜けていく。アプリを開けば、「配達可能」の表示はまだ緑のままだ。
昼、若者たちの革命軍は、廃材でバリケードを積み上げながら言う。
「スタバ飲みたいな」
仲間がスマホを出し、迷いなくUberで注文する。数十分後、銃声の合間を縫ってカフェラテが届く。
政府軍の将校も同じ頃、基地のテントでピザを頼んでいる。
革命を潰そうとする彼らの机の上に置かれたのは、敵と同じUberの箱だ。
夕方には状況はさらにシュールになる。
政府軍の検問所では、革命軍の支配地域へ向かうUberのバッグに臨時の通行許可証が貼られ、「急いで行け」と兵士が言う。
バイクは銃撃戦の横をすり抜け、「今お届けに向かっています」 の通知がスマホに届く。
同じ通知が、政府庁舎の執務室にも、革命軍のアジトにも同時に鳴る。
夜になり、ニュースは言う。
「市街地で銃撃戦。死者多数」
だがアプリは何事もなかったように、「ご注文ありがとうございました」 と告げる。
Uberはどちらの側にも属さない。
政府軍にも革命軍にも、ただ淡々と寿司やピザやカフェラテを届ける。
配達員たちは命懸けで走りながらも、政治のことは何も語らない。
だがその無言の中立こそが、最も鮮やかな事実を示す。
内戦の日でも、人は腹が減る。Uberは止まらない。
そしてその光景は、いつか歴史に埋もれるだろう。
だがその日、銃声の合間に届いたコーヒーの香りを覚えている者が、きっとこう語る。
「あの革命の日、俺たちは戦っていた。でもUber Eatsが来た。」
Uber Eats は内戦の日でも──いや、内戦だからむしろ活発化するだろう。
政府軍も革命軍も同じアプリでピザを頼み、銃声の中を配達員が走る。
これが 未来の革命の日々 だ。
