【小説】『Dystopia 25』~楽園~Phase Ⅻ
Devil's Forest Letter
パメラは、第1コロニーへの偵察にマオリとナバホの三人で行った道中、遭遇した第2の兵士と出会ったことを、自分の手に巻いていた兵士が髪留めに使っていた「帯」を、改めて眺めていた。パメラの腕の中で息を引き取った男へのせめてもの手向けとして、持ち帰ってきていたのだった。
第2の男たちは、立派な兵士、戦士の証として髪を伸ばし、それを様々な物で束ねて象徴する習慣があり、それを誇りにしている。
何か自分にとって大事な物。例えば妻や大切な人の髪と編んだ紐や、肉親から貰った衣服がダメになった生地を使った布などを使用している。
そして今回、死んだ兵士はそういった布に手紙のような文字を書いて残していた。
親愛なるジェーンへ
最後まで君を幸せにしてあげられなくて、すまない。
例の秘密の櫓に、二人での思い出の数々を保管してある。他にそこには様々な嗜好品や貴重品も一緒に置いてある。今後の何か事態の時にでも有効的に使ってくれ。
君とのことがいつも心の支えになったからこそ、どんな辛い任務でも修行でも、耐えることが出来た。常に忘れることは無かったよ。
語り合ったこれからの人生や、夢、そして生活が送れなくなったけど、俺はどこに行こうが、君の幸せを願っている。後悔や、悲観に暮れないでくれ。それだと、俺も安心して天の先で安らかに眠れないだろ?
君は強い人だから、必ずいずれ、元気ないつもの笑顔でまたまたみんなを元気づけることだろう。その姿を、天に居る俺にも見せてくれ。そして、またいつか、俺が先に行くことになった遥か彼方の天空世界で、会いたいな。
その時こそ、また沢山の話を聞かせてくれ。それを楽しみに待っているから。
今まで、本当に、ありがとう・・・・・・
パメラはまた、男の最後の顔と最後のセリフ、自分のことではなくパメラたちをあの土壇場で気遣ってくれたことを思い出し、目に涙を浮かべる。
きっと本当にイイ人だったのだろう。そして、この恋人だと思われる人も、きっと幸せだったのだろうとこの文章から想定され、そしてその人の悲しみをも、想像してしまっていた。
パメラが第2を去ってからのこの数年間、第3コロニーのレイアたちがそうだったように、きっと少しは変化があったのかもしれない。そんなことを感じていた。
いつかは必ず、この帯に込められた手紙をこの女性に届けようと、心に誓う。
Tactics
ウェルバーが戻ってきたと思ったら、マオリ、ナバホ、そしてこの村の長老を共に引き連れてやってきた。
四人で話し合った上で、改めてここへやってきたようでパメラ達にもその内容を説明してくれる。そして長老からの話はこの場で揃ってマオリが通訳をしてくれながら話してくれた。
その内容はフォレスターに伝わる歴史とを加味した、現状の可能性とそしてその対策である。
Colonia内部の伝承とは、『その時代』で変動し新たに作られる。
数十年、もしくは数百年に一度、この世界は再製と再生される。
その兆しが、第1コロニーもしくは第8のようなProberが必ず現れる。
そして「内部抗争」や「フロア戦争」よりももっと大きな大戦争が繰り広げられ、抗う者が全て敗れた時、逃げる者、追う者、狂う者、様々な者がこのDevil's Forestにまでやって来る。
そしてどのような結果であれ、森の悪魔が大量に召喚されて全ての人類が滅ぼされる終末が訪れる。
Foresterの伝説的英雄たちはそれらの悲劇から戦い、逃げ延びた者の伝説が伝えられている。
各コロニー、センター教、フォレスター、Nomads達ですら、バラバラに暮らし争っている場合では無い。
ウェルバー達はそれらの伝令役として、そして全てを統一し団結できるようにしなければならない。でないと、この世界は終焉を迎える。
長老たちはフォレスター全員に伝えられた準備をしなければならない。
話が出来るマオリ、そしてフォレスター最強の戦士であるナバホを連れて、内部の重要人物たちにコネクトし可能な限りに人員を持って、プローバー群の殲滅を期待する。
長老の話はこのような趣旨と意図であった。
「・・・と、いう訳だ」
ウェルバーがみんなを見渡す。パメラとセーラは困惑した様子で不安げな表情をしている。
「そこで俺からの提案だが、パメラとセーラはこのマオリ、ナバホと共に第3コロニーへと侵入し、当時の有識者の誰か顔見知りにでもこの話を伝えることは出来ないだろうか・・・第2はライトがなんとかしてくれることを祈り、その後、四人は第4コロニーへ。俺はレイアが目覚め、何とか動ければNomads達を追うように第7から第6へと行こうと思う。ノーマッドの周回は少し前に第3に居たので、第1第8を飛ばして今頃は第7で定住しているはずなんだ。ノーマッド達の機動力があれば、その後はもっと早く伝令も可能になると思われる」
「・・・それで、いいんじゃない?」
その場の全員がここの誰でもない声に驚きを隠せなかった。
「私とウェルバーはまだ第3へは、当然行けないからね。それに、リサを時期代表候補として残してきた。当時の私の陣営はバラバラにならずに存在したままのはずだよ」
「「「レイア!!」様ぁ~!!!」」
ウェルバーとパメラ、セーラが勢いよくレイアの傍へ飛び移る。
「良かった、気が付いて」
「レイア様ぁ・・・・・・」
「大丈夫ですか?どこか痛む所や、何か必要な物とか・・・・・・」
「ありがとう、みんな・・・そうだね、水をくれないか」
セーラは飛びあがる様に水を取り手配する。それを勢いよく一気飲みをして満足げなレイアの顔を見ては、またみんなが少し微笑む。
「第6ではそろそろ、選挙が終わり上手く行ってればウェルバーの旧友が代表として君臨している可能性がある。そうなれば話も早い」
「そうだな」
ウェルバーはレイアの肩に腕を回し、レイアの身体を支えるように補助をした。
「セーラの出身は第4コロニー。そしてウェルバーが生業としていた木こり仲間が多く居る。それらの中で一番、懸念されるのは第3への侵入だがそれもウェルバーが作った例の洞窟を使えば侵入が可能だ。表層界の一番外側である治安が悪い地域は安易に抜けることが可能だろう」
レイアをよく知る三人は、流石、元女帝という感想を得た顔をしながら聴いていた。
「第7の現状がどうなっているのか。そこも今の私たちでは全くの未知数だが、第2とお同じく優先して対応してくれないと被害と悲劇は広がるだけとなるだろう。そして万が一、第7も落ちていると仮定するならば人数は少数精鋭、少しでも目立たない方がいい」
「確かに・・・・・・」
「でも、レイア様、お身体の方は・・・・・・」
「傷の方は・・・多分もう大丈夫だ。この薬草、大分といいやつを使っている。暴れ戦うことはまだ出来ないだろうが、歩くことぐらいは出来そうだ。後は・・・血を流し過ぎだ。肉を、何か食事をくれないか?」
少し朦朧とした目をレイアがする。
マオリがずっと長老とナバホに通訳をしてくれていたので、ナバホが直ぐに動いてくれた。
Departure
フォレスターの民たちはそれぞれの身支度をしてる。テントは畳まれ家畜は纏められ、通常半裸状態の人たちも、様々な催いの恰好をしている。それはただ荷物を減らすために着込んでいるだけである。
レイアの状態をもう少し加味し、ウェルバーは数日後に起つとして先にパメラ、セーラ、マオリ、ナバホの四人は集落を後にした。
レイアの言う通り、第3から第4へかけて事態の伝達と協力、そして可能であればマオリの言う「中の奥」という正体も着き止めてみようと、密やかな目標も出来た。
レイアにもその点を聞いてみるが、明確な心当たりは無かった。定期的な行方不明者は確かに少なくなかったが、他のコロニーへ勝手に移動する者や女性だけでなく他の「子供を狙うチーター」も第3では多く居たために、それらの特定は難しいという。
現在のフォレスターがそのように、そして第3のレイア達の存在が物語る様に、一括りにセンター教といってもそれすらも一枚岩では無い。
多くの争いはリベラル派と中央を牛耳るセンター教=フェミス党との亀裂が目立ってはいるものの、それぞれにまた内部で分岐してる部分があった。
一般的に表面化している範囲がセンター教だが、その中枢に『セントラル教』と当人たちだけが認識されているそこに多少の違いがあった。
部外者やその他の信念に基づく者からすれば、その微々たる違いすら分からずにまとめて「センター教」と総称していた。
フォレスターの中にもマオリのように言語をほぼ習得していて、中のことも知識として必要としている者もいれば、とことん自然との調和を重んじる者もいてるような、そういった微細な違いがどんどんと複雑化している。
今から四人が向かう第3コロニー。現在君臨しつつあるパメラ達の仲間であった「リサ」も、敬虔なセンター教ではあるがセントラル教とまでの認識があるのかどうか。そこは個人であれ組織的であれ、秘密裏にしなければならない事情というものも各所に散りばめられていることだろう。
パメラにとっては、その踏み入れてはいけないような雰囲気の中で、今は明確にしなければならないその使命と心境に、思わず気合が入っていた。その自信は、当然、レイアを筆頭に共に暮らし働いてきたリサとの絆を持てゐるからである。
「さぁ、ここよ」
パメラ特に何も無さそうな場所で、足元をキョロキョロと何かを探している。
「ここ、だね。みんな、手伝って」
セーラはここの構図は分かっていた為に、既に隠し穴の周辺の草木を避けていました。
「・・・マオリ、入れる?」
セーラのその一言で、全員が沈黙する。
「奥、広イカ?」
「んー・・・無理っぽいね」
「まぁ、元々、ここで二人は待っててもらう予定だから」
「どうするの?」
「一旦、私とセーラだけで『リサ』っていう仲間がいるんだけど、あの、レイア様が言っていた現第3の代表・・・かもしれない人ね。彼女と話してから、迎えに来るからそれまで待っててよ」
「大丈夫カ?」
「多分・・・ね」
「デハ、ワタシタチ、周辺、探ッテオク。ソノ『プローバー』ッテ奴、ドコマデキテルカ」
「気をつけてよ。完全に狂った人と、まだ知性を残した狡猾なのといるらしいから」
パメラ達とマオリは、一旦、それぞれの健闘を祈った。
Colony Ⅷ
残されたフォレスターの二人。マオリとナバホは木々を縫いながらコロニアの外部壁へと向かってみた。身体の大きなマオリは先陣を切るナバホの指示を待ちながら、問題がなければナバホの元へと駆け付けるという万全を期しながらの進行だが、そろそろだという頃には既に何らかの呻き声のような、喚き声が様々に聞こえて来ていた。そこからは草むらを匍匐前進し、視認が出来るまで近づいてみると、ぞろぞろと浮浪者のように歩き回るプローバーが点々とだが、数は数十人ほど壁に沿って歩いて行く。
何を求めて歩いているのか、目的は何なのか、マオリとナバホには分からなかった。
第8からのプローバーが何故、人を食うのかのその真意としてはやはり薬を求めてだった。
監獄エリア、第8コロニー。
囚人に埋め尽くされていくその世界でも、他の世界と同じく格差があり、それだけでなく搾取も普通ではない。
第2、第3などの捉えられた多くのチーターたち。酒や薬に溺れ多くの者にやっかみを受けた者。それぞれの反乱軍として立ち上がったが不運にも捕まった者。殺人者。そしてセンター教に敵視された者など、その種類は時と場合で様々だが、一番その中でも最下層となるのが「チーター」だった。
中でのなんらかの作業というものは無く、ただひたすらに目的もなく「生きる」それだけの世界。ただ閉じ込められ、生きる。死ぬことすら許されないその世界では、そもそもに気が狂うだけであった。
『悪魔に憑りつかれて「廃人」となり、もはや人ではなくなってしまう』
そんな世界で集められた者たちの間では、ある「遊び」が流行する。
イジメ、搾取、そして迫害、から「廃人」と化す。
彼らにとってはただの「暇つぶし」。そこに人権や個人の意見などは全く無い。その場、その時の「仮初の権力者」が楽しむ為の存在を作り上げていくのみである。
第8の中では男女に分けられる。
しかしこの「習慣」に男女に違いなんてのは無い。強いて言うならば、女囚側は比較的その「楽しみ方」は精神的な屈辱を与える事に重きを置き、男囚側は物理的にもその両方が課される。
新人には平等にその「洗礼」は必ず受ける。そこで耐えれる人間なのか、そして「仮初の権力者」たちにどう取り入るか。その狡猾さは今まで自由だったシャバとは比べ物にならない程のやり取りの毎日となる。
洗礼とは
公開自慰、糞尿入りの食事、同居人全員の性処理、気分での暴力、体内への異物混入、そして酒漬け、薬漬けなどなど、その種類は仮初の権力者の気紛れな発想と思い着きで何でもやらされる。
そこですでに薬への依存となり、その環境では逆に薬のお陰で正気を保つ唯一の方法となってしまう。
どこから入手するのかは誰にもわからないその『Z Salts』の混合成物も、もはや第8独自の調合がされていて巷の物とは比べ物にならないほどに粗悪品と化している。瞬間的な快楽の為だけを追求していくその薬は、ひたすらに禁断症状も誘発しヒエラルキーの打破が出来ない者は廃人化して、そこで初めてODとして死ぬことが許された。
しかしここで死ねた者は、まだ「強運」とも言える。
そこまでに至る前に、陳家なプライドがある者は自らの手首を噛み切ってなんとかするしか無い。それすらも、誰かにバレると速攻で治療され死なせてはくれない。生き地獄とは正にこのことである。
第8内部で完全に廃人となった者は、仮初の権力者たちからは飽きたオモチャのように放置される。
反応、反抗、苦痛、悲鳴、悲観、謝罪、嗚咽、後悔・・・そういったものが彼ら、彼女らの楽しみであり、それらを失ったただの「物」には興味は無い。
そんな最中、勝手に打たれた薬の禁断症状に苦しみだすが、得られ安らぐことも無い者たちが最後に取る手段として、他者を食ってその者の体内に流れている『Z Salts』求めて食うだけの存在が出来上がっていくのだった。
マオリとナバホの目の前を「彷徨っているプローバー」は、それだけを求めて人を探している。空腹だとかではなく、己の苦痛を取り除く目的で人を食うことしかないただの化け物として、生かされてしまった結果だった。
プローバー同士の共食いも、当然、廃人初期は行われてきた。しかし、それも本能だけで無意味だと理解して行く。
コロニーの外壁を沿って歩いているのも、その中に人が居ることを本能で理解していた。
Colony Ⅲ Returning home
パメラとセーラは真昼間ではあったものの、ウェルバーが掘って作った抜け穴を通り第3コロニー内部へと順風に侵入して行った。
抜け穴は第3の外壁近くにある誰も住まなくなった一画の床下に繋がっていて、夜でなくても人目には付かない。
第3内部の争いが一時終結した今では、特にそんな外壁の末端で居る者とすれば家族、一族を伴わない一人身の女性が呆けながら寝そべっているぐらいである。多くのその者たちは、我が子を失った喪失感に苛まれていて酒に溺れ、『Z Salts』の入手が容易であれば確実にプローバー化する予備軍でもある。
アルコールの類の流通は裏社会ルートで手に入れやすく、第3での「人生の捌け口」として流行っていた。
子を失うパターンとしては
1、男子しか生まれず第4へ追放。
2、誘拐、拉致の類。
3、女性チーターに狙われ殺される。
4、寿命。
男性への警戒心から、必然的に「タネ」の守備範囲が狭くなり『血が濃くなりがち』となる。そういった影響にて寿命が短く生まれてくるケースも多発していた。
そういった者が正気を失い、他者の女性や子供を狙う同性をターゲットにしたチーターが生まれ、そうでない者はただ「人で無くなる」だけだが、第1の状況を見てきた二人はその光景ですらまだ”マシ”かもと苦い思いでその光景を見ていた。
彼女たちにとっての「反乱」も、それなりの希望を持って行動したのかもしれない。しかし、統制を失ってしまえば忽ち第8のようになり得てしまう。人間の知性と本能のせめぎ合いは、意外と儚いものである。
レイアやウェルバーのように、表舞台で大立ち回りをする側ではない二人にとっての第3はただの地元を歩く者に過ぎず、外側周辺で目立つことは無い。二人は平然と目立たぬように中央へとひた歩くだけだった。
自分たちがホームとして暮らしていた屋敷前へとやってきた。ここからは当時の政制の確執がある者がいる可能性があり、流石に慎重を期すために屋敷内を出入りする者を見張る。懇意にしていた女中や秘書、世話役といった残された「中立派」の人間を待つことにした。
結構な時間を見張るが、あまり人の出入りが少ない。内戦が終結しているからといって、少し不自然な状況に困惑する。
「大会議でも開いているのかしら?」
「それならそれで、逆に世話役が”色んな意味”で動くじゃない」
「レイア様はリサが実権を握るように手配したと言っていたし、大丈夫だとは思うんだけどさぁ・・・・・・」
二人が不安に襲われていると、中から何人もの人がぞろぞろと出てきた。そこには二人の顔見知りが多く居て、その中には「リサ」の姿も見えた。パメラもセーラも喜び、声を掛けようとしたその時
「え?!」
パメラが驚きの声を上げながら、まるで飛び上がるかのように身体が伸びた。
「どうしたの?」
「・・・ち、『父』が、あそこに・・・・・・」
パメラが差すその先には、リサたち第3の女性陣の背後から数人の男性が屋敷から出て来ていた所だった。そしてその中央に居る髭を貯した人物を凝視している。
「え、パメラの?」
「う、うん・・・でも、なんでここに??」
「とりあえず・・・私たちも行ってみますか」
Reconciliation
パメラは動揺しながらも、目には薄っすらと涙を浮かべる。
セーラに手を取られ、色んな思いを馳せながら何故か二の足を踏ませていた。セーラがそれを引っ張って行く。
その心境はなんなのか、パメラ自身でも明確化は出来なかった。現状、第3へ第2の、しかも将軍が来ているという目の前の事実に驚愕しているのもあるが、子供の時の記憶。マイオスが仕事をしている時の真剣な眼差しで、邪魔をしてはいけないという子供心や、そしてライトが第2へと行ったこともどうなっているのかが不安と心配になったからもある。
「リサ!!」
セーラがお互いに視認しやすい距離まで近づくと、目標に向けて声を掛けた。途端に、第2からやってきたマイオスの側近が武器を構える。そして木々や小屋の影に隠れている第3の隠密勢が弓を引き出すキリキリといった撓り音が聴こえるような気がした。
「・・・セーラ!パメラ!!」
リサは二人を確認するや、右手を上げて隠れている者たちへ合図を送る。そしてマイオスに一言何かを伝えた。
マイオスも左右に構えている側近へ声をかけると、構えたその刃を鞘に納めた。
パメラがセーラの背後でモジモジしている中
「リサ、大変なの、第1がね・・・・・・」
セーラは怒涛の様に何があったかをリサに伝える。
マイオスとパメラは、お互いに何を語ることも無くリサとセーラの会話もそっちのけで見つめ合いながら、間をしっかりと置いてきつく抱き合った。
「・・・その話を、第2のマイオス将軍から聞いていた所だった」
「パメラ、お前、無事で良かった」
「そうだったんですね、それじゃ話は早いわ」
「お父様・・・・・・」
「第2第3の徹底した『停戦』を要求しに来られた。団結して第1の救出、そして第8プローバー対策を行う」
「ライト殿から話を聞いて、探していたんだぞ」
「私たちは現場で見てきました。その話は本当です」
「ライト・・・そうだ、ライト様は?!」
四人の話は混在し、それぞれに行き来してしまっている。
「・・・聞きたいことはみんな山ほどありそうだな。マイオス将軍、もしよろしければもう一度中へどうぞ。積もる話は沢山お有りでしょう」
「・・・ああ、ありがとう。そうさせて頂く。・・・お前たちは、先に第4へ行って話をしててくれか?」
マイオスは側近の二人にそう指示を出す。
「しかし、将軍、身の危険が・・・・・・」
二人の戦士が困惑する。
「・・・どうやら、もう大丈夫であろう?なぁ、第3の、それに、パメラよ」
「ああ、安心してくれ。将軍は私が責任を持って護衛と送迎しよう。今の第2代表勢では無くマイオス殿は特別だ。仲間の身内であり、家族だからな。それに、停戦の件の検討はここに、直ちに承諾する」
リサはその旨を第3側の側近に指示を促し、それぞれが退散していく。伝令の通達に行ったのだ。
二人の第2戦士たちも徐々に、肩の力を抜いていき警戒を解いていった。
Session
「・・・改めて、実際に行ったパメラ、セーラの証言を聞くと、事態の深刻さが伝わるわね・・・・・・」
リサはパメラたちが目撃してきた第1の現状を、生の声を聞いて神妙な面持ちで思案している。
「まぁ、正直に言えばだが、わしらは全力で第2の壁、タワーからのプローバーの侵入阻止、及び第1CSタワー内部に閉じ込められているであろう民の救出に力を入れたい。その間にお主ら第3からの攻撃、暗殺は控えて頂ければそれで充分なんじゃ」
「では、我々は外部に溢れ出た奴らを捕獲、討伐へ廻ろう」
「外は、森のフォレスター達との連携が最適だと思います」
「フォレスター?!」
リサが驚いた顔をしてパメラ達を見る。
「あ、そうそう、私たちフォレスターと仲良くなっちゃって」
パメラとセーラはここで外に置いてきたマオリとナバホを思い出す。
「厄介なのは『狂えるプローバー』たちじゃな。恐らく、前線には『彷徨えるプローバー』を捨て駒のように嗾け、漁夫の利のように後から手あたり次第、襲って来るだろう。何人かをコロニア周辺の森へと派遣し偵察させたが、数人の呆けた人物が放浪していて襲われた所を返り討ちにしてきたと報告を受けた。そこに意志的に動く奴らは居なかったそうだ」
「フォレスターのみんなも事態は把握していて、力を貸してくれるって。私たちをここまで護衛してくれたのもフォレスターの戦士なの」
「それは心強いな」
リサはまだ困惑していた。
「そういえばその、レイア様は?」
「ここを起つ際に、恐らくはリベラル派かフェミス党の暗部に狙われて、傷付き逃げている所をフォレスターたちに救われたの。今はまだフォレスターの集落で療養中よ」
「そう・・・なのか」
「・・・そういえば、お父様、ライト様は?」
「彼には別の大事な用事を托してある。聞いたぞ。ウェルバーという、ライトの兄はお前の恩人だそうだな」
「はい。憎きチーターを対峙して下さり、第1でも彼らが居ないと危なかったです」
「・・・そういえば、そのウェルバー殿は?是非わしもお礼がしたい」
「レイア様のお身体が問題無ければ、私たちとは逆に第7から第6ルートを回ってご一緒に伝来される予定です。今頃ならノーマッド達もそのどちらかに滞在している可能性があり、彼らとも接触しようと考えてまして」
「そうか。事が落ち着いてからでよいが、ウェルバー殿に是非、第2にも足を運んでくれるよう言っといてくれ。歓迎したい」
「・・・で、何故フォレスターが協力してくれたりレイア様を助けたりしてくれたんだ?」
パメラ達は事の経緯を間単に説明していった。
「・・・伝承、ねぇ」
「この世界の、遥か前、ということか?」
「分かりません・・・あ、あのねリサ。フォレスターは、人が行方不明になる事件がここコロニア内部にあるって言うんだけど、何か知らない?」
「行方不明?」
「うん・・・その、レイア様を助けてくれたフォレスターの大事な人が、突然消えたんですって。そういう事がよくあるらしく、森の外へと消える場合と同じぐらい、内部でも消える、と」
「・・・・・・」
リサだけでなく、マイオスも怪訝な顔をして場は凍り付く・・・・・・
lover's quarrel
パメラはマイオスと、リサはセーラと二組に分かれた。
リサたちはいつも三人が職場としていた司書室へとやってきて、それぞれの立場が変わりつつある故に、もう当時を懐かしむ心境だった。
「・・・という訳で、他の候補者もいない現状では私が仮の、代表代理として実質に立ち振る舞っている。フェミス党やリベラル派だった者たちも打つ手が無く・・・まぁ要は私の『今』の手腕を見定められているようなものだな」
「大変ねぇ・・・・・・」
「いや・・・何も無ければ過去などの『上げ足』を取られるだけで終わる可能性だってあったが、実際に・・・ごめん、不謹慎だが第1の影響にてこの問題に託けて逃げることも出来て、内心はホッとしている所もあるよ」
「ええっ・・・・・・」
「あ、いや、違うよ。ちゃんと真剣に対処するし、人の命が掛かっていることも分かってるよ。気持ちだけの話。政治的な戦略なんて、これほどみんなにとって無益なことは無いでしょ。マイオスさんがこうやってここまで来て共に力を合わせる。その環境で、もし、第2との和解にまで進展すれば・・・・・・」
「なるほどね。でも、それこそ『フェミス党』は黙ってはいないでしょうね」
「・・・ああ。しかし、このままずっと平行線って訳にもいかないでしょ?それに第4との・・・なんて、想像できる?」
「ふふっ、確かに、別に決別している訳じゃないにしても、第4との和解って想像が出来ない、っていうか、意味も無いしね」
「結局、内心はみんな分かっているんだよ。自然には勝てないってね。どんな理屈を捏ねようが、どんなプライドを持とうが、それこそ意味がなく摩擦を生んできた。元凶とは?・・・自然だよ。人間の本能や、余計な保身。防衛本能。そしてそれらを解決させるのも、また自然なんだよね。抵抗すればするほどに、傷は深まるだけだった」
「人を憎まず、罪を憎め。ってね」
「そうね。複雑な現状や感情、そういった『罪』を図らずに、分かり易く人種や性別、カテゴリに分けた区別から差別が生まれ、そしてそれぞれの傷に塩を塗り、また傷つけ合っている。これが繰り返し終わらないんだから」
「ここが変わったように、第2も変わって来ている」
「うん。それぞれが流してきた血や汗や感情から、お互いに成長しているかもしれない」
「そういった意味でもちょうどいい『頃合い』、かもね」
「ふふふ・・・なんだか、コロニー規模の痴話喧嘩みたいね」
Restriction
「お父様は、何か知ってるの?」
二人は積もる話は沢山あるが、お互いの立場や環境から言えない事も多く何を話せばいいか口を拱いていた。パメラが気を利かせたというよりも、今、一番気になっている質問を投げかける。
「・・・あまり確定し切った話ではないんだが・・・その点でも、ライト殿を上層『界』へと送ったんだ」
「ええ?!何故?!」
「ライト、ウェルバー殿の二人は、父親代わりであったチェバラ氏を探していることは聞いているか?」
「はい」
「そのチェバラと、元第2代表の夫婦が正に突然『消えた』のだ」
「え?!」
「お前も、知っておろう。小さき頃に何度も会ったことがある」
「・・・はい。お優しいお方たちだった記憶があります」
「それらが、さっきお前たちが言っていた『内部の行方不明者』と同じかどうかは知らぬが、わしらもそういった事件を調べておった所じゃ」
「・・フォレスター達からすると、そういったことが昔から続いているそうなんです。森の中と、そしてコロニア内部でも・・・・・・」
「各地のチーターやプローバー、そうじゃなくても浮浪者や身寄り無き者も多く居る。各コロニーが組織的になり行動者と堕落者の差が明確になった今、そういった事件が浮き彫りになってきただけかもしれんな」
「では、お父様も、そういった事件はある、と思っているのですね」
「・・・ああ」
「でもなぜ、ライト様を?」
「ライトとウェルバー殿は、センター教・・・いや、『セントラル教』から狙われておる。手配書が出回っていてな。こっちの都合と、ライト殿の事の双方を考えてその方が良いと判断した。恐らくチェバラ氏も上へと行った可能性が高い」
「その・・・じゃチェバラさんは誘拐などではなく『自ら上階へと行った』と、いう事、ですね?」
「その様だ」
マイオスは我が子だから、とつい言いそうになったがチェバラが元々は上層階出身だったということをライトから聞いていfる事を、この時はなんとなく口を閉ざした。男同士の約束、のようなものが一瞬心の中で勝っていた。
a crypto forester
マオリとナバホは、木の上に自分達が横になれる程度の簡単な小屋の作成をした。
マオリのその重い身体が心配ではあったが、そうは言ってもフォレスター。体幹は内部の者とは段違いに違う。
穴を掘るのも考えたが、時間が掛かりすぎるのとその穴に何人もの彷徨えるプローバーに追い込まれたら流石に一溜りもない。
パメラとセーラを待ちながら、同時に周辺やコロニアの外壁を見張るのにも良く、そして見る限りのプローバーはみな俯きうな垂れ下をずっと向いて放浪している。稀なタイプに見つかったとしても、上から頭部への致命の一撃を与えられるために、頭上を征そうと決めた。
明るい内に一時的な塒を確保しつつ、日が暮れれば行動もしようとプランも練る。第4の外壁部に住む者は『隠れフォレスター』という内部に居ながらその信仰はフォレスター達と同じく自然と精霊を重んじる者が、少数だが存在している。それでも他のコロニーよりかは多いというだけだが、その理由はこの第4コロニーの生業の主がウェルバーと同じ「林業」だからだ。
木材を伐採しその材料で様々な物を作り、紙や木綿、蚕の糸から作られる繊細な生地は「高級品」として出回っている。
茸の栽培も盛んで、食用の物からフォレスター達が「儀式」にも使う代物まで第4から仕入れているために、唯一、フォレスターと親交がある場所とも言えるが、もちろんその仲介者として「隠れフォレスター」「ノーマッド」が入るので直接的に密接とは言えない。
とりあえずマオリとナバホの二人はただ待っているだけも無駄にはしたくないということで、第4の隠れフォレスターと接触しようとしていた。
適当な木をナタで切り取りながら塒の作成していたその時、遠くから寄生を上げる声が聞こえた。
「イーーーーーーハーーーーーー!!!」
その声に反応した二人だがその瞬間、ナバホの目の前を矢が勢いよく木に刺さり現れた。一歩前へ乗り出していれば即死だった。
二人は臨戦態勢を取り周囲に敵を視認しようと探るが、既に木の下には三人のプローバーが見上げて不気味に微笑みかけて来ていた。
『NEXT』⇩
