北海道の雛人形を石巻に飾る
私が北海道を離れ宮城に移住したのは、亡母の十三回忌の前年だった。
移住し、今の夫と入籍して最初の大型連休。夫婦でフェリーで北海道に帰省する際、父と姉達から、今ちょうど実家の押入れや物置の中のあれこれを片付けている最中なのだと事前に聞かされていた。
母が亡くなった後、いわゆる「形見分け」的なことはしていた。着物や貴金属、愛用していた品をいくつか持たされていた。けれど、日用品や普段着などは、そのままだった。
身内を亡くされた方なら経験があるだろうが、大切な存在を亡くした人間にとってた「片付ける」という行為は精神的に辛いものがある。もちろん、見るのが辛いから片付けるという方もあるだろうし思いは人それぞれだろう。しかし、我が実家の場合は、処分しようと思うまでに十年超の時間が必要だったということだろう。
離れて暮らしているとはいえ、片付けは手伝いたい。処分に費用がかかるならその負担もしなければ。そんなことを思いながら帰省したのだが、しかし、私が実家に着いてみるとすでに片付けはほとんど終わっていた。
そして、これはおまえが持っていくようにと持たされたのは、実家の押し入れに長く仕舞い込んだままになっていた雛人形だった。
こう書くと、私が生まれた時に買ってもらった雛人形を結婚にあたって持たされたと思われるだろう。
しかし、私は三姉妹の末っ子である。
実家の雛人形は、姉が生まれた時に買ったものらしい。
私より年上。
しかも、七段飾り。
段ボール箱3つの大荷物である。
高級品である。私ひとりのためのものではないが、私のものでもある。何より、私が生まれる前からあったものなので、物心ついた頃からの思い出は沢山ある。
しかし、夫婦二人暮らしの賃貸アパートには、収納スペースはもちろん飾る場所も無い。
かといって、恐らく様々なものを片付ける中で、父と姉達が相談してこれは私に持たせようと決めてくれたであろうものを「いらん」などと言えるはずも無い。
どうすっぺ。
悩む私に
「とりあえず、うちの(石巻の)実家に置くべ」
と言ってくれたのは、夫だった。
そして、嫌がられるのではと心配しつつも義母に相談したところ、嫌がるどころか大歓迎。
義父の仏壇のある和室に飾ったところ、ご近所の方々が続々と見に来てくれたと大喜び。
石巻の義実家のある地区は、東日本大震災の時、津波に襲われた。
当時の義実家は一階部分を流出する大規模半壊の被害を受けた。現在の家は、被害により居住不可能となった建物を取り壊し、土地を嵩上げした上に新たに建てたものである。
この雛人形さんは、ここに来たかったんだな、と思った。
スピリチュアル的なことは、正直、少し苦手な方なのだけれど、雛人形を石巻に持ってきてからの歓待ぶりを目の当たりにすると、自然にそう思えた。
以来、毎年この時期に石巻の義実家に雛人形を飾るのが恒例となっている。

今年も夫婦で飾り付け。
週明けには早速、義母のお友達が雛人形を見に来るとのこと。今年も賑やかになりそうだ。
海を渡った雛人形の皆様は五十余年の年月を経て少々お疲れのご様子もあるけれど、もう少しだけ、この街でご活躍をお願いしようと思う。
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