「調う」か「整う」か
更新日:2026/04/17
小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導からよく見かける、中高生の間違えやすい表記を紹介し、世の中高生・受験生に警鐘を鳴らすのが、このシリーズ【間違えやすい表記】。
今日は「調う」と「整う」についてです。この漢字表記を取り違えるケースを中高生の作文や小論文・志望理由書ではまま見かけます。これらの書き分けについて、今日はお話ししていきます。
以前、志望理由書で「試合に向けて気持ちを整えて……」とありました。これ、なかなか判断が難しいところなんですが、「試合に向けて」とあるので「試合に勝つために、それに必要な気持ちを作った」と読みとれます。したがって、ここは「調えて」の方が適切と言えます。しかし、ここが「集中力に欠ける、その乱れた気持ちを『ととのえて』……」ならば、「乱れたものを正しく直す」と読みとれるため、「整えて」の方が適切と言えます。
読売スタイルブック2020の用字用語集にはこうあります。
ととのう・ととのえる
=整う・整える〔きちんとする〕足並み・隊列を整える、衣類を整える(整頓)、室内・机の上が整う、身辺・環境を整える、体調・呼吸を整える、体裁・形を整える、整った顔立ち、整った文章
=調う・調える〔必要なものがそろう〕衣類を調える(調達)、買い調える、家財道具・資金が調う
〔望ましい状態になる〕味を調える
〔まとまる〕縁談・婚約が調う、協議・商談が調う
つまり、大まかに言うと、「何かの準備として必要なものをそろえる」・「まとまって成立する」場合は「調う」で、「乱れたものをきちんと正しく直す」のが「整う」だと言えます。これでピンと来ない人は熟語を考えるとわかるかもしれません。たとえば「調う」なら「調達(必要なものをそろえる」・「調節・調味(合わせて望ましい状態にする)」・「調和(まとまる)」、「整う」なら「整理整頓(きちんと正しくする)」といった具合です。
しかし、これはある言葉がきたらこっちの「ととのう」の方というものではありません。先に例を挙げたように文脈によってより適切な方を使っていきます。ですから、こういうことも考えられます。
したがって,例えば,同じ「準備がととのう」でも,なにか作業を行うために必要な道具を買いそろえるなどすれば,「準備が調う」であり,散逸した道具類を使いやすいようにかたづけ,そろえれば,「準備が整う」と表記すべきであろう。
「準備が~」と来たからこれは「何かのために準備する」ということで「調う」だとは一概に言えません。問題は、その文脈上で、準備として何をやったと読みとれるかです。それによって「調う」なのか「整う」なのかは決まります。スタイルブックの用字用例集の中にもある通り、「衣類を『調える』」なのか「衣類を『整える』」なのかは、その文脈上で衣類をどうしているのかによります。大事な会合に出席するためにフォーマルな衣類を買いそろえた、ということであれば「調える(調達する)」ですし、干して乾いた衣類をアイロンをかけてしわが出ないようにした、ということであれば「(形を)整える」となります。
ちなみに、入試にはあまり関係がなさそうな話題ですが、巷でよく言われるようになった「サウナで『ととのう』」と言った場合はどちらが適切なのでしょうか。
濡れ頭巾ちゃんいわく、サウナのあとの穏やかな心地よさを表そうと思った時に自然と出てきた言葉。「脈拍が斉う」「精神のバランスが調う」「準備が整う」などの"ととのう"の総称がサウナーに広まった。
どうやら、この言葉は「プロサウナーの濡れ頭巾ちゃん」さんが作った言葉のようです。「脈拍が斉う(ととのう:=整う、きちんとそろえる)」「精神のバランスが調う(望ましい状態にまとまる、調節する)」「準備が整う」などの意味を総合したものという意味合いのようです。でしたら、「ととのう」とひらがな表記にした方がよさそうです(ただし「調う」でも「整う」でも間違いとは言えない)。まあ、造語のようなものなのでこれが正しいというのはないとも言えます。総じて「調整する」の意で使われているのだと思います。
ともあれ、中高生のみなさんは、「調う」「整う」は文脈に合わせて適切に使い分けるようにしましょう。
(検索では以下の文献とサイトにお世話になりました)
読売スタイルブック2020
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