コーディングエージェントが進化してエンジニアとしてのアイデンティティが死んだことに対する対策
最近いろいろショッキングなことがあった。自分のエンジニアとしてのアイデンティティが失われた感じがしてどうしたらよいかわからなかったけど、何人かの友人の助けでようやく整理がついたのでブログを書くことにする。
アイデンティティを失うきっかけは?
昨年は良いポジションを与えてもらい、 AI エージェントに全部ぶっこんで頑張ったのだが、自らの決断で、自分が頑張って育てたソリューションを自らの意思で捨てて、一年間死ぬほど頑張った昨年の成果は文字通り「なんの成果もありませんでした」になった。楽をしたのではなくめっちゃ頑張ったのにだ。なぜなら、一生懸命考えて実践して「作った」自分のソリューションより、コーディングエージェントを「使った」方が結果が圧倒的に良く、尚且つ設定が簡単で柔軟だったからだ。私のソリューションは過去のソリューションと比べると良い性能で動いていたが、柔軟ではなく、コンテキストをマネージしまくった結果であった。そうしないと思った性能が得られなかった。だけと、世の中が変わったのだ。イノベーションのジレンマのように私は古いソリューションにしがみついていた。
最近 GitHub Copilot や、Claude Code は物凄く進化した。特に Ops 4.5 が来たあたりだろうか。サービスとして作った時に性能が出なかったものがあっさりと、単純なインストラクションだけできれいに動作する。今まで想像もつかなかったものが平行で実行でき、自動化できる。もう自分が長年頑張って学んで実践してきた「コーディング」は本当にもう終わると感じてしまう。自分はモチベーションを保てるのだろうか?
モチベーションの危機
いろいろな人と話して、なぜ自分がモチベーションの危機を感じているのかわかってきた。多分このままエンジニアをやっていても、おそらく食べていける。食べていけるけど、自分は果たして楽しいのだろうか?それが問題だ。私はなんでも、「観る」とか「使う」とかよりも、自分が「やる」「つくる」方が好みなのだ。音楽も聴くより演奏が好き、プログラムも使うより、作るが好き。だからクラウドの中の人をやっているのだ。だって世界の人々が使うアプリケーションを創れるから。コーディングエージェントは多分どんどん進化するだろう。コーディングの域を超えて、いろんなものを自動化し始めるツールも現れてきている。
ふと気づいたのだが、「ローカルファイル」のソリューションは強力なのだ。リモートAPIコールで簡単に実現できないレベルで、「分割」が簡単にできるので、マルチターンのエージェントのアーキテクチャで、コンテキストの制御をずっとやりやすい。だから、RAGとかで性能がでないものでも、なんの工夫もなく動いてしまう。(もちろんコーディングエージェント自体がそういうことをしているからだけど)
まるで、俺はマネージャのようじゃないか、、、
だが、そういうツールのユーザとしては、単にエージェントに指示したら、計画、分析、コーディング、テスト、デプロイ、PRづくりまでなんでもやってくれる。もう自分はマネージャのようだ。「自分がやる」のが好きな自分としてはなんの興味もなくなってしまう。私は努力して、勉強して、何かが出来るようになりたいのだ。モチベーションが保てるのだろうか。いつかリプレースをされてしまうという恐怖ではなく、「自分が楽しいと思えるか?」というポイントが危機になってくる。
周りの人を観察していると、「ガジェット」が好きな人、つまり「使う」ことに物凄く興味がある人は、嬉々としてコーディングエージェントを楽しんでいる。自分のメンターのクリスは私にモチベーションが似ている。でも彼もコーディングエージェントのソリューションにガッツリ投資している。私が、「GitHub Copilotのコードを読んでいる」という話をしたら、「そっちよりも、使うことにフォーカスするのが良いよ。コードリーディングは時間がかかる。この変化は非可逆的なものだと思うよ」私たちの仕事は「エージェントをマネジメントすることだね」「人々はエージェントを自分で書きたいと思わなくなるかもしれないけど、プラットフォームは相変わらず価値があるだろう。」とも言ってくれた。
そう、もう昔のコーディングをエンジョイしていた時代は終わったのだ。じゃあ、自分はもうエンジニアを辞めてしまった方が良いのだろうか?自分は折角アメリカに来て自分がちゃんとした「エンジニアになる」という夢は断念したほうが良いのだろうか?
コーディングエージェントを「使い倒す」決断
自分の中で決着はついていないけど、自分はあることを決めた。「まずコーディングエージェントをくっそ上手く使えるようになろう」いつもの自分が本当に好きなことを捨てて、まずそう考えた。なぜかというと、何かを作るにしても、今エンジニアとして価値を出すためには、破壊的なイノベーションで物凄い生産性をたたき出すこいつを使いこなせない事には話にならないだろう。だから、自分は、Claude Code の本を読んだり、GitHub Copilot のコードを読んだり、Skills のサンプルや仕様を読んだりして、徹底的にコーディングエージェントを使い倒すことにした。
見えてきた光
そんな自分に光が少しづつ差し込んで来た。普段は「使う」ことにあまり興味がない自分が、ゴリゴリに「使う」ことをたっていくと、思ったより100倍ぐらい自動化が出来て楽しくなってきた。社内のプロダクトにも頻繁に貢献するようになった。「使う」だけでも極めようとすると楽しめるんやなぁと自分で気が付いてきた。でも、「使う」だけなんてなんて、なんて本物じゃないんだろうという気も同時にあった。しかし、最近見かけた、私の最も尊敬するエンジニアの一人であるミッシェル橋本氏が面白いポストをしていた。
なるほど。多分、クソのようなしかもでかいissueにも無いPRが送られてきて困ってるからやろな。今やでかいクソのようなPRを作るのは簡単なので、レビューする人のことを考えた方が良さげ。確かに承認されたissueのみというのはAI使う意味でも色々便利かも。考えさせられるムーブやな。 https://t.co/kqJO07HAL1
— 牛尾剛『世界一流エンジニアの思考法』(文藝春秋)🎸Tsuyoshi Ushio (@sandayuu) January 23, 2026
私は正直、エンジニアとして彼のようになりたい。日本では、何かものを作ってなくてもエンジニアとして著名になれるけど、私は有名とかどうでもよくてそれよりも、皆が喜んで使ってくれる素晴らしいソフトウェアをかける人が一番カッコいいと思う。彼はいろんな素晴らしいソフトを書いてきたけど、今も、Ghostty というプロダクトを書いている。彼がこのプロジェクトを始めた時はなぜ今更ターミナルエミュレータを書いているのか?と思っていたのだが、彼は AIの時代を見越して、その時に人々が必要とするだろうソフトウェアを書いていたのだ。マジで才能&センスあり過ぎやろ…マジカッコいい。
そんな彼が上記のポストで面白い事を言っていた。このリポジトリに対して、承認された issue ではない PR は問答無用で却下し、ban すると言っていた。
つまり、今の時代は、誰でも簡単に大量のクソコードをAIで生成できる。だけど、それをレビューしたりする方は地獄だろう。そもそも、しっかり合意した issue がある方がそれこそ作りやすいしレビューもしやすい。今のボトルネックは人間なのだから。レビューすることを考えた PR にするべきだろう。コードを沢山書く価値は既に失われている。なぜなら今は簡単だから。
新しい価値の誕生
重要なことは、自分がパッションをもってやりたいことが出来るか否かである。私は「みんなが喜んで使ってくれるソフトウェアを創れる人になりたい」これが最大のパッションで目標だ。
破壊的なテクノロジーの到来で、非可逆的な変化が起こった。そして、従来の「価値」は永久に失われたけど、この時代に人間が「価値」があることが生まれているのだ。姿を変えて。
ミッシェル橋本は素晴らしいソフトウェアを創るコツとして、自分がやっているワークフローを自動化するんだよと言っていた。そのペインを助けるものを作る。
人によって、パッションの源泉は違うだろうけど、私の場合のゴールに関しては完全に光が見えた。何も変わらないのだ。ただ、過去と価値があるポイントが変わっただけだ。
みんなが喜んで使ってくれるソフトウェアを創る道
どういうことかというと、私はこれからもゴリゴリにコーディングエージェントを使って死ぬほど便利に使って腐るほど自動化しようと思っている。そうやっていくと、今でも良く考えたら、いろんな「ペイン」つまりめんどくさいところって見つかるのだ。かつて重要だったツールやソリューションは死んでいくだろうけど、新しい「ペイン」は確実に存在する。それは多分こういう新しい環境に徹底的に適用して、新しい環境に適用したツールの数々を使い倒して、それでもなお「めんどくさい」ところはあるはずなのだ。それが見つかったら、そこで、「ソフトウェア」を書けばよいのだ。
実際に、コーディングエージェントが覚醒した後に、みんなが喜んで使うツール、コーディングエージェント「覚醒後」に便利なツールを作っている人を良く見かける。例えば、並列で、git worktree を作るとコンフリクトしやすくなるので、それに対応したツールとか。
自分のゴールに近づいているのかもしれない
だから、私のようなモチベーションの持ち方をする人も、悩む必要はなくて、コーディングエージェントや周辺ツールを徹底的に使い倒して、自動化すればよい。そのうちにきっと面白いソフトウェアを書くヒントが得られるから。それまでは、「使う」のをエンジョイしてみよう。そうして、面白くなりそうなソフトウェアの姿が見えてくるだろう。コーディングエージェントをゴリゴリに使うかもしれないけど、その時に必要な別の「スキル」そして「価値」が人間に必要になってくる。それをゴリゴリに出来るようにすると価値があるエンジニアになれるだろう。
それすらも、時間とともに推移していくだろうけど、きっとそこには新しい「ペインポイント」が生まれるはずだから。今まで私は数多くの「みんなが喜んでくれる」ソフトウェアを書いているわけではない。だけどそれをかけるようになるのが夢だから、こういう気づきや失敗の一つ一つがそこに血がづいているのかもしれない。
あー。やっとすっきりした。あとはぶっこむだけやな。
