見出し画像

ショートショート「木魚感想文」    ※毎週ショートショートnote8/31お題


 「木魚第拾六 流線美しく眼力強し」

 魚は眠らない。
 目を見開いて閉じないから、昔はそのように思われていた。
 魚はいずれ神力を宿して竜になる。
 そこから転じて、寝ずに修行すれば悟りを得られると、修行僧への戒めとして、木魚が誕生したと言われる。

 私の寺には、多くの修行僧がいる。
 厳しい修行で有名だ。
 文字どおり、寝ずに読経し続ける。
 究極は、飯も水も取らずに霊山を踏破した後、お堂に籠もり、即身仏となることだ。
 そこまで到達し、悟りを開いて仏になる者は限られている。
 音を上げた者は、罰として木魚と一つになってもらう。
 
 私の密かな趣味は、木魚を集めることだ。
 木魚はいい。
 一つ一つの形が違う、思いが違う。
 同じように見えて、表情が違うのだ。
 秘密の部屋に木魚を並べて、観察し、その感想を書に記していく。

 「木魚第二拾一 苦悶の顔が唯一無二」

 身体から水分がなくなり、極限の飢えと睡眠不足で目が見開かれ、魚となる。
 血色を失って茶色く変色した乾いた肌は、まさしく木魚である。

 ああ、かくも木魚は美しい。
 
 
 
 
 
 
 







↓こちらの企画に参加させていただいてます。


いいなと思ったら応援しよう!

蜃気楼 お気持ちをいただければ、より頑張ります!

この記事が参加している募集