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世界がうるさすぎて、耳を塞ぎたいあなたへ。静寂ではなく、ノイズを飼いならす「感覚遮断」としての抽象画

こんにちは。シンガーソングライター・抽象画家の伊塔 大(Ito Dai)です。 全10回でお届けしてきたこの連載も、いよいよ大詰めです。

前回は、脳内のノイズ(バグ)こそが僕のオリジナリティであり、創作の源泉であるという話をしました。

今回は、このシリーズの実質的な「結論」とも言える話をします。

騒音は、止まない

「抽象画を描けば、悩みは完全に消えますか?」 「音楽をやれば、救われますか?」
もしそう聞かれたら、僕は正直にこう答える。 「消えません」と。
絵を描いている数時間、脳は静かになる。歌っている瞬間、心は解放される。 けれど、筆を置き、ギターを下ろせば、また容赦なく日常が戻ってくる。 DMN(脳のアイドリング)は再び回転を始め、将来への不安や、過去への後悔を囁き始める。 40代半ば。これまで自分の意思を殺し、組織や他人の理屈に首を垂れてきた結果の、不安定な生活。現実の重さは1ミリも変わっていない。
映画のように、すべてが解決して終わるハッピーエンドなど、僕の人生には用意されていないのだと思う。

杖を持って歩く

それでも、今の僕は以前の僕とは決定的に違う。 それは「術(すべ)」を持っているからだ。
脳内の騒音が大きくなってきたら、アトリエに逃げ込めばいい。 心の澱が溜まってきたら、キャンバスにぶちまければいい。 どうしようもない不安に襲われたら、それをメロディに変えればいい。
かつては丸腰で、嵐のような脳内で立ち尽くしていた。ただ雨に打たれ、震えることしかできなかった。 でも今は、「絵」と「歌」という二本の杖を持っている。 足場が悪くても、嵐が止まなくても、この杖を使えば、泥まみれになりながらも一歩ずつ前に進むことができる。
これを僕は「生存戦略」と呼んでいる。 社会的に「勝つ」ための戦略ではない。 僕が僕として、この世界で生き延びる(サバイブする)ための戦略だ。

名古屋の片隅で

僕はこれからも、この名古屋の片隅で、もがき続けるだろう。 華やかな成功法則とは無縁の場所で、地味な作業を積み重ね、時々絶望し、時々小さな喜びを見つける。
いつか大規模なホールに立つことも夢見つつ、今は街の温かい人々の前でライブという空間を共有し、そこで出会う誰かと、孤独を分け合う。 そうやって、一日一日をクリアしていく。 それが「あるがままの自分を生きる」と決めた僕の、偽らざる日常だ。
もし、あなたもまた、脳内の騒音に悩まされているのなら。 どうか、自分を責めないでほしい。 その騒音は、あなたが繊細で、世界を深く感じ取っている証拠なのだから。
そしてもし、どうしようもなくなったら、僕の絵を見に来てほしい。僕の歌を聴きに来てほしい。 そこにはきっと、あなたの騒音とよく似た色の「静寂」があるはずだ。
僕もまだ、自分に対する「仮の答え」しか持ち合わせていない。 人生とは、それを探し続ける旅なのだろう。
ここまで読んでくれて、ありがとうございました。 僕の生存戦略は、これからも続く。
次回、最終話・あとがきへ

『脳内の騒音を黙らせるための抽象画と生存戦略』シリーズについて このシリーズは全10話で構成されており、各エピソードを通して、抽象画に取り組む姿勢に潜む内面的な部分にスポットを当てて展開しています。

■ 伊塔 大(Ito Dai)プロフィール 愛知県を中心に活動中。 40歳から音楽活動を開始。シンガーソングライターとして、各地のライブハウスを中心に多数のステージに出演。 44歳から抽象画家としての活動をスタート。感性をそのまま視覚化する抽象画の魅力に惹かれ、新たな表現として制作を続けている。

[ 現在出演中のメディア ] ラジオ番組 『ARIAと伊塔 大のハルモニアランド』メインパーソナリティ (MID-FM 761/毎月第2・第4金曜日 18:00~18:30)

【 伊塔 大 SNS 】

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