症例報告の過去分は GAS自動化処理してNotebookLMで社内ナレッジに変換~これからは重症化予防に時間を使おう~
70件超の症例報告を自動化して見えた、管理栄養士と薬剤師が創る「重症化予防」の未来──GAS×Gemini×NotebookLMで想像する次世代ヘルスケアモデル
70件を超える管理栄養士の症例報告をGoogleApps Scriptで自動変換し、NotebookLMで経営陣へ報告──。この業務効率化が、なぜ「重症化予防」への第一歩なのかを解説します。
なぜ今、薬局の管理栄養士の症例報告をナレッジ化する必要があるのか?
医療・介護現場で「時間」は最も貴重な資源です。70件を超える症例報告を1件ずつスライドで確認する作業は、本来やるべき「重症化予防のための行動計画立案」を遅らせています。私たちの実績データを見てみましょう。31症例の患者様のうち、20代から60代まで幅広い年代で、体重変化は-4.8kgから健康的な筋肉量増加を伴う成果まで、多様な改善が見られました。
管理栄養士が直面する「情報の分散」という課題
私はごく最近、部署が変わり管理栄養士と密に関わるようになりました。
これまで様々な企業が薬局管理栄養士の取り組みを行なってこられ、そしてビジネスモデルとしては厳しい面もあり、拡大できないまたは辞めてしまうといったことを目にしてきました。
しかしながら彼女たちが蓄積した様々な症例には管理栄養士の専門性とともに「顧客の行動変動を支える仕掛け」も多くあることに着目しました。
ということで症例を1件ずつ確認していきたかったのですが、すべてPowerPoint形式のスライド資料・・・
これを地道に確認していくと早々に限界が来てしまいますし、スライド1枚1枚をめくりながら「この患者さんは血圧がどう変化したのか?」「HbA1c改善事例の共通点は?」と探すのは、時間がかかるだけでなく、傾向を見逃すリスクもあります。
読み込むことに数日を要し、今後の介入計画の企画立案が遅れてしまう──。重症化予防に本気で取り組むために効率化するところは徹底的にやっていこうというのが私のスタンスです。
GAS×Geminiで「症例報告の自動構造化」
Google Apps Script (GAS) と、とりあえずGemini 2.5 Pro APIを組み合わせることで、70件超のPowerPoint症例報告を統一フォーマットのGoogleドキュメントへ自動変換します。そのファイルをNotebookLMへの連携し、社内での説明資料も生成しました。
なぜGAS? 低コスト・高速・医療現場との親和性
GASを選んだ理由は明確です:
低コスト: Googleアカウントがあれば無料で使用可能
Googleサービスとの連携: Drive、Docs、Slidesとシームレスに統合
Gemini API活用: 最新AIで症例テキストを構造化抽出
医療現場との親和性: 多くの医療機関がGoogle Workspaceを導入している
プログラミング初心者でも扱いやすい: JavaScriptベースで学習コストが低い
医療現場の業務が「GAS×スプレッドシート」で劇的に変わるという事例も増えています。低コストで業務効率を改善できる点が、リソースに限りのある医療現場で評価されているのです。
Geminiによる構造化抽出の仕組み
Gemini 2.5 Proは、スライドから抽出したテキストを以下の項目に自動分類します:
作成者氏名
事例時期
事例発生場所(外来、在宅、OTC、その他)
選んだ理由(課題、疑問点)
症例(年齢、性別)
主病名
アレルギー歴・副作用歴
服用薬および用法用量
他科併用薬および用法用量
経過(思考プロセス、根拠情報、ガイドライン)
プライマリ・ケアに関する考察
引用文献
この構造化により、後から「糖尿病症例だけを抽出」「血圧改善事例の共通点を分析」といった集計・分析が瞬時に可能になります。
実装コードの全体像と動作フロー
提示いただいたコードは、以下のフローで動作します:
【setupProperties関数】: Gemini APIキーやフォルダIDを安全に保存
【processCaseReports関数】: メイン処理。ソースフォルダ内のPPTX/Googleスライドを順次処理
【convertToGoogleSlides関数】: PPTX形式をGoogleスライド形式に一時変換(Drive API使用)
【extractTextFromPresentation関数】: スライドから全テキストを抽出
【analyzeWithGemini関数】: Gemini 2.5 Pro APIでテキストを解析しJSON形式で構造化データを取得
【createReportDocument関数】: 統一フォーマットでGoogleドキュメントを作成し、出力フォルダへ保存
処理済みの元ファイルは「処理済みフォルダ」へ移動されるため、重複処理の心配もありません。
ポートフォリオ管理システムへの準拠
生成されるGoogleドキュメントは、以下の統一フォーマットに準拠します:
作成者氏名: [氏名]
事例時期: [yyyy年mm月dd日〜yyyy年mm月dd日]
事例発生場所: [外来/在宅/OTC/その他]
1. その事例を選んだ理由
※どのような課題があったか、なぜ疑問に感じたか
[内容]
2. 実践した具体的内容
<症例> [年齢、性別など]
<主病名> [病名]
<アレルギー歴・副作用歴> [内容]
<服用薬および用法用量> [薬剤情報]
<他科併用薬および用法用量> [薬剤情報]
<経過> [思考プロセス、根拠とした情報、ガイドライン等]
3. プライマリ・ケアに関する考察
※介入の結果どうなり、そこから何を学んだか、一般化できる教訓はあるか
[内容]
4. 引用文献
[文献リスト]
この形式により、集計システムでの処理がスムーズになり、データ分析の精度が飛躍的に向上します。
GASのコード全文はこちらのとおりです。
詳しい使い方は省略しますが、その使い方だってコードをGeminiに貼り付けて「セットアップの方法を教えて」で教えてくれるのだから便利ですよね。
/**
* 事前準備:スクリプトプロパティに設定値を保存するための関数です。
* 1. 以下の 'ここに...' の部分をご自身のIDやAPIキーに書き換えます。
* 2. エディタ上部の関数プルダウンから「setupProperties」を選択し、1度だけ「実行」します。
* 3. 実行後は、セキュリティのためコード上からIDやキーを削除(空文字などに)しても動作するようになります。
*/
function setupProperties() {
PropertiesService.getScriptProperties().setProperties({
'SOURCE_FOLDER_ID': 'ここにインプット用のフォルダIDを入力',
'REPORT_FOLDER_ID': 'ここに出力先のフォルダIDを入力',
'PROCESSED_FOLDER_ID': 'ここに処理済み移動先のフォルダIDを入力',
'GEMINI_API_KEY': 'ここにGemini APIキーを入力'
});
Logger.log('スクリプトプロパティに設定を保存しました。');
}
function processCaseReports() {
const props = PropertiesService.getScriptProperties();
const sourceFolderId = props.getProperty('SOURCE_FOLDER_ID');
const reportFolderId = props.getProperty('REPORT_FOLDER_ID');
const processedFolderId = props.getProperty('PROCESSED_FOLDER_ID');
if (!sourceFolderId || !reportFolderId || !processedFolderId) {
throw new Error('フォルダIDが設定されていません。先に setupProperties を実行するか、プロジェクト設定からスクリプトプロパティを追加してください。');
}
const sourceFolder = DriveApp.getFolderById(sourceFolderId);
const reportFolder = DriveApp.getFolderById(reportFolderId);
const processedFolder = DriveApp.getFolderById(processedFolderId);
// フォルダ内のすべてのファイルを取得
const files = sourceFolder.getFiles();
let processedCount = 0;
while (files.hasNext()) {
const file = files.next();
const mimeType = file.getMimeType();
// PowerPoint または Googleスライド を処理対象とする
if (mimeType === MimeType.MICROSOFT_POWERPOINT || mimeType === MimeType.GOOGLE_SLIDES) {
try {
Logger.log(`処理開始: ${file.getName()}`);
let presentationId = file.getId();
let isConverted = false;
// PPTXの場合は、中身を読み取るために一時的にGoogleスライド形式に変換する
if (mimeType === MimeType.MICROSOFT_POWERPOINT) {
presentationId = convertToGoogleSlides(file.getId(), file.getName());
isConverted = true;
}
// スライドファイルを開き、テキストデータをすべて抽出する
const presentation = SlidesApp.openById(presentationId);
const extractedText = extractTextFromPresentation(presentation);
// ★Gemini 2.5 Proを用いてテキストを解析し、JSONデータとして取得
Logger.log(`Gemini APIで解析中...`);
const reportData = analyzeWithGemini(extractedText);
// レポートファイル(Googleドキュメント)の作成
const reportName = `【症例レポート】_${file.getName().replace(/\.[^/.]+$/, "")}`;
createReportDocument(reportName, reportData, extractedText, reportFolder);
// 一時的に作成したGoogleスライドがあればゴミ箱へ移動
if (isConverted) {
DriveApp.getFileById(presentationId).setTrashed(true);
}
// 処理が終わった元のPPTファイルを「処理済みフォルダ」へ移動
file.moveTo(processedFolder);
processedCount++;
Logger.log(`処理完了: ${file.getName()} を作成・移動しました。`);
} catch (error) {
Logger.log(`エラー発生 (${file.getName()}): ${error.message}`);
}
}
}
Logger.log(`すべての処理が完了しました。処理件数: ${processedCount}件`);
}
/**
* PowerPoint(pptx)をGoogleスライド形式に変換する関数
* ※この機能を使うには「Drive API」の有効化が必要です。
*/
function convertToGoogleSlides(fileId, fileName) {
const file = Drive.Files.copy(
{
name: fileName,
mimeType: MimeType.GOOGLE_SLIDES
},
fileId,
{ supportsAllDrives: true }
);
return file.id;
}
/**
* スライド内のすべてのテキストボックスからテキストを抽出する関数
*/
function extractTextFromPresentation(presentation) {
const slides = presentation.getSlides();
let fullText = "";
slides.forEach((slide, index) => {
fullText += `\n--- スライド ${index + 1} ページ目 ---\n`;
const shapes = slide.getShapes();
shapes.forEach(shape => {
// テキストを持つ可能性のある図形からテキストを抽出
if (shape.getShapeType() === SlidesApp.ShapeType.TEXT_BOX || shape.getShapeType() === SlidesApp.ShapeType.RECTANGLE) {
const text = shape.getText().asString().trim();
if (text) {
fullText += text + "\n";
}
}
});
});
return fullText || "テキストが抽出できませんでした。";
}
/**
* Gemini 2.5 Pro APIを呼び出し、テキストを構造化データ(JSON)として解析する関数
*/
function analyzeWithGemini(text) {
const apiKey = PropertiesService.getScriptProperties().getProperty('GEMINI_API_KEY');
if (!apiKey) {
throw new Error('Gemini APIキーが設定されていません。先に setupProperties を実行するか、プロジェクト設定からスクリプトプロパティに追加してください。');
}
const url = `https://generativelanguage.googleapis.com/v1beta/models/gemini-2.5-pro:generateContent?key=${apiKey}`;
const prompt = `
以下のテキストは、管理栄養士の症例報告スライドから抽出したものです。
この内容を解析し、以下の項目に沿って情報を抽出してください。
集計システムで処理するため、必ず指定したキーを持つJSON形式で出力してください。
該当する情報がない項目は "記載なし" としてください。
【抽出する項目とキー名】
- "author": 作成者氏名
- "period": 事例時期(例:yyyy年mm月dd日~yyyy年mm月dd日)
- "location": 事例発生場所(外来、在宅、OTC、その他)
- "reason": 1. その事例を選んだ理由(どのような課題があったか、なぜ疑問に感じたか)
- "patient": 2. 実践した具体的内容 <症例>(年齢、性別など)
- "disease": <主病名>
- "allergy": <アレルギー歴・副作用歴>
- "medicines": <服用薬および用法用量>
- "other_medicines": <他科併用薬および用法用量>
- "progress": <経過>(思考のプロセス、根拠とした情報、ガイドラインなど)
- "consideration": 3. プライマリ・ケアに関する考察(介入の結果、学んだこと、教訓)
- "references": 4.引用文献
【抽出テキスト】
${text}
`;
const payload = {
contents: [{
parts: [{ text: prompt }]
}],
generationConfig: {
temperature: 0.1, // 事実に基づく抽出のため低めに設定
responseMimeType: "application/json" // 確実にJSONで返させる
}
};
const options = {
method: "post",
contentType: "application/json",
payload: JSON.stringify(payload),
muteHttpExceptions: true
};
const response = UrlFetchApp.fetch(url, options);
const responseCode = response.getResponseCode();
const responseText = response.getContentText();
if (responseCode !== 200) {
throw new Error(`Gemini API エラー (${responseCode}): ${responseText}`);
}
const json = JSON.parse(responseText);
if (json.candidates && json.candidates.length > 0) {
// APIが返したJSON文字列をオブジェクトにパース
return JSON.parse(json.candidates[0].content.parts[0].text);
} else {
throw new Error("Geminiからの応答に解析結果が含まれていません。");
}
}
/**
* 指定のフォーマットでGoogleドキュメントを作成し、解析結果を書き込む関数
*/
function createReportDocument(title, reportData, rawText, destinationFolder) {
// ドキュメントを新規作成
const doc = DocumentApp.create(title);
const body = doc.getBody();
// 以降の集計時にフォーマットが崩れないよう、厳密に見出しとテキストを出力する
body.appendParagraph(`作成者氏名:${reportData.author || "記載なし"}`);
body.appendParagraph(`事例時期:${reportData.period || "記載なし"}`);
body.appendParagraph(`事例発生場所:${reportData.location || "記載なし"}`);
body.appendParagraph("1. その事例を選んだ理由").setHeading(DocumentApp.ParagraphHeading.HEADING1);
body.appendParagraph("※どのような課題があったか、なぜ疑問に感じたか");
body.appendParagraph(reportData.reason || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
body.appendParagraph("2. 実践した具体的内容").setHeading(DocumentApp.ParagraphHeading.HEADING1);
body.appendParagraph("<症例>");
body.appendParagraph(reportData.patient || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
body.appendParagraph("<主病名>");
body.appendParagraph(reportData.disease || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
body.appendParagraph("<アレルギー歴・副作用歴>");
body.appendParagraph(reportData.allergy || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
body.appendParagraph("<服用薬および用法用量>");
body.appendParagraph(reportData.medicines || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
body.appendParagraph("<他科併用薬および用法用量>");
body.appendParagraph(reportData.other_medicines || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
body.appendParagraph("<経過>");
body.appendParagraph("※思考のプロセス、根拠とした情報、ガイドライン等");
body.appendParagraph(reportData.progress || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
body.appendParagraph("3. プライマリ・ケアに関する考察").setHeading(DocumentApp.ParagraphHeading.HEADING1);
body.appendParagraph("※介入の結果どうなり、そこから何を学んだか、一般化できる教訓はあるか");
body.appendParagraph(reportData.consideration || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
body.appendParagraph("4.引用文献").setHeading(DocumentApp.ParagraphHeading.HEADING1);
body.appendParagraph(reportData.references || "記載なし").setIndentFirstLine(0);
// --- 確認・修正用に元スライドテキストを末尾に残す ---
body.appendPageBreak(); // 改ページ
body.appendParagraph("【以下、AI抽出元のスライドテキスト(内容確認用)】").setHeading(DocumentApp.ParagraphHeading.HEADING2);
body.appendParagraph("※AIの要約・抽出漏れがないか確認するためのデータです。集計時はこのページを削除してください。\n");
body.appendParagraph(rawText);
// 保存して閉じる
doc.saveAndClose();
// 作成したドキュメントを指定の出力フォルダへ移動させる
const file = DriveApp.getFileById(doc.getId());
file.moveTo(destinationFolder);
}NotebookLMで「経営陣が理解しやすい」報告スタイルへ
70件の症例データをNotebookLMに投入すれば、質問形式で即座に洞察を引き出せます。「20代〜60代の体重変化傾向は?」「HbA1c改善事例の共通点は?」──会議の質も変化します。


NotebookLMの医療現場活用事例
少し横道に逸れますが、NotebookLMも、医療・介護現場で急速に普及しています:
リハビリ現場: 10分の論文読みが30秒に。英文献・論文の自動要約Bot
看護現場: DMAT研修資料の整理、勉強会の小テスト作成
クリニック: 診療効率化の秘訣。院内マニュアル、診療ガイドライン、よくある質問と回答を読み込ませて活用
介護現場: 「適切なケアマネジメント手法」をケアマネジメントプロセスに反映させて活用
動画生成機能を使えば、70件の症例から「学びの余裕」を生み出し、忙しい現場スタッフが短時間で重要ポイントを理解できるようにもなるはずです。
実データから見る管理栄養士の成果
分析したスプレッドシートから確認できたこと
【体重変化の範囲】
最大: -4.8kg
(体重44.7kgから49.5kgへ増加例もあり ※筋肉量増加を伴う健康的な変化)筋肉量変化: -1.7kg 〜 +7.1kg
筋肉率変化: -0.7% 〜 +5.4%
【検査数値改善例】
血圧: 160/100mmHg → 134/65mmHg
中性脂肪: 270mg/dl → 改善(40代男性、空腹時血糖260mg/dlも併せて改善)
これらのデータをNotebookLMで分析すれば、「どの年代で血圧改善効果が高いか」「筋肉量増加を伴う健康的な体重管理の成功パターン」といった洞察が得られます。
薬剤師と管理栄養士の連携で実現する「重症化予防モデル」
糖尿病性腎症は透析導入の約37.6%を占め(2024年日本透析医学会統計)、透析患者数は337,414人に達しています。薬剤師の服薬管理と管理栄養士の栄養指導を組み合わせた「多職種連携」こそ、重症化予防の切り札です。
カナダの薬剤師による慢性疾患管理の先進事例
カナダでは、薬剤師による軽度疾患(minor ailments)への対応が地域薬局の薬剤師業務として広く行われています。2025年12月、オンタリオ州薬剤師会が州政府に追加の薬剤師処方権として14種類の軽症疾患を提出し、議論が進んでいます。
カナダの薬剤師は、1年以上の実務経験があれば申請により薬剤の処方が認められ、薬学部のカリキュラムにも処方設計が組み込まれています。この「薬剤師による処方権拡大」は、慢性疾患管理において薬剤師が果たせる役割の可能性を示しています。
日本では処方権こそありませんが、薬剤師と管理栄養士の連携による「薬栄連携」が重症化予防の鍵として注目されています。
日本の調剤薬局における薬栄連携の成功事例
日本薬剤師会が公表した「薬局において管理栄養士・栄養士との連携により効果が得られた事例」から、実証された成果をご紹介します:
【事例1: CKD患者のeGFR改善】
85歳女性、慢性腎不全が進行(eGFR: 15.66)。薬剤師の訪問指導のみでは改善が見込めず、管理栄養士が訪問指導を実施。薬剤師と管理栄養士が薬・食事、検査値を共有し、1日2食(昼・夕)の食事と水分摂取量の不足を補正。栄養状態を維持したままeGFR 24.6まで改善。
【事例2: 糖尿病性網膜剥離患者の血糖コントロール】
73歳女性、20年以上糖尿病治療。退院時、血糖コントロール不良(インスリン朝20U 夕10U)、高カリウム(アーガメイトゼリー3個/日)。薬剤師と管理栄養士が訪問指導で介入した結果、血糖コントロール良好(インスリン朝2U 夕2U)、カリウム値正常となった。
【事例3: 統合失調症患者のHbA1c改善】
46歳女性、統合失調症で独居、HbA1c 7.7。投薬治療を検討する前に食事改善を実施。薬剤師と管理栄養士が介入し、食事内容・検査値、生活状況を共有。ヘルパーとも連携し主食と間食を制限、運動の声掛けも実施。HbA1c 5.7となり、糖尿病治療薬の投薬は不要に。
これらの事例から分かるのは、薬剤師単独、管理栄養士単独では達成できなかった成果が、連携により実現しているという事実です。
行動変容モデルを取り入れた栄養指導の実践
「食事を変えてください」だけでは人は変わりません。行動変容ステージモデル(無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期)を理解し、患者の準備状態に応じた介入が、継続的な健康改善を生み出します。
行動変容ステージモデルとは?
厚生労働省e-ヘルスネットによれば、人が行動を変える場合は以下の5つのステージを通ります:
【無関心期】: 6ヶ月以内に行動を変える気がない時期
【関心期】: 6ヶ月以内に行動を変える気持ちがある時期
【準備期】: 1ヶ月以内に行動を変える気持ちがある時期
【実行期】: 行動を変えて6ヶ月未満の時期
【維持期】: 行動を変えて6ヶ月以上の時期
各ステージで適切な働きかけが異なります。無関心期の患者に「明日から減塩してください」と言っても効果は薄く、まずは「塩分と血圧の関係」について関心を持ってもらうことが先決です。
管理栄養士が実践する行動変容支援のスキル
トランスセオレティカルモデル(TTM)に基づいた栄養指導は、HbA1c値減少効果を持つことが研究で確認されています。自己効力感を高めるためのアプローチとして:
【小さな成功体験の積み重ね】: 「週に1回、野菜を増やす」といった達成可能な目標から始める
【セルフモニタリングの支援】: 食事記録アプリや体重計測の習慣化
【自己効力感を高める声かけ】: 「前回より血圧が下がりましたね!」と成果を可視化
実症例では、40代女性が血圧160/100mmHg → 134/65mmHgへ改善し、60代女性がHbA1c 6.4% → 6.0%へ改善しています。これらは一時的な数値改善ではなく、行動変容が定着した結果なのです。
今後も下図のような3つの視点を適切なタイミングで伝え、行動変容を促していくことができれば、薬局に従事する管理栄養士の活躍の場はもっと増えると考えています。

GAS自動化が生み出す「時間」で何をするべきか?
症例報告の効率化で得られた時間は、患者一人ひとりに向き合う時間、行動計画を立案する時間、薬剤師と連携する時間へ。デジタル化の本当の価値は「人間にしかできない仕事」に集中できることです。
重症化予防のための行動計画立案
GASによる自動化で、症例報告にかかる時間が70件で数週間から数時間に短縮されました。この時間を以下に投資します:
【個別栄養ケア計画の作成】: NotebookLMで過去の類似症例を参照し、エビデンスに基づいた計画を立案
【薬剤師との情報共有体制】: 定期的なカンファレンスで服薬状況と栄養状態を統合的に評価
【フォローアップの仕組み化】: 行動変容ステージに応じた継続的な支援スケジュールの設計
複数疾患併発予防のための統合アプローチ
糖尿病+高血圧+脂質異常症の同時管理は、重症化予防の要です。実症例では服薬アドヒアランスと栄養指導の相乗効果により、単なる数値改善ではなく、筋肉量増加を伴う「健康的な体質改善」が実現しています。
これから始める人のための「GAS×AI症例管理」導入ステップ
「プログラミングは苦手」という方でも大丈夫。Google Apps Scriptは、GeminiでCanvas+Proを選択して実現したいことを依頼すれば良いのですから。
出力されてたコードをコピー&ペーストすることから始められる親しみやすいツールです。導入の3ステップを解説します。
ステップ1: Google Driveフォルダの準備
まず、今回のように症例報告がドキュメント形式ではなくスライド形式でしか残されていなかった場合、Google Driveに以下の3つのフォルダを作成します:
インプット用フォルダ: PowerPoint症例報告を保存
出力先フォルダ: 生成されたGoogleドキュメントが保存される
処理済みフォルダ: 処理済みのPowerPointファイルが移動される
各フォルダのURLから「フォルダID」(URLの末尾の英数字)をコピーしておきます。
ステップ2: Gemini APIキーの取得と設定
Google AI Studioにアクセスし、Gemini APIキーを取得します(2025年現在、無料枠あり)。
「Get API Key」をクリック
生成されたAPIキーをコピー
次に、GASスクリプトエディタで「setupProperties」関数を実行し、APIキーとフォルダIDを安全に保存します。スクリプトプロパティに保存することで、コード上に機密情報を残さずセキュアに運用できます。
ステップ3: コードの実装とテスト実行
Google Driveから「Apps Script」を新規作成
コード.gsに提示されたコードを貼り付け
Drive APIを有効化: スクリプトエディタ左側「サービス」から「Drive API」を追加
setupPropertiesを実行: 初回は権限承認が必要
テスト実行: インプット用フォルダに1件のPPTXを入れて「processCaseReports」を実行
初回実行時は処理に数分かかる場合がありますが、2回目以降はスムーズに動作します。
管理栄養士と薬剤師が創る「予防医療の未来」のために
業務効率化は手段であり、目的ではありません。真の目的は「地域の方々の健康寿命を延ばすこと」。GAS×AIで得た時間を、人間にしかできない行動変容支援に注ぎ込む──その先に、予防医療の未来があります。
本記事のポイント再整理(Q&A形式)
Q: なぜGASで症例報告を自動化するのか?
A: 70件超の症例を数時間で構造化し、NotebookLMで分析可能にすることで、重症化予防のための行動計画立案に時間を使えるようになるからです。
Q: 薬剤師との連携で何が変わるのか?
A: 薬剤師単独では服薬管理、管理栄養士単独では栄養指導にとどまりますが、連携することで「糖尿病+高血圧+脂質異常症」といった複数疾患の同時管理が可能になり、HbA1c改善、インスリン減量、eGFR改善といった実証された成果が得られます。
Q: 行動変容モデルをどう活用するのか?
A: 患者の準備状態(無関心期〜維持期)を見極め、各ステージに応じた働きかけを行うことで、継続的な健康改善を実現します。小さな成功体験を積み重ね、自己効力感を高めることが鍵です。
次のアクションへの呼びかけ
2024年、日本の透析患者数は2年連続で減少しました(337,414人、前年比6,094人減)。この流れを加速させるのは、私たち医療・介護従事者の「予防」への取り組みです。
やりよう
やり方によっては、日常業務だけでなく、症例報告という少なからず手間がかかってしまう報告書作成の大部分も任せることができるようになるかもしれませんね。(個人情報の取り扱いには最大限の注意を!!)
今回は『次世代ヘルスケアモデル』の内容にまでは言及できませんでしたが、自社で実証して良い結果報告ができるように頑張りたいと思います。
これからは、GAS×AI×NotebookLMで目の前に立ちはだかる「やらないといけない(と今は思っている)業務」を、1つずつ効率化していって、薬局という“地域の健康ステーション”で管理栄養士と薬剤師が重症化予防の最前線で活躍する未来をイメージして共に切り開いていきましょう。
