T48_AIで何を作るか迷っているなら、自分の仕事の引き出しを開ければいい
「読めなかった」が、本当のゴールを引き出した
考査問題の作成を、自動化できないか。
その試みは、こんな一行から始まりました。
「これって数学アプリで作った問題なんだけど、Claude Codeは読むことできる?」
渡したのは、Studyaid D.B.というソフトで作った考査問題のファイル(`.spr`)。調べてみると、著作権保護のために暗号化されていて、中身を直接読む方法がない。
行き止まりです。
でも、そこで「じゃあ無理ですね」にはなりませんでした。「PDFで渡せばいい」と割り切った瞬間、本当の目的が言語化されました。
「単発でファイルを変換したいわけじゃない。現在教えている生徒にちょうどいいレベルの考査問題を、自在に作る作業を自動化したいんだよね」
行き止まりが、ゴールを引き出したのです。
「まず手動で」は遠回りじゃない
ゴールが決まったあと、しばらくは手で動かしていました。
過去問PDFを1枚渡して、LaTeXでレイアウトを再現してもらう。コンパイルして(PDFを出力して)、直しを出す。「2行以上になる問題文は左端揃えに」「続きの小問は別大問にしない」「`\leqq` を使う」。
直しを出すたびに、スタイルガイド(`style_guide.md`)に書き足していきました。
この手動フェーズ、じつは最初からスキル化(自動化)するつもりでした。だから遠回りではない。「自分はどういう問題を作りたいのか」を言語化するためのプロセスです。
暗黙知とは、曲のタイトルが思い出せないのに、鼻歌は歌える——あの状態です。誰かが実際に弾いてくれて、初めて「そう、この曲!」となる。手動で直しを出す作業が、その「弾いてくれる人」の役割を果たしていました。
頭の中にあった「いい問題レイアウト」の暗黙知が、少しずつ文字になっていく。その文字が、後のスキルの「仕様書」になりました。
「判断軸」を渡したとき、対話が変わった
「何がしたいか」ではなく「どういう判断軸で作っているか」を渡すと、AIはそれを基準に動き始める。
このことに気づいたのは、配点方針の話になったときでした。
自分の作題ポリシーをまとめた `配点方針.md` を渡して、「質問は3つに絞って、1つずつ聞いて」と伝えました。
Claudeが集計して指摘してくる。「知識技能が55点になっています。目標の50:50に届いていません」「苦手な生徒でも40点台に届く設計にするには、問7〜10を小問に分割するといいです」。
方針を言葉で渡しただけで、対話のピントが一気に合ったのです。
配点は「気分」ではなく「設計」だった——そう言語化できたのも、この回でした。
「直したはず」が、ちがう場所を指していた
「縦潰れとページ問題、前回の修正がどちらもうまくいっていない」と伝えたことがありました。前の修正で直ったはずの箇所です。
Claudeはすぐ直しには入らず、まずファイルのタイムスタンプを確認しました。「修正は反映済みです。古いPDFを見ていない」と切り分けてから、実際のPDFを目視した。
そこで分かったのは——私が直してもらったのは「ラベル付きボックス」だったが、実際に潰れていたのは「中身が空の別のボックス」だったということです。
私が言った「潰れている」という症状と、本当の原因は、別の場所にありました。
自分の言葉は、問題を正確に指していない。AIが実物を見て、はじめて真因にたどり着いた。
これも暗黙知の一種だと思いました。「何がうまくいっていないか」すら、最初は正確に言語化できていない。AIとの往復が、問題の輪郭を削り出していきます。
同じ駄目出しが2回出たとき
スキルを実装して、本物の9月考査(理系クラス・数学B)を試作してみました。
そこでまた、同じ指摘が出てきました。
「続きの問題が別大問になっています」
序盤にも同じことを言っていました。`style_guide.md` に書いてはいたのに、スキルの検証段階でもう一度出てきた。
繰り返しているということは、そのこだわりが強いということです。そして強いということは、明示的なルールにしないと安定しないということでもある。
同じところでつまずくのは、道に石があるからです。「また転んだ」ではなく「石があることを地図に書く」——それがルール化です。
「同じ駄目出しが2回出たら、それは仕様だ」——この感覚、AIと作業するようになって初めて分かりました。
言語化されていないルールは、毎回ゼロから探索される。言語化されてはじめて、AIに「再現」してもらえます。その指摘は即座に、SKILL.mdの検証チェックリストに書き足しました。
スキルが完成したとき、「分身」が生まれた
実テストを通過したあと、スキルを本番の場所にコピーしました。
新しいセッションで、スキル一覧に `exam-latex` が出てくる。
呼び出せば、教科書PDFを読み込んで範囲を確認する。配点を自己点検して、問題と解答のTeXファイルを生成する。コンパイルまでやってくれる。
これ、ただのツールだとは思いませんでした。
自分の判断軸・配点ポリシー・レイアウトへのこだわりが詰まった、「自分の仕事の仕方を知っている」存在。
実際の9月考査で使ってみて、問題の中身と難易度設計に集中できるようになりました。
手を動かす場所が、作業から判断に変わった。
「何を作ればいいか」の答えは、引き出しの中にある
「AIで何か作りたいけど、何を作ればいいか分からない」という話をよく聞きます。
私も、半年前はそうでした。
でも気づいたのは——材料は、すでにある。
自分がこれまで手でやってきたことが全部、材料です。
考査問題の作り方、配点の基準、レイアウトへのこだわり——それは言語化されていないだけで、確実に自分の中にある暗黙知です。AIと対話しながら直しを出していくと、それが少しずつ言葉になる。
最初から自動化しようとしなくていい。手で動かして、直しを出して、その直しを仕様書に残す。同じ指摘が2回出たら、それを明示的なルールにする。その積み重ねが、ある時点でスキルに「昇華」します。

あなたの仕事の引き出しの中に、すでに材料はあります。それをAIと一緒に言語化していくのが、一番の近道かもしれません。
あなたが毎回手でやっている「なんとなく繰り返している仕事」、何かありますか?
人生の限りある時間を大切に。シンパクト和 でした。
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