『幼☆妖★体験記』 第五話 トイレのカマドさん【3,072文字】
「ねぇ、『トイレのカマドさん』って、知ってる?」
「『花子』やろ、それ」
「ちゃうねん、『カマド』やで」
「知らんわぁ。なにそれ?鬼滅??」
必ず、クラスに一人は居る「オカルティズム」な子。私は、古い物からは
『妖怪人間』や『どろろ』『墓場鬼太郎』など
そして
『幽遊白書』や『うしおととら』『もののけ姫』など
心霊や妖怪、怖い話が大好きでしたので、その子とも大の仲良しでした。
私は見たり聞いたりが専門で、勿論、お互いに聞いた最新の話をし合っては、ある種競ってもいたのですが、その子「よっちゃん」は何処から仕入れてきているのか、はたまた、今を思えば創作だったかもしれませんが、よく私の全然知らない怪談を持ってきては放課後、誰も居なくなった教室や誰も来ない図工室や理科室の前の廊下などで、まるでお互いの自慢話をするかのように語り合っていたのです。
私は主にTVやレンタルした、云わば「在り物」の話しか出来ませんでした。『世にも奇妙な・・・』や、深夜の超有名怪談師さんの番組で聞いた話。そして本で読んだ生物や宇宙、海の話。例えば『バミューダ・トライアングル』や『マレーシア航空370便』、『エリア51』『寄生虫』などの話を紹介していく、みたいなスタンスです。
しかし、よっちゃんはもっと身近な「土着」や「伝承」「物の怪」の話をしていて、お互いがホラーマニア、オカルティックでしたがその中でもジャンルが違うと言いますか、私は「現象」に、よっちゃんは「存在」に興味を持つという違いがまた、同属嫌悪にもならずに丁度良かったんだなぁと、今でもしみじみ思います。
後にミステリー好きの人怖系「やっすん」とも仲良くなりますが、それはまた、別のお話。
そのよっちゃんが話す「トイレのカマドさん」とは・・・・・・
竈馬
「おばあちゃんから聞いた話なんやけど、連続して三回、トイレして手を洗わんかったら『カマドさん』が現れるって。カマドさんは便所に住む妖怪で、三回手を洗わずに出て行って、四回目に手洗い場にある鏡で自分の姿を見てごらん。そこにはあの、仮面ライダーみたく改造されたみたいな、自分と昆虫が混ざったみたいなバケモノが映ってて、そのまま鏡の中に引きずり込まれるそう・・・・・・」
「鏡が無いとこやったら?」
「知らん。・・・『便所コオロギ』って、知ってる?」
「あ、うん、ばあちゃん家で見たことあるで」
「暗くてジメジメした処が大好きで、足がバッタみたいに長くて気持ち悪いの。その足みたいにギザギザした長い腕で捕まって、バラバラにされちゃうらしい。だから、絶対に手洗いをしてた方がいいで」
「じゃあ、試しに今日から手、洗わずにいようかな」
「え、じゃあ、絶対に触らんといてな。消しゴムとかも貸さんから」
「え~」
そうして、私は自分で検証が出来ずに残念では居ましたが、直ぐに結果を見ることが出来たのです。
これも、クラスに一人は居る「俺、風呂三日は入らへんで」と豪語する不衛生な奴。
コイツなら三回連続で・・・っていうか、今までトイレの後には一回も洗っていないんじゃないか?とも思える子がいます。
人が手をちゃんと洗っているかどうかなんて、そんなこと気にしたことが無かったのですが、ちょっとそれ以来、コイツがトイレに行った時に私はしたくもない用を足しに後を付けて行って、三回以上を連続で手を洗っていない所を観察してやろうと思いました。
コイツ
一回目、お昼の時間。
案の定・・・・・・
※注(そんなに仲が良かった訳でもなかったのもあり、今では名前が思い出せません。終始「コイツ」で行かせてください。すいません)
コイツはトイレ後、手を洗わなかった。
※(てゆーか、そもそもコイツは絶対に手なんて洗ってないんだから、三回どころの話ではないはず。が、子供の頃の私はそこまで考えてはいなかった。てゆーか、そんなことよりもただ冒険感覚で楽しんでいただけみたいな)
私はよっちゃんにコイツをターゲットにしていることを、一回目で手を洗わずに遊びに運動場へ向かったのを見て、直ぐに伝えました。それ以降は二人で行く末を見守るようになるのです。
そして、放課後。
皆が帰宅前、私たちはずっと張り込みをしている様に、コイツが学校内での帰宅までの動向を追っていると
「おう、俺ちょっと小便!」
下品にも大きな声で、誰に言っているかも分からない感じでそう言い放ち、ボロボロのランドセルを背負いながら近場のトイレへとズンズンと歩いて行く。
一応に、私たちはなんだかワクワクしながら、探偵ごっこかの様に尾行して、コイツが出て来るのを待ちました。
そこのトイレの手洗い場は中ではなくアーチ状に左右、男女に別れるように設置されていて、そこでは中まで行かずとも外から手洗いの有無をチェック出来るのでよっちゃんも一緒に現場を見ることが可能でした。
案の定、パートⅡ・・・・・・
コイツは手を洗うこと無く、鼻歌交じりで出てきました。
私たちは二人してクスクスとニヤ付き合いながらも、三回目はもう今日は学校での確認は出来ない状況だということも忘れて、私は「なぁ?」とドヤ顔をしたと思います。
すると・・・この後、とんでも無い事態が起きたのです・・・・・・
コイツに、距離を置いて話している私たちの事が見つかってしまい、気に留めさせてしまったのです。
「あ!おう、あんなぁ・・・・・・」
呼び止められた私たちは、別に悪い事はしていないのにも関わらず、なんだかソワソワしながら話を聞いてました。強いて、敢て誰が悪いかと言うならば手を洗っていないコイツだけである。
その話の内容は、今夜八時から放送されるバラエティー番組の録画を頼まれたのです。
「お、おう、分かったよ」
私はとにかく早く帰って欲しかったので、面倒くさくも二つ返事で了解しました。
「俺、ちょっと用事あるからな、頼んだで!」
ポンッ!・・・・・・
・・・軽快に私の肩に置かれた、コイツの『手』・・・もし漫画であれば、分かり易い汗が一滴、私のこめかみ辺りを垂れ流れたことでしょう。もしアニメであれば、分かり易い効果音と共に、額に多くの縦線が入り「ガーン!」と描かれることでしょう。
私とよっちゃんは、その置かれた右手にしか視線が行っていませんでした。当然でしょう。そして、その置かれた手は・・・何故か・・・手を洗っていないはずなのに・・・日焼けしたその肌が濡れて黒光りしていました・・・・・・
「じゃあな!よろしく!」
・・・・・・
「ギイヤァァァァァァ!!」
「キャァァァァァァァ!!」
コイツが去って見えなくなると同時に、私たちは叫び狼狽えました。その手はヌメヌメ、テカテカ、そんな擬音が当てはまります。
良く考えてみれば、コイツの髪もまるでワックスでも付けているかのようにいつもヌメヌメ、テカテカしていたのです。三日どころでは無い。一週間・・・いや、一か月はお風呂に入っていなれば、その状況には成らないはず。髪が一定数で皮脂と汗に束ねられ、それはまるで無数の竈馬が頭に群がっているかのように・・・濡れた手がまるで、カマドウマのあの長い足のように・・・ヌメヌメ、テカテカ・・・・・・
そう、よっちゃんの話、おばあさんの話は本当だったのです。
その後、私たちは下校中、ずっとエンガチョ、エンガ、ビビンチョ、エンピ、バリヤー・・・・・・
場所や時代で言い方は違うかもしれません。終わり無き空虚で最悪な鬼ごっこが、永遠に続きましたとさ・・・・・・
完
⇩NEXT 未定
