ショートショート「思い出相続税」※毎週ショートショートnote4/12お題
『月の女神微笑むとき、水鏡に浮かぶ印を辿れ』
思い出の中で口癖のように、父が言っていた。
意味がわからないと抗議するが、笑みを浮かべるだけで何の説明もなかった。
そんな父が死んだ。
葬儀に相続手続き、遺品の整理と、目まぐるしく日々が過ぎて。
ようやく悲しみと向かい合える時間が出来て、父の口癖を思い出した。
遺品の中に、印のついた地図があった。
行ってみると、木々の間から月の光が溢れていて、水たまりに進むべき方向が浮かび上がっていた。
導かれるままに、夜道を彷徨う。
たどり着いた洞窟に、大量の金が隠されていた。
父に感謝した。
金を持って帰ろうとしたとき、月の女神は雲に隠れてしまった。
そういえば、天気予報は1週間雨マークだった。
どうやら、父との思い出の相続税は安くないらしい。
息も絶え絶えで自宅に戻ると、税務署の職員が待っていた。
「脱税ではなく、申告漏れということにします。追徴金を支払ってください」
とんだ相続税だ。
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