ショートショート「ファースト奇襲」※毎週ショートショートnote9/28お題
「キ、キシュゥって、したことある?」
彼女が顔を赤らめて俯きがちに聞いてきた。
「奇襲だって?うーん、ないかなぁ。あ、金山の奴に一度したことあるかも。背後から」
友達の背後からピコピコハンマーで叩いたことがあるので、それが奇襲といえば奇襲だった。
「金山くんと!?え、男同士なのに?」
彼女が驚愕に目を見開く。
「おいおい、男同士だからだろ。女の子にそんなことできるかよ。そもそも、多様性の時代にそんなこと言わないほうがいいよ」
「……そっか。君ってそうなんだ」
何故か彼女が絶望したように落ち込んでいる。
「じゃあ、何で私と付き合ってるのよ?」
「?そりゃ、好きだからだよ」
「ふぇ!?だって、金山くんとそういう仲なんでしょ?」
「どういう仲?」
「キ、シュ…するような」
「?それだけ仲は良いけど、それと君との付き合いに何の関係が?」
「えぇ………二股ってこと?」
もしかして、彼女は奇襲して欲しいのか?
恋人とは、奇襲し合うのが普通なのだろうか。
だが、男として手を上げるのは許されないことだ。
それならば。
「分かった。今後は君にしか奇襲しない」
「え!?どういう………むぅ」
そう言って、彼女が油断した隙に、彼女の口を塞いだ。
「はじめての奇襲成功!」
俺がにこやかに告げると、茹でダコのように真っ赤になった彼女が、パクパクと口を開け締めする。
この時が、今後何度もすることになる奇襲のファーストテイクだった。
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